第四十八術 バイコーンと酒のつまみ
ダークエルフ達が夕食用の魔物を狩っている間、俺たちはなにをしておくか考えていると、麒麟がふと、思い付いたことを言う。
『そうだ、お父様に挨拶に行きましょう』
「唐突」
お父様って、確か『バイコーン』だっけ?
麒麟の父親だから、相当強いんだろうな……
「そうだ、折角だからお土産的なものを渡した方がいいよな……なぁ麒麟さん、バイコーンって何渡した方がよさそうなんだ?」
『そうですね……お父様は酒と肉が好きです』
「オーケー、酒と肉ね……だったら、これがいいな」
俺は早速、酒とそれに合うつまみを錬金して準備し、バイコーンに会うため、麒麟さんの案内の下、向かうのだった。
――そこは、木が囲まれている中で中心に開けた場所があるところだった。
そこに、漆黒の毛皮を持った二つの角がある馬が居座っていた。
「あの黒い馬は……」
『久しぶりですね……お父様』
「あれが、麒麟の父親なんだ」
『ふむ……流石バイコーン……と言ったところか、魔力の質が違うな……』
『来たか……童ども、そして娘よ』
うわっ!?これって……『念話』か!そりゃ麒麟も使えるから父親も当然使えるよな……
『まさか、本当に人間の『契約獣』になるとは……ここに来るまで信じられなかった……』
『そうですね、お父様。確かに以前の私なら、あり得ません―――が、今の主が作る料理がとても美味でして……』
『ふむ、それに関しては聞こえている。ダークエルフ達があんな歓声をあげれば、ここまで届く……して、娘と契約した童よ』
「あ、はい」
『聞けばどうやら、俺の為に酒やら用意したと聞いていたが……』
「え、聞こえてたんですか?」
『ああ、こう見えても魔力探知には長年熟知している。声を聴くなんてお手の物だ』
マジかよ、結構距離あったよな?どんだけ、地獄耳なんだ……
『そんなことより、ほら。出してみぃ……どのような代物か俺が確認してやる』
「あーはい、ちょっと待ってくださいね~!」
俺は急いで、準備した酒とつまみの者を出す。
今回は瓶ビールにしてみた。多分、麒麟さんとかも一緒に飲むかもしれないし……それに缶ビールよりも瓶ビールに注いだ酒が旨いって聞いたことあるし、良いと思うんだよな。
あとのつまみだが……今回は『カルパス』にしてみた。肉が好きって言ってたから、恐らく気に入ってくれるだろう。
「どうぞ、ビールとカルパスです!」
『ほう……この酒から香る麦の匂いがいいではないか。どれどれ……』
バイコーンはグラスに注いだビールを少し飲む。
――ゴクッ
『っ!なんだこのキレは!他の酒よりスッキリだし、香り高い!!して……つまみは―――んん!!このガツンっとした味わいとジューシーさ!癖になるな!』
「気に入ってもらえて良かったです」
『もっとだ!もっとくれ!』
「はいはい、ただ今」
そう言い、空になったグラスにまた注ぐ。
『じ~……』
「ハッ……!飲みたいのか皆?」
「もちろん!」
『私もです』
『酒はいいからその『カルパス』を寄越せ』
「だと思った……ほら」
俺は、ガーネットさん達にビールとカルパス、銀瓏は皿に盛ったカルパスだけ渡す。
「あむ……ん~!この辛さがビールとよく合う!」
『この『ビール』と言う酒……美味しいです!』
『うむ!少し塩辛いが、肉のジューシーさがより際立つな!』
と、皆バクバクと食べ進める……一応、夕食も食べるんだよな?ちと、食いすぎじゃねぇかな?
そう思いつつも、ビールとカルパスは食べきった……ビンが五本も消えたぞ……いくら昼でも飲みすぎじゃね?
『うい……こんな旨い酒が飲めるなんて、いい主を持ったな……ならついでに俺も契約に――』
「それは止めてくんないかなァ!?」
唐突に何言ってんだこの馬ぁっ!?
