第四十一術 女エルフを料理で懐柔
というわけで、女エルフの警戒を解くため、早速昼飯を用意するのだが……どうしようかな……中途半端な肉があるし……野菜もある……あっそういえば、エルフって肉って大丈夫なのか?一回聞いてみるか……
「あの、すみません……エルフ族って肉とか食べるんですか?」
「むっ……ああ、その辺りの魔物を狩って食しているから、食うが……何故聞く?」
「いやぁ~、エルフって自然を愛する種族だから野菜オンリーかと……」
「なんだその話……聞いたことないぞ」
「私も」
「そ、そうですか……」
どうやら、人間と同じなんでも食うみたいだな……そうだ!せっかくだからカレーにするか!今回は違うメーカーを二種類使ったブレンドカレーだ!きっと驚くと思うぞ~
手際よく野菜や肉を切って炒め、水を加えて、弱火で煮込む。
時々アクをとりつつ、具材が柔らかくなったら火を止め、ルウを入れるが……今回は二つのルウを使う!!
二種類いれると、それぞれのルウの旨味やコクが合わさって旨いんだよな~
「……な、なんだこの芳しい匂いは……嗅ぐだけでお腹が減ってしまう……」
「わー……もしかして『カレー』!」
『だが、嗅いだことの無い匂いだ……』
「お、分かるか?今回はスパイスが入ったルウを入れているんだ!口に合うといいが……」
ルウをいれ、溶けたら再び火をつけて、焦げないように煮込んで、皿に盛って……今回は『ナン』をチョイス!米もいいが、カレーといえばやっぱり『ナン』だろ!
――というわけで完成!『スパイスカレー (中辛)とナン』!!
「どうぞ!召し上がってください」
「お、おう……」
「あれ?今回はお米じゃないんだね……」
「今回は『ナン』って言う、カレーと食べるパンです。つけて食べるとおいしいんですよ!」
「そうなの!じゃあ早速……」
『いただきまーす!』
ナンをカレーにつけて、いざ実食!!
――パクッ
ん!?こ、これは―――
『旨ぁぁぁいっ!!!』
カレーの二種類に入ったスパイスが合わさって、うめぇ~!!うめぇこれ……ナンに合うし、最高だ~!
『うむ!前に食べた『カレー』とは辛さがちと強いが、これはこれでいいぞ!!』
「本当~!私、この辛さが好きかも~!」
「……ゴクッ」
幸せな表情を見た女エルフも、恐る恐る、カレーにつけたナンを一口、食べてみる……すると、目が椎茸のように輝かせる。
「っ!?―――むほー!?なにこの味!?今まで生きてきた中で初めての感覚!?あーダメ……と、止まらなーい!!」ハグハグ……
そう言い、女エルフは凄い速さで食べ進み、既に空の状態の皿がポツンと、手に渡っていた……
『おかわり!!』
「私も!!」
「はいよー」
「あっ、えっと……で、デキれば私も……」
「えっ?おっ……気に入ってくれたんですね」
「う、うぅ……そうだ……」
女エルフは恥ずかしそうに肯定してくれた。そこまで言うぐらいこの女エルフにとっては美味しかったんだな……
「ではまだありますので、じゃんじゃんお代わりしてってください!」
『わーい!!』
「あ、あぁ……分かった」
そうして、数分かけて、あれだけあったカレーがもう無くなった。
女エルフ凄かったな……カレー三杯お代わりしたぞ……
「は、初めてだ……ここまで食うなんて……ウプッ……」サスサス……
「今日も美味しかった~」
『うむ……で?分かっただろう?俺が『契約獣』になった理由が?』
「ああ、身に染みて分かった……これだけの食事ができるのなら、我々の為に料理屋として雇いたいぐらいだ……」
「そんなに?」
これ、作り方書いているから、誰でもできるけど……って言っても、これを作れるのはこの世で俺だけか……
「その……なんだ、ダメ元でいうが……その、『カレー』と言ったか?今度でもいいからまた食わせてもいいか?」
「いいですけど……なんなら、カレールウを渡しますよ?これさえあれば、肉と野菜と水だけで、事足りますし、作り方は後で教えますよ」
「なっ!?……い、いいのか?そんな貴重な物を……」
「大丈夫です!俺にとっては、飯で幸せになってくれるなら惜しませんから!!」
散々ガーネットさんや他の人達の美味しいって言う感謝の声をこれでもかと聞いてきたんだ……これくらいなんの!!
