第四十三術 お供えと揚げ物パーティー
ユニコーンにお供えするために、色々と準備をしてきた俺はヤクスギさんの案内の下に、森林が生い茂っている場所に着く。そこには石造りの石板っぽいものに皿などが置かれている。
「ここが、ユニコーン様にお供えする場所だ。ここに野菜や果実、酒などをお供えするのだ」
「そうなんですね……では、失礼して……」
俺は、皿に『浅漬け』した野菜たちに、今回は『日本酒』という酒にしてみた。
種類が多いから今回のお供えは『薫酒』と言う香りが強く、すっきりしたタイプだ。日本酒は俺も飲んだことは無いからどうなのか分からないが……そこは安心と信頼の日本製、何とかなるだろう。
「ふむ……何やら果実のフルーティーな香りがするな……」
「今回は香りが強くすっきりした味わいの酒ですので、味は合うか分かりませんが、きっとおいしいと思いますよ」
「ほう……それはぜひとも飲んでみたいな……」
「後で、料理を作るときにお出ししますね。それに他の酒を出す予定ですし……」
「なんと!まだ他の酒があるのか!!」
「ハイボール旨かったな……ねぇねぇ!また出してよ!」
「はいはい……後でね」
酒好きの皆は、ハイボールが好きだな~……だったら今日は揚げ物にした方がよさそうか?
揚げ物なら銀瓏も大好きだし、酒に合う……いい考えだな!
「さて……そろそろ、精鋭部隊が魔物の狩りから戻ってくるはずだ……期待しているぞ」
「はい!皆に『もう食べられません』って言わせるほど作って見せます!」
『うむ!楽しみだぞ!』
「私も幸の料理楽しみにしてるよ」
「ああ、任せなって!」
そう言って、俺たちは村に戻ってどんな魔物を狩ってきたかチェックしに行くのだった。
『……』
―――
あの人間が、如何やらお供え物をしに来たらしい……
お供え物を見るにあの者が作ったものだと思いますが……見た目はただ切った野菜と……果実の香りがする水の様です……
取り敢えず、私は野菜を一つパクリと口に放り込む。
パキッ――
―――っ!?な、なんですかこの野菜は!?
噛んだ瞬間、丁度いい塩味が効いて野菜本来の旨味が感じ取れる!?噛めば噛むほど野菜の旨味と塩味が口いっぱいに広がる!
……むっ?もう無くなってしまった……いままでエルフたちの野菜を食べてきましたが、ここまで美味しく食べたのは初めてです。
さて……次に香りの良い水ですが……確か、酒と言っていましたが……どれどれ?
ペロッ――
っ!なんとスッキリした味わい!口当たりが軽やかで、甘みと酸っぱさが感じ取れる!こんな酒は生まれて初めてです!!
―――ハァ~……つい、最後まで飲んでしまいました……しかし、これっぽちではまだ足りないと感じてしまいます。まだ食べ足りないのですが……確かあの者はエルフたちに食事を振舞うらしいですね……
―――よし、決めました。
―――
村へ戻ってみると……そこには多数の魔物がゴロゴロといたのだった。
「うわ~凄い数……銀瓏もよりかは目劣りするが、それでも7匹か……」
「ああ、つまみを食べてみたが予想以上にうまくてな……料理が楽しみ過ぎて、つい狩ってしまったよ……」
と、精鋭部隊のエルフの一人がハハハと笑いながら言う。
取り敢えず、狩ってきた魔物を見てみると……
・オーク Cランク
・薩摩亥母 Bランク
・アース・パラガス Cランク
・Q・カボチャ Bランク
・グリーンサーペント Bランク
・茄子ルメ Cランク
・レオン根 Bランク
と、どれもC、Bランクのものばかりだった。
……なんか、野菜っぽい魔物が要るんだけど……
「なんですかこの野菜っぽい魔物は……」
「む?これは『薩摩亥母』といってな猪の形をしたイモでな、温めるとほくほくでうまいんだ。あっちは『アース・パラガス』蛇のような動きだが味は『アスパーラ』と同じだ。質は段違いだがな」
「そ、そうなんですね……」
普通の野菜があるのに、何故魔物型の野菜があるんだよ……『ジャック・ランタン』の時もそうだったけど!