『んだよ……別に減るもんじゃねぇし、いいだろ?それに相当俺は強いぜ?』
「うん、心遣いありがとう!だけど、勘弁してください!もうユニコーンと言う聖獣と契約しているのに、また聖獣と契約したら、各方面からのハチャメチャ度合いが半端ないぐらいに俺に押し寄せるんですよ!?……あとで、酒類を貢ぎますから、それで勘弁してください!」
『え~……まぁ、酒が貰えるなら仕方ない。諦めるか』
は~何とかなった……聖獣二体を契約したなんてこの世界に生まれてから今まで絶対にない事例だろ……ただえさえ、聖獣を契約 (というかほぼ強制)したのに……もう一人追加とか、他の人からしたら恐怖以外の何者でもねぇよ……これハイエルフのとこのペガサスも契約したいというオチじゃないよな?
「びゃあ~うはい~むにゃむにゃ……」
「ガーネットさん、昼なのにできあがってるな……」
『旨い酒ですからね……一瓶全部飲んでましたし……』
「麒麟さんはそんなに酔ってないな……」
『私は聖獣ですので……度数50%ストレートでもなければ酔いません』
「そんな酒があるのかよ……この世界じゃ『エール』ぐらいしか見たことないけど……」
『魔物ならいるぞ。『テキーライオン』と言う体そのものが酒の液体の魔物だ。あ奴の血は芳醇な香りでまろやかな味わいだぞ?』
「体そのものが酒って何?」
どっかの美食屋の漫画に出てきそうな魔物してんな~……
『俺は一度狩ったことがあるが……度数がきつくて一口しか食えなかったな……』
「テキーライオンってことは……『テキーラ』か?銀瓏なら『ソーダ割』か『カクテル』がおすすめだな」
『ほう、そんなものもあるのか……まぁ飲む機会があれば、飲んでもいいが……』
「俺も、この手の酒はまだ飲んだことないからな……いつかは試したいな」
『おおそういえば、この後夕食も食べるのだろう?だったら俺もいいよな?こんな旨い酒が飲めたんだ、だったらお前が作る料理も期待できるってわけだな!』
「あーやっぱりそうなっちゃいます?」
うすうすこうなるんじゃないかなと思っていたが……やっぱり言ってきたな。
「別に俺は大丈夫ですけど……」
『おおそうか!楽しみに待っておるぞ!……ところで、名前を聞いてなかったな……お前、名は?』
「あ、俺は『酒森 幸』です。そこに酔いつぶれてるのは、パーティーメンバーの『フラム・ガーネット』さん、そして、最初の『契約獣』の『銀瓏』です」
『ふむふむ……そうか。いやー、前まで人間、というか『魔術協会』の者のせいで警戒しっぱなしだったが、お前達のお陰で、少しだが警戒は薄まってきたぞ!』
「そ、それはどうも……」
少しどころか、大いに警戒解いていませんでした?
『さてと、そろそろダークエルフ達が帰ってくる頃合いでしょう……行きますか』
「え?分かるの麒麟さん」
『ええ、段々と気配が近づくのを感じます』
『おっそろそろ行くのか?なら俺もついていくとするか……』
『どっこいしょ』とオッサン臭さを出しつつ、バイコーンが立ち上がる。
俺は酔いつぶれたガーネットさんを麒麟さんに乗せる。
「っと……ガーネットさんを乗せたし、じゃあ行くか」
『うむ……一体どんな魔物の肉が食えるのか楽しみだぞ!』
『俺もだ!』
「肉好きだな……二人とも……」
『肉はあまり食えませんが……サチの料理なら、きっと沢山食える物を作ってくれるでしょう』
「そんなにハードル上げんなよ?……まっ別にいいけどさ」
そうして、銀瓏に乗った俺は、ダークエルフの村へバイコーンと共に戻ることになった。




