特別術 箸休め
俗にいう短編集
[初代魔賢者]
昼食を食べている頃、俺はふと、『個体能力』について思い出したことがあったので、ガーネットさんに聞いてみた。
「そういえばガーネットさん。『初代魔賢者』って『錬金術』以外にもどんな能力者がいたんですか?」
「ん?そうね……私が知っている限りで有名なのは――『解体検査術』、『無限魔力術』、『神階召喚術』、『魔獣化術』、『混沌属性』……そんくらいかな?」
おお……結構いるんだな。一体どんな能力なんだ?
「まず、『解体検査術』は簡単に言えば『解体魔法』の上位互換だよね。たった一目で、ありとあらゆる魔物の情報を得ることができて、弱点や発動器官だけじゃなく、解体の段取りを一瞬にして丸わかりできる能力よ」
「相手の弱点も!?それは凄いな……」
「今持っている人は……『シル・ヴァン』先生ぐらいし知らないかな……」
へーそうなんだ……確かに、『解体学』を教えているから持っててもおかしくないか……
「次に『無限魔力術』。名の通り体内に無限の魔力を秘めている能力ね」
「ということは魔法を使い放題ってことか……」
「そういうことね」
よく異世界小説でこの手の類の能力はあるよな~
「次に『神階召喚術』だけど……ぶっちゃけ、この能力が一番やばい」
「え?そんなに?」
「この能力は『神獣』レベルの魔物を呼び出し、『仮契約獣』として共に戦うわ」
「ね、『仮契約獣』?『契約獣』と何が違うんですか?」
「『仮契約獣』は契約できる時間が設けられているの。時間が経てば、召喚した魔物はこの場に消えるけど、何度でも召喚が可能よ」
制限はあるけど、何度でも召喚できるのは凄いな……
「ところで『神獣』ってどのくらい強いんですか?」
『俺も戦ったことは無いから気になるな』
「『神獣』は名の通り、神に匹敵するほどの魔物よ。下手したらS+ランクぐらいあるわ」
「マジかよ!?前に戦ったゼパルより上だろうな……」
『ほう……いつかは戦いたいものだな』
「まぁ、『神獣』レベルの魔物なんて今じゃこの世にいないけどね……召喚しない限り、出てこないと思うよ」
『むう……そうか』
いやいや……あんなレベルの魔物が来たら、下手したら国中パニックになるからな!?
「次に『魔獣化術』。自身を人獣形態に変化する能力よ。魔物特有のタフさに加えて、様々な魔物に姿を変えられるわ」
「へー……文字通りなんでも?」
「ええ、確かドラゴンにもなれるはずよ」
「それは凄いな!」
ドラゴンになるのはカッコよくていいかもしれないな~
「最後に『混沌属性』は『聖属性』と『呪属性』を同時に操ることができる能力よ」
「それ、珍しいんですか?」
「ええ、そもそも『聖属性』と『呪属性』は互いに相反する力だから、どちらかしか持っていないの。それを同時に操れるとなると凄いのよ?」
「へー……ところで、『聖属性』と『呪属性』って何ですか?」
普通の属性魔法とは違う雰囲気だと分かるが……
「『聖属性』は生命を宿す力を持っていて、不死身の『アンデット族』に有効な魔法よ。回復魔法や雷魔法はこの魔法の生まれ変わりだと言われていることもあるわ」
「ふむふむ……」
「『呪属性』は逆に死を宿る力を持っているわ。状態異常や即死魔法に呪詛魔法とかも使うのよ……」
「恐ろしいな……」
「そうね……だから使う人もそんなにいないのよね……」
まぁ確かに、呪属性って不気味な感じがするもんな……
にしても、『錬金術』以外にも物凄いチート級の能力がいるんだな~やっぱ異世界って凄いや。
俺は再びこの世界について深く感心する。
[アフターサイド:マスカットの用事]
※これは、幸と出会う前のマスカットもといマスカの話である。
――カラカラ……
馬車に揺れて、私はある所へ向かっている最中でした。
その場所とは、『ファースト』というほのぼのとした辺境な場所……最近、初心者用ダンジョンで、Aランクの魔物が最下層に居座っているらしいので、このままでは制覇や踏破もままらなくなって、『混沌魔生』が起こる可能性もあるらしい……
私は信頼している従者、『ギャロップ・ルーシー』と『バイオ・レット』と共に向かっている最中です。