「さてと、これだけあれば足りるな……後は解体するのだが……」
「あ、解体なら私に任せてください!Bランクまでなら『解体魔法』でいけます!」
「そうか、では頼むぞ」
「あれ?結構すんなり了承しましたね?悩むかと思いましたが……」
「料理をつくるのじゃろ?なら、そんなことで一々気にしちゃおれん。折角旨い食事がありつけるのなら、出し惜しみもくそもないわい」
「そ、そうですか……」
どんだけ食いたいんだよ……しかも、後ろのエルフ達もうんうんと頷いているし!
……そこまでいうなら仕方ない……気合を入れて作るぞ~!!
エルフ達が狩って魔物たちを解体した後、さっさと料理に取り掛かる。
まず最初にオーク肉を塩胡椒振って、薄力粉、卵、パン粉の順でつけていく!
160℃に熱した油で5~6分揚げ、上下を返し、温度を上げてさらに1~2分揚げて、油をきる!
出来立てをカットして、キャベルーツを敷いて、ソースをかければ―――
完成!『オークカツ』!
まだまだ行くぞ~!!
まずは下準備だ。
サツマイモは皮のまま洗って5〜7mmの厚さに切り、水にさらしてから水気をふきとる。
カボチャは皮のまま薄切りにする。
茄子ルメ……もとい茄子は縦に4等分に切って水にさらし、キッチンペーパーなどで水気をふきとる。
れんこんは洗ってから皮をむき、6~7㎜幅に切る。
アスパラガスは、半分に切って短くしておく。
よし、下準備はこれで完了!次はこれを『天ぷら粉』につけて揚げるぞ!
ボウルに水、次に天ぷら粉を入れ、黙にならないように混ぜる……
160℃に熱した油で野菜たちに衣をつけ、揚げる!
いい感じに揚げたら、取り出したら――
完成!『野菜もりもり天ぷら』!ついでにかき揚げも作ってみたぞ!!
まだまだ!ついでに唐揚げも揚げるぞ!
最後に、簡単なものにするか……そうだ!どうせ揚げるなら『餃子』にするか!油で揚げる餃子もいいんだよな~!
今回揚げるのはこれ、『チルド餃子』!
安くてうまいからつい買っちゃうんだよな……これを油できつね色まで揚げれば……完成!『揚げ餃子』!
途中、ガーネットさんも手伝ってもらって数多くの料理が完成した。
この数なら、エルフも銀瓏も満足だろう……
「お、おお……これが、サチが作った料理……」
「はい、結構な数を作りましたのでじゃんじゃん食べてってください……それと、これをどうぞ」
「これは?」
「『ハイボール』という酒です。他にも度数が少ないものもありますし、ビールとかも数多くそろえてますのでお好きな酒を取って飲んでください」
「おお……なんという至れり尽くせり……では早速、この衣がかった料理を食べてみるか……」
そう言い、ヤクスギさんは出来立てのとんかつ、もといオークカツをパクリと一口齧る。
――ザクッ!
