第五術 Fランク冒険者と異世界風ポトフ
街へ入り、バロンさんがギルドまで案内していると、色々な人からヒソヒソと話が聞こえる……
「うう……目立ってるな……」
「当たり前です。ドラゴン、それも『二つ名』の個体を『契約獣』にしていますから目立つのは当然です。しかし―――」
バロンさんが振り返って銀瓏をみると、たったの2、3mぐらいの身長で人型に近い銀瓏が歩いていた。
「まさか大きさを変えられるとは……」
「あはは……」
入る前―――
「ところで街へ入るけど、銀瓏のデカさじゃ無理じゃね?」
『むっ……確かに小さいな……仕方ない、抑えるか』
「え?」
『むんっ!』キュィィィィンッ!!
そこには四つん這いの10m以上の巨体が2、3mほどの姿で立っていた。
「ええ!?」
『これなら文句はないだろ?』
回想終了―――
なんてことを思い出していると、ギルドに着いたらしい。
「さて……着きましたよ。ここが我が『ファースト』のギルドです」
「おお!」
そこには一軒家とはより大きい建物だった。
「では入りましょうか」
「あ、銀瓏は入れていいんいですか?」
「大丈夫ですから、ギンロウさんもどうぞ」
『うむ』
そうして、バロンさんの案内のもとへギルドへ入る。
「おい、見ろよ……」
「ああ、あの銀色……報告には聞いていたが……」
ああ……視線がいたたまれねぇ……
「自己紹介がまだでしたね……もう聞いているとは思いますが、私はこの『ファースト』のギルドマスター、『バロン・ファースト』と申します」
「へー、この町と同じ名前なんですね」
「ええ、本当は『ファースト』ではなくて『オルタナ』ですが、この街のギルドマスターになると、名前が変わるんですよ」
へー、そんな決まりがあるのか……
「まずは何にせよ、ギルドに来たからには『冒険者カード』を作りましょう。ちょっと待っててください」
バロンさんは、受付に立って、話し合うと、受付の人から書類を貰う。
「はい、これを」
「これは?」
「冒険者カードを作る際に書く書類よ。名前と年齢、武器や『契約獣』とか色々ね」
「成程……」
そう言い、俺はバロンさんから貰った書類を貰い、書く。
……異世界の文字って書けるかなとは思っていたが、スラスラかけるな……召喚したからそれに対応したのかな?能力もそうだし……
数分かけて、書類に書き、バロンさんに渡す。
「……ええ、確認しました。ではここに、血印を頂戴します」
「あっはい」
血で指紋のハンコを押し、バロンさんは奥の部屋に入って進める。
チクっとしたな……
「そういえば、ガーネットさんも『冒険者』ですか?」
「ん?ううん。私は『魔術カード』って言って、『魔術教会』から作ってもらうカードよ」
「へー、違いはあるんですか?」
「そうね……『魔術カード』はいわば『魔法職』に就くための証明書ね。『魔術カード』は研究や薬の作成とかの職に就けるわ。だからか、『魔術カード』を持っている人限定の依頼も無くはないわ」
「そうなんですね」
「それに、『魔術教会』は『魔法職』を就くための教育みたいな感じね。だから普段から『魔術教会』の依頼や学問とか学んでいるのよ」
用は、『魔法』を学ぶ学校か……あれ?それじゃあ……
「ガーネットさんは何故ここに?」
「私は、『魔術教会』の依頼で『上級ポーション』の作成と階級を上げるために召喚魔法をしていたのよ。『魔導士』の期限は半年だから別荘でやっていたのよ」
「期限?」
「そう、『冒険者』も『魔術教会』もランクによって依頼などをこなす期限があるの!例えばFランクと『魔見習い』は週一で依頼を一個でも完了しないと取り消しになるからね。まぁ『魔術教会』は授業があるから、依頼判定で早々取り消しはないけどね」
「はえ~なら、作るなら魔術カードなのか?」
「そうね……ただまぁ、『魔力』の知識や量が必要だから、結構大変よ。そんなの場合は『冒険者』になる場合もあるね」
へー救済処置みたいな感じか。
「そうそう、それにどっちも買取や依頼を受けられるし、混合でもパーティにも入れるし、自分に合った方を選んだ方がいいのよ」
「なるほど……」
ガーネットさんと『カード』のことで会話をしていると、バロンさんが戻ってきて、カードを渡される。
「はい、どうぞ。これがサチさんの『冒険者カード』です」
「あ、ありがとうございます!」
「ではギルドの説明がありますが……」
「あ、それは私が色々と話していますので大丈夫です!」
「そうですか……では、あちらにボードがありますので、自分の実力を見合った依頼をとってください。最初はFランクですのでFかその上のEランクの依頼を受注が可能です。ただ……」
「ただ?」
「ガーネットさんがいますし、なんならギンロウさんもいらっしゃいますから、C・Bランクの依頼でも大丈夫でしょう」
