第三術 唐揚げでドラゴンを釣る
昼ご飯を食べ終えた俺たちは進んでいくと、森を入る頃には、もうすっかり夜になっていた。
「もうすっかり夜ですね」
「そうね。今日はここで野宿するわ。結界を張っておくから安心しなさい」
「結界?」
「そう。私の『個体能力』ね。ステータス見た時あったでしょ?」
「ああ、あれか……」
結界って名の通り、敵から身を守るやつだよな。
そう思っていると、ガーネットさんが軽く杖を振る……
すると、空間に薄い膜のような“見えない壁”が広がった。
「……よし、これならBランクの魔物が寄ってこなくなったわ」
「へー、便利ですね」
「夜は危険だからね。寝込みを襲われることもあるし」
――やっぱり異世界は、ちゃんと危険だ。
俺がそう再認識している間に、ガーネットさんは結界の調整に入っていた。
「さて、ガーネットさんが結界張っている間、俺は晩御飯の準備でもするか……」
そう言って簡易調理場に視線を落とすと、そこには昼に解体した『ギガフロッグ』の肉がある。
「唐揚げか……なら、唐揚げと言えばやっぱり――」
そう言って俺は小麦粉を錬金してとあるものを作り出す。
それは―――
「『唐揚げ粉 にんにくしょうゆ味』~!!やっぱり唐揚げと言えばこれだな~!」
水で溶いて簡単だし、しかもうまい……想像するとお腹すくからパパっとやっちゃおう!
まず、『ギガフロッグ』の肉を一口大に切り、そこに唐揚げ粉を水で溶いたボールに入れて付け込む。
10分ぐらい経つ前に、鍋に『オイルプラント』の油……こっちだとサラダ油を4割ぐらいいれて、熱する。大体180℃くらい。
いい感じの温度になったら、漬け置きした肉を揚げる。
──ジュワァァアッ!
「……っ!何このいい匂いは!?」
ガーネットさんが嗅いだことのない匂いで思わず振り向く。
きつね色になったら取り出して皿に盛って、レモンを一切れ置いたら―――完成!!『ギガフロッグの唐揚げ』!!
完成した唐揚げを早速たべる――大丈夫か?蛙なんて食べたことないから……
「いただきまーす!ハグッ!!」
「見た目は本当に普通の唐揚げなんだが……アムッ」
恐る恐る口に運ぶ。
――次の瞬間。
「……っっっうまい!!」
思わず声が重なった。
鶏肉に似た淡白な旨味。
そこににんにく醤油の香りが絡み、レモンが油を引き締める。
「肉に付け込んだ衣が『ギガフロッグ』の肉にしっかり合う!!レモンを絞れば、油がさっぱりしてすいすい食べれる!」
「確かに、いくらでも行けますね!」
「『唐揚げ粉』って言ったっけ?この料理をより一層美味しくできるなんて……天才よ!天才しかないわ!」
グルルッ―――
「まだまだ種類がありますから今度する時はそれもしますね」
「なんと!?まだそのようなものがあるの!それは楽しみね……うまっ!!」
グルルルルッ―――
「……なんか聞こえないっすか?」
「ええ?Bランクぐらいまでしか入れない結界を張っているからありえないわ。もしあるとすればAランク以上の魔物しかいないわ。だけど、ここは『パシフィスト』よ?高レベルの魔物はあんまりいない……はず……よ……」
「?」
ガーネットさんの顔色が青くなっているような……
ふと、目線にそって振り返ると―――月光を浴び、銀色に輝く巨体。翼を広げたその姿は、まるで夜そのものを裂いて現れたようだった。
そしてその大きさは全長十メートルぐらいのドラゴンが見下ろしていた。
『おわぁぁぁぁぁ!?』
ど、ドラゴンンンン!?なにあのドラゴン!?めっちゃピカピカに光ってるけど!?
