第四十六術 麒麟さんの体験と実力
―――パカラッパカラッ!
―――ビュンッ!
大地を蹴る音と空を掻っ切る音が耳に木霊する中、俺たちは『ダークエルフ村』へ目指して駆ける。
見渡す限り森、森、森……本当に近づいているのか怪しくなるな……
「なぁ、麒麟さん。あとどれぐらいで村に着くんだ?」
『そうですね……この後、夕暮れに近くなりますので、一旦川へ着いて、一休みしてから出発したら昼ぐらいに着く予定です』
「もうそんなに距離が近いのか……」
『そうです……それにそろそろ水浴びして綺麗にしたいですし……』
「じゃあ、着いたら風呂にしようか」
『おお、風呂か。鱗が綺麗サッパリになるからいいな!』
「確かに、そろそろお風呂に入る頃合いだね~」
『お風呂……とは?』
そっか、麒麟は初めてだったな……
「お風呂って言うのは、暖かい水で洗うことさ」
『暖かい水ですか……それは良い物ですね。冬場とかは特にいいですね』
「そうそう!それにシャンプーとか使えば、髪がサラサラになるんだよ!」
『そうなのですか!それは試したいものです……』
やっぱり麒麟は女性だから、髪質とか気になるんだな……
そんなことを思いつつ、川が流れる所まで着いた俺たちは、ここで野宿することとなった。
「さてと……先風呂入っていいか?料理も作らないといけないし、ガーネットさん、長く風呂入るだろ?」
「いいよ~分かった~」
「じゃあ、銀瓏と俺は先に入るから、麒麟さんはガーネットさんと一緒に入ることで」
『構いません』
「よしじゃあ、入るとするか」
そうして、俺と銀瓏は簡易的な土の壁に囲まれた浴槽に湯を溜めたと。体等を綺麗にして、湯につかる……今回は入浴剤を入れてみたな。柚の香りがするものだ……いい匂いだな~
「入ったよ~」
「ん?おお、何か柑橘系の匂いがするね」
「湯の中に柚の香りがする入浴剤を入れたんだ。きっと気に入ると思うよ」
「そうなのね!それは楽しみ~」
「あ、そうだ……」
麒麟を洗うんだから、それにふさわしいシャンプーとブラシがいるよな……
『全知魔書』で調べて錬金した買いがあったぜ。
「それじゃガーネットさん。これ、麒麟さんに使うようのシャンプーとブラシです。馬用の者なので間違えないでくださいね」
「ええ、ありがとう。こういうのもあるのね……凄いわ」
「流石にドラゴン用はないが……まぁ普通に使っているシャンプーで問題ないし……馬用でも麒麟さんには大丈夫でしょ」
『私は馬ではなく『ユニコーン』ですが……』
「ユニコーンもペガサスもどっちも馬みたいな者だろ?」
『むう……』
さてと、麒麟はガーネットさんに任せるとして……早速料理をするか。
―――
私は早速、服を脱いで湯を頭にかけ、髪を濡らす……
シャンプー、コンディショナーで洗った後、体を洗う。麒麟はスキル『念動力』でブラシを巧みに操って、毛を取っていた。凄い器用ね……
身体が洗い終わったら、次はいよいよ麒麟の身体を洗う番ね。
湯を溜めた洗面器に麒麟の身体を濡らす。
『おお……これが風呂ですか……なんと心地よい……』
「次はシャンプーね」
幸から貰った馬用シャンプーで麒麟の身体を泡で包みこむ。
『おお~かゆみが収まってきます!』
「どう?気持ちいい?」
『ええ……!これが風呂……良い物です!』
「ふふっ、なら良かった」
如何やら麒麟はお風呂のことを気に入ったらしい……やっぱりお風呂は良いよね!髪がいい感じになるし、化粧水だって、前までオリーブオイルでしていたけど……幸に錬金して作ってもらった化粧水のお陰でこれなしじゃ生きられない体になってしまったわ……凄すぎでしょ、にほんの化粧水……
麒麟の身体を洗い流したあと、一緒に湯につかった。
あ゛あ゛あ゛~……気ん持ちいい~柚子の香りもいいし、体の芯までぽかぽかしてきた~
『湯舟に浸かるのは良い物ですね~』
「本当~空を見ながら浸かるのもまた良い~」
……お、何だかいい匂いがしてきた!もうそろそろ料理が完成する頃合いかな?