「あはは……」
「とはいえ、ここはやはり初めてですからFランクのものが丁度いいです。では私はこれにて……」
そう言い、バロンさんはイソイソと離れる。
「さてと、どうする?このまま依頼でもやるの?」
「うーん、この街を見て回りたいし、それにそろそろ夕暮れになるから明日にしましょう」
『うむ!そろそろ夕食の時間だな!』
「……たくっ、お前は飯のことばっかだな」
「あはは……そうだ、今日は私が料理していいかな?幸の錬金した調味料を使ってみたいし」
「ガーネットさんがですか?それならぜひお願いしたいです!錬金したいものなら言ってください」
俺たちは今日の夕食を買うために、ガーネットさんが色々魔物の素材を換金したあと、市場へ向かうのだった。
「ここが市場か……結構賑わってますね」
「ええ。だけど……」
と、ガーネットさんがちょっと困り顔をする……周りを見渡すと―――
「何だあのドラゴン……」
「あの男の『契約獣』だってよ……」
「なんでもガーネットの弟子だってよ」
「本当か?あの男、絶対出世するぜ……」
……めっちゃ街の人からのヒソヒソが聞こえる。やっぱり銀瓏は結構有名なドラゴンなんだな……『二つ名』って言ってたし……
「お、そこの嬢ちゃん、兄ちゃん!見てってくれよ!いい野菜がたっぷりだぜ!」
「へーどれどれ……確かにどれも新鮮ね!」
『むぅ……葉物か、俺はあんまり好きではないが』
「わがまま言うな。銀瓏はいいかもしれんが、俺たちも食うんだ。ちゃんと肉も入れるからいいだろ?」
『それならいいが……』
「お、おう……ドラゴンを『契約獣』にしたと聞いていたが、マジだったんだな……嬢ちゃん、あんたすげぇ人を弟子にしたな……」
「え、ええ……」
と、流石にガーネットさんは苦笑いする。
「なら……こいつはどうよ!こいつは『ガノン』っつう魔物を燻製した特別なやつよ!」
「へー、燻製か……」
「えっと、ガノンって?」
「ガノンは通称『豚魔獣』で四足歩行の魔物よ。一応、Dランクよ」
ということは用は豚のベーコンか!結構量があるし美味しそうだな……
「すみません、これって何Gするんですか?」
「おう!これ一本、ざっと10000Gだ」
「うわっ高っ!?」
店主の腕並の太さと長さでこの値段!?高級牛肉レベルだぞ……
「なーに言ってる?これでも安い方だぜ?魔物の肉は結構高いんだ」
「え?そうなの?」
「そうよ。『ロケット・ブル』の肉なんて一塊で10000Gするんだよ?ランクが高ければ高いほど高額なのよ」
「へ、へー……異世界って、凄いんだな……」
「よし、なら『ガノンの燻製焼き』を一つ頂戴。あと『キャーロト』と『キャベルーツ』、『ジャンガ』、『ネギオン』をください」
「はいよー!!」
ガーネットさんはベーコンの他にニンジン、キャベツ、ジャガイモ、玉ねぎみたいな野菜を購入した。
「そういえば、ガーネットさんの手持ちは……」
「ああ、あのあと換金したから結構な額よ」
―――――
「よし、早速作りましょうか」
「楽しみです!」
『うむ、期待しているぞ』
「幸一昨日作ったコンソメと胡椒借りるね」
「あ、どうぞ!」
私は『アイテムボックス』で材料を取り出し、料理を開始する。
まず、ガノンの燻製焼きを角切りにして鍋に入れて炒める。
そのあと切った野菜たちを入れ、水を流しこみ、煮る。
煮立って野菜が柔らかくなったら、幸が錬金して作ったコンソメ、塩胡椒で味を調える。
……さて、味は?
「……っ!いい感じ!流石幸の調味料。こんな簡単に出汁ができるなんて……」
器に流して、この食パンを添えたら……完成よ!『ガノンの肉の色々煮込み』!
――――
ガーネットさんが作った料理を貰う……これあれだな。『ポトフ』みたいだ。どうせなら、ソーセージも欲しかったな……今度一回錬金してみようかな?
「じゃあ食べましょう」
「はい!」
『うむ』
『いただきまーす!』
俺はガーネットさんが作ったスープの具材を一口かじる。
『っ!!―――うっまぁっ!』
「この肉旨ッ!!身の香ばしさに加えて、ちょっとカリっとした食感もいい!」
「コンソメの出汁が野菜に染み込んでうまー!!」
『うむ!葉物はあんまり好きではなかったが、これはこれで旨いぞ!!』
と、一言多い銀瓏もバクバクと進む。
パンに浸してもいいなこれ!
数分でもう空になり、そろそろ宿へ泊まる。
「銀瓏は宿が小さいから、そこの馬小屋で寝るけどいいよな?」
『ふむ……まあ、すこし狭いが、大丈夫だ』
「そうか……じゃあ俺たちも寝ようか」
「そうね、じゃあお休み!」
「はい、お休み~」
こうして、俺たちは宿へ泊まり、明日の依頼に備えて寝るのだった……色々あって疲れたな……