「……王女様、あなたまでついてくる必要は……」
「こう見えても、私はこの『パシフィスト』の王を任せられています。剣の稽古も十分、自分の身は自分で守れます」
「しかし……相手はAランク……いくら私とレットで倒したことのある魔物とはいえ、危険です」
「王たるもの、国民が安心して暮らせるように、身を粉にして動かねばならない時もあります」
「ですが……」
ルーシーが口をはさみ続ける……ルーシーが心配するのも分かります……私はこの国の王、国民の期待や未来を背負っているんです。
そう思っていると、レットが話を遮る。
「ルーシーの気持ちは分かりますが、王女様、貴方はこの国を背負う御方……重傷を負えば、国民も心配するのをお忘れなく」
「分かっています……ですが、この平和な国に国民たちが恐怖に震えることになると……」
私には、幼いころから父親が病気に亡くなっていません。
代わりに母様が私に躾や稽古、短かったけど愛情を注いでくれました……
そんな母様も私が10歳になる頃、病気で寝込み続け、最終的には亡くなられました。そんな母様が最後に私に言ってくれました。
『いい、マスカット……あなたはこの国民を、国を、引っ張っていかなければなりません……ですが、まだあなたは幼くて、いっぱい間違いをするでしょう……けど、いいのよ。泣いたって、逃げたって、貴方はまだ10歳。辛い時は辛いもの……でもね、マスカット、これだけは約束して―――決して諦めないこと。どんな困難が来ても挫けず、立ち上がりなさい。そうすれば、その姿をみた国民たちが少しずつあなたの力を押すわ……最後まで、王になる姿を見れなくて……ごめんね……私の愛しい娘……マスカット……』
そう言い残して、母様は去って行きました。
私は、母様の言いつけを心に刻み、少しずつ、少しずつ、一歩一歩王としての責務をやっていきました。
こんなところで挫けるわけにはいきません!!
「え?『トライサーペント』?もう討伐済みですよ?」
「「「 」」」
着いて早々、バロン様が開幕からの一言により、私たちは面食らってしまいました。
「え?討伐したんですか?いつ?」
「そうですね……昨日か一昨日ぐらいからかと」
「馬鹿な!この街はCランクぐらいまでしかいなかったはずだ!?そんなデタラメが―――」
「ちなみに、これが『トライサーペント』の首です」
「わーすげー鮮やかな頭!?」
と、疑うルーシーをバロン様が『トライサーペント』の頭を取り出すと、流石のルーシーも信じるしかなかった。
「惑うことなき、『トライサーペント』の頭ですよ……一体、誰が討伐を?」
「ふむ……その人物は、あの『光輝なる白銀龍』を『契約獣』にした人です」
「なんだと!?あの二つ名をか!!」
二つ名……聞いたことがあります。昔母様がお話で聞かされてました……たしか、その鱗は漆黒の闇でも輝く銀色で、あのドラゴンから放たれる氷魔法は、絶大だと……そのドラゴンを『契約獣』にしたんですか!?
「ええ、最初見た時はもう私も目玉が飛び出そうでしたよ。なんせ、二つ名の個体を『契約獣』にした報告はこれまで一度もなかったほどですから」
「して……その彼の名は?」
「……『サカモリ・サチ』――と、名乗っていました。同行中の『フラム・ガーネット』の弟子らしいです」
「サカモリ……」
「サチ……」
そんなすごい方が、この国に何を?
「あの……彼は何故この国へ?」
「分かりませんが……どうやらこの世界のことについての常識が疎いようで……まぁおそらく、色んなことを体験したいんじゃないかと」
そ、そんな理由で?とても二つ名を『契約獣』にした人の発想じゃないですよね?
「心配しなくても、彼は国を脅かしたりとか破壊したりとか考えていません。むしろ礼儀正しくて、あの二つ名を叱れるほどの持ち主です」
「そ、そうなんですね……」
バロン様がここまで言う人とは……サチ様、一体どのような方なんでしょう……もし機会があればお友達になってみたいです……
私は顔も知らない人物を思い浮かべ、空へ見上げるのでした……
――
「へっくちっ!」
「どうしたの?風邪?」
「いや?多分、鼻がむずむずしたのかもしんない」