「そ、そうか……だが、有難い。これさえあれば、私でも作れるのだろう?」
「はい、そうです」
ただ、食材を炒めて、煮込んで、ルウを入れて作るから誰だってできるからな。
「……すまない、先ほどの件、謝罪する。誤解を解くために、わざわざ料理して貰って……」
「いえいえ……気にしないでください……こっちも内容を知らずに勝手に入ってしまったので……」
「そうか……そうだ」
ん?女エルフが何か思いついた顔をしたぞ?
「だったら、私たちの『エルフの村』に寄ってこないか?」
「えっ!?それは良いですが……大丈夫なんですか?その……『魔術協会』の人もいますが……」
「安心しろ、何かあったら私が全責任を取る!ここまで尽くしてくれたのだ……なら私も尽くさないと無作法というものだ!」ドンッ!!
な、なんか急に頼りがいのある人になった……流石カレーパワー……ここまで人の心を焚きつけるのか……
「ねぇ折角だし、エルフたちの村を見に行きましょうよ!」
『おい、ケルベロスの肉が先だろ』
「まぁいいじゃねぇか銀瓏。ケルベロスの肉は逃げないんだし……それに、この国の食材で旨いものが作れるかもしれないんだぞ?」
『むっ……そういうことなら、よかろう。ここにはAランクの魔物もいるみたいだしな!』
と、銀瓏は飯のことで了承してくれた。
やっぱ、銀瓏は飯のことになると弱くなるな……
「じゃあ早速、案内をお願いしてもいいですか?」
「ああ!任せてくれ!」
そう言って、お互いに握手をかわす。
――そうだ、忘れるところだった……
「あ、そういえば、名乗っていませんでしたね。俺は『酒森 幸』といいます」
「私は『フラム・ガーネット』よ。よろしくね」
『銀瓏だ』
「そうか、よろしくな。サチ、ガーネット、ギンロウ!私はこのエルフの村の門番『カシワ』だ。こう見えて弓の扱いは村一だ!」
「そうなんですね。よろしくお願いします、カシワさん!」
女エルフ、カシワさんと一緒に『エルフの村』へ進むのだった……ちよっとワクワクしてきた!どんな所だろうな~『エルフの村』は……!
「……っ!待て、何か聞こえる……」
「え?何?」
『……ほうこの魔力、Bランクか……』
すると、バサッバサッ!と羽ばたく音が聞こえる……上を見上げると、そこにはワシとライオンを足した魔物が現れる。
あれってたしか……グリフォン!?でも確かBランクって言ってたから……『リトル・グリフォン』!?
『ギェアアアアッ!!』
「にしても……なんか一回り大きくない!?」
「多分、この国じゃ魔力の質が違うから通常とサイズが違うのよ!」
「マジで!?地域によってサイズが違うの!?」
『だが言い換えれば、肉の量が多くなるということだ!!旨い肉料理が食べれるぞ!!』
「なんだと!?それは『カレー』と同等なのか!?」
『ああ、そうとも!!これは狩らねば損だ!!行くぞ!!』
「ああ!!」
「えっちょ……」
二人は先行して、『リトル・グリフォン』に特攻する……数秒に爆風と共に『リトル・グリフォン』は倒された……速ーよ、おめぇら……
『よし!肉の確保完了!!』
「これなら、いくらでも食えるな!」
……何だろう、食いしん坊軍団が結成したような感じだ……
「……いつものことでしょ?」グッ
「諦めてんな……もう……」
と、ガーネットさんがスマイルでグッとサインを出す。
大丈夫かな……これ……一応、村の魔物だよな?
―――
とあるエルフの村にある森の奥……そこには黄金の毛並みをもった一本角の生えた馬が空を見上げていた……
『……先ほどの匂いは一体……そして、警戒心の強いエルフを懐柔する程の料理……あの青年、気になります―――ところで『カレー』とは、そんなに美味しい物なのですか?』
どうやら、先ほどの会話が聞こえていたのか、幸たちが食べていた『カレー』がどういう味なのか考えていたのだった……