「んほぉ!?噛んだ瞬間、肉汁が溢れ出た!?そしてこの茶色いソースがこの料理が更にコクが深くなって旨さが倍増する!!それに―――プハ―ッ!!この酒が脂身をスッキリしてくれる!これならいくらでも食えるぞ!!」
うんうん。どうやらヤクスギさんにはオークカツとハイボールをお気に召したようだ。
ヤクスギさんが絶賛するのをみたエルフ達も次々に揚げたての料理に口を運ぶ。
「うめぇぇぇぇっ!?なんだこの料理!?熱々だけど次々に放り込みたくなる!」
「このお酒美味しー!」
「本当、甘くて丁度いいわね!」
「この揚げた薩摩亥母もアース・パラガスもサクサクしてうめぇ!!」
「この肉……グリーンサーペント!?肉汁が溢れて美味しいわ!!」
「この妙な形をしたものもパリパリとしてて、中から肉汁が溢れて旨いぞ!」
「こんな旨い料理、エルフ人生の中でも初めてだ!!」
と、他のエルフ達も阿鼻叫喚だった。
ここまで感動されると、頑張って揚げ続けたかいもあるな……さてと、俺も食うか……まずはオークカツだな。
「……んー!やっぱりとんかつはソースに限るな!!濃厚な甘みのソースにオークの肉が合う!」
「ハグッ……旨いっ旨いよ!!どれもこれも美味しいし……んっ……っはー!酒も旨い!!」
『うむ!!やはり唐揚げはいいモノだな!この揚げた時に閉じ込めた肉汁がたまらん!!』
はぁ~、やっぱり揚げ物はいいな~……カロリー高いのは分かっているが、それでも食いたいって言わせるほどの料理だもんな~……
『――随分と美味しそうですね』
「ん?そうだろぉ?なんたって揚げ物だからな……子供も大人も大好物な一品で―――ん?」
あれ?今、聞いたことの無い女性の声がしたような……
「ん?――むぐっ!?」
『っ!?』
あれ、あんなにワイワイしていた声が急にパタリと消えたぞ?……え、なに?なんなの?ガーネットさんも顔を青くして……
「あの……皆さん、どうされましたか?」
「さ、サチ、う、うし……」
「牛?牛が……どうしました?」
『主、後ろを振り向いてみろ。にしても、まさか自分から現れるなんてな』
「え?」
銀瓏に言われて、恐る恐る後ろを振り返ってみると―――そこには黄金に輝く一角の馬が俺の目の前にいた。
『……』ドンッ!
「―――うおぉぁぁぁぁっ!?」
俺は思わず奇声のような声をあげる。
な、な、な、な……なんか金ぴかの馬がいたぁぁぁっ!?
「や、ヤクスギさん!あの馬は一体!?」
「ば、馬鹿もん!口を慎まんか!あの方は私たちの守護獣……『聖獣』ユニコーン様だぞ!?」
「ダニィっ!?」
あれがあのユニコーン!?めっちゃ神々しい!?
驚いていると、そのユニコーンから話しかけられる。
『……して、人の子よ』
「あっはい!?」
『そのエルフ達の食べている料理と酒、そうですね……『はいぼーる』というのを一つ、私にください』
「えっ?あ、はい……た、ただいま~!」スススッ……
ユニコーンに言われ、急いでかき揚げ、唐揚げ、オークカツ、揚げ餃子に盛った皿と、深めの皿にいれた『ハイボール』を地面に置いた。
『ふむ。どれ……』
――サクッ!
『っ!このサクッとした食感にいくつもの野菜がいっぺんに口の中に広がる……!この衣も、生のキャベルーツと一緒に食べれば、脂っぽさを軽減して、すいすい食べれる!とても美味しい料理です』
「ど、どうも……」
『そして……この酒は――っ!なんとスッキリとした味わい!口の中に残った油がきれいさっぱり無くなりました!さらにそこから、また食えば……んん!まさに『無限ループ』!いくらでも食えます!』
『無限ループ』なんてどこで覚えたんだよこのユニコーン……でもまぁ、喜んでもらえて何よりか……
そんなことを思っていると、ユニコーンは皿に盛った揚げ物とハイボールが空になった。
『とても美味でした……私の中でこの900年、こんな美味たる食事はありませんでした』ペロ……
「そ、それはありがとうございます……」
「……ふむ、やはり私が思っていた通りです……」
「え?」
あれなんだろう……嫌な予感がしてきたな……なんか……
『人の子よ……いや、サチ……私と契約して、貴方の『契約獣』になりませんか?』
「……え?」
『えっ……』
『ふん……』
「えぇぇぇぇっ!?」
『えぇぇぇぇっ!?』
余りの唐突な提案に、俺もエルフ達も銀瓏以外驚きの余り、絶叫した。