―――
ガーネットさん達が風呂に入っている間、俺は夕食の準備をする……今日はどうしようか……ハンバーグが久しぶりに食いたいと思うが……麒麟は肉類はあまり食べないって言うし……そうだ!今日は『豆腐ハンバーグ』にするか!肉と豆腐の割合を変えるだけでいいし、いいな!
まずは肉を粗挽きに転移して……
『魔物の肉』⇒『魔物の粗挽き肉』
次に豆腐……木綿豆腐を崩しておく。
肉:豆腐の割合は麒麟は3:7で俺たちは7:3にしておく。
そこに塩胡椒を振り、みじん切りにしたネギオン、薄力粉をいれ、捏ねる!
纏まったら、空気を抜かしつつ、肉種を作る。
油を引いたフライパンを熱し、作った肉種を焼く!
強火で下をこんがり焼いて、ひっくり返し、弱火で蓋をして蒸し焼きにする。
ある程度焼いて、中まで火が通ったら、皿に盛り付けて……ステーキ醤油をかける。
麒麟は『おろし風味』がいいよな。銀瓏は当然『にんにく風味』だ。
よし完成!『合挽き豆腐ハンバーグ』!!
「うわぁーいい匂い!」
「おっ、上がってきたねって──マブシッ!?」
『とても有意義な時間でした』
そこには黄金に輝く、フワフサの麒麟が立っていた。
風呂でそこまで輝くのか!?銀瓏並みだぞ!?
「凄い輝きだな……」
「銀瓏にも負けてない光沢感だね」
『もう飯は出来たのだろう?早く食べさせろ』
「はいはい、今準備するから待ってろ」
そう言い、せっせと『合挽き豆腐ハンバーグ』とご飯を用意する。
『これは?』
「ハンバーグ……にしては白いね」
「『豆腐ハンバーグ』って言って、通常のハンバーグよりヘルシーでしかも旨い料理です。麒麟さんには豆腐を多めにしてます」
『ほう……では食べてみましょう』
『いただきます!』
箸で、豆腐ハンバーグを一口サイズに切り分け、口に放り込む……っ!!
『旨いっ!!』
ふんわりジューシーで、100%の肉とほぼ変わらない感じだな!ステーキ醤油もコクがあってうめぇ~!二つぐらいなら余裕で食えるな!
『うむ!前食べた物と若干味は違うが、これはこれで旨いぞ!』
『このソースがハンバーグをアッサリさせて、旨いですね……!』
「本当~美味しい~」
よしよし……どうやら気に入ってくれたようだな。
そうこうしているうちにあっという間に完食し、片づけをした後、俺はガーシュにお供えをする。
「ガーシュ様~本日のお供えものです。どうぞお納めください」
『うむ!ご苦労なのだ!……にしてもお主、あのユニコーンを『契約獣』にするとは……中々運のいい奴なのだ』
「運がいいというか……食い意地のせいと言うか……」
『ユニコーン……いや、いまは麒麟と言ったのだな。麒麟には我輩の加護が備わっているのだ!だから、何かあったとしても銀瓏もいるし、大丈夫なのだ!』
「いやこれ、過剰戦力じゃ……まぁいいや、今更だし」
そう思い、明日に備えて眠りにつくのだった……
次の日、簡単な朝飯で済んだあと、再び『ダークエルフ村』へ向かう。
すると、ズズっと何かを引きずる音が聞こえてくる……
「なんだ?何か引きずっている音が聞こえるような……」
『……ふむ、あそこ』
「ん?」
麒麟さんの目線をたどると……そこには緑にしては光沢感が違う巨大な蛇がいた。
「なにあれ?グリーンサーペント?」
「いや……あの輝きは――『エメラルドサーペント』!グリーンサーペントの進化個体よ!」
「え゛!?てことはAランク!?」
『ほう!それはいい!あいつらの肉はかなり旨いからな、唐揚げが旨くなる!どれ俺が一撃で―――むっ?』
―――ゴロゴロ……
な、何か空が暗くなってきたような……
『この程度……私の足に及びません―――平伏せ、『天罰』!』
―――バッシャァァァンッ!!
『ギャアァァァァッ!?』
空から太い雷が降ってきて、エメラルドサーペントを一撃で黒焦げにする。
え、えぐい……
「一撃で倒した……」
『これでも初級です』
「これで初級なの?どんだけの威力してんですか!?」
『むう……俺が行こうと思っていたのに……』
「まぁドンマイ、次があるよ」
エメラルドサーペントを回収しつつ、気を取り直して、『ダークエルフ村』へ向かう俺たち……Sランク級が二体もいると、道中は何事もなく進むな~……次々に押し寄せるあれこれに目を瞑れば……