「ガーネットさん、あれなんですか!?」
「あ、あ、あわわ……嘘でしょ。間違いないわ、あの銀色の輝き……ドラゴン種の中でも最上位の『二つ名』の突然変異種……冷徹な瞳ですべてを凍らせると言われる『光輝なる白銀龍』……なんでSランクの魔物がここに……」
「名前がもう強そうなんですけど!!」
ドラゴンは静かにこちらを見下ろしていた。
――だが、その視線は、明らかに“敵意”ではない。
「……グルルル」
「ん?」
その瞳は、どこか別のものを見ていた。
そして――
「……ジュル」
「え?」
今、よだれ音しなかったか?
ドラゴンの視線は、俺の手元の唐揚げに固定されている。
俺は一つ唐揚げをドラゴンの目の前で横に動かすと、目線が動く……こいつ、これが食べたいのか?
「……」ソロ~……
俺は唐揚げを持った皿にドラゴンの目の前に置いて少し離れると、勢いよくかぶりつく。
『……っ!!』
美味しかったのか、バクバクと食べ進み、数秒で空になり、皿を前に出し指でツンツンと指してきた。
……お代わりが欲しいのか?
「えっと……その、作らないとありませんので少々時間を待っててもらえますか……?」
『……グゥ』
仕方ないなぁとため息交じりの返答が来たので急いで俺はありったけの『ギガフロッグ』の肉を全部使ってドラゴンに食べさせた。
そして数分の間にあっという間に肉が無くなり、ドラゴンが満足そうにゲップをする。
『ゲプッ……』
「ハァハァ……つ、疲れた……」
「お、お疲れ~幸」
「にしても……かわいいなこいつ」
「今絶対言っちゃダメな感想よそれ」
『……』ノソッ
すると、ドラゴンが俺に近づいてきた。
……えっ何々?なんなの?
『……』ピトッ
「うわっ!?何!?」
ドラゴンの頭が俺のデコにぴったりとつけると、急に光輝きだした。
「嘘……これって……」
「―――ん?何だったの今の光?」
『旨かったぞ。人間』
『!?』
すると、頭の中で声が聞こえた!こいつ……直接脳内に!?
『たったこれぽっちでこの俺を満足するとは……人間も捨てたもんじゃないな』
「これぽっちって……」
「これって……『念話』!?ということはやっぱりあなた、なっちゃったの!?幸の『契約獣』に!」
「びすーと?」
知らない単語が出ると同時にドラゴンは当然のように語る。
『これほどの飯を作る存在を逃す理由がない』
「理由それなんだ」
『よって俺の主とする』
「軽い!!……ところでガーネットさん、『契約獣』って一体?」
「『契約獣』って言うのはね、冒険者が魔物を使役することよ。契約すれば一緒に戦ってくれる心強いパートナーになるし、さっきの『念話』だって使えるようになるのよ」
へー、ようはペットに近いものなのか。
「ただ、『契約獣』にするには、基本魔物は心を開かないから戦闘で弱らせてから済ませるんだけど……冒険者でもないあなたが高ランクの魔物を自分から契約するなんて、聞いたことないわよ……」
『当然だ、さっきも言っていたがこいつの飯が旨かったからな。それだけで契約するのに十分だ』
「契約の理由が飯って!?」
「……ちょっと来て、幸。このドラゴンのステータス……やばいってもんじゃないわよ……」
「え?」
ガーネットさんが鑑定でドラゴンのステータスを見てみると……
【名前】
【年齢】 600
【性別】 ♂
【種族】 シルバードラゴン
【二つ名】 『光輝なる白銀龍』
【契約先】 酒森 幸
【レベル】 500
【ステータス】
・体力 6000
・魔力 10000
・筋力 5800
・俊敏性 5800
・耐久性 8000
【スキル】
・炎魔法・水魔法・雷魔法・風魔法・土魔法・形態変化
・ドラゴン魂・無詠唱術・消費魔力術・魔力感知術・念話(New)
【個体能力】
・氷結魔属性
……チートってレベルじゃねぇぇぇぇ!?何このステータス!?とんでもねぇもん契約(勝手に)してんだぁ!?
「千や一万やら、ガーネットさんや俺のステータスがかすむほどだぞ……うん?名前?ここに何もないけど……」
「ああ、『契約獣』になった魔物は最初に名前を付けるのよ?」
「名前か……」
『カッコいい名にしろよ?』
と、ぬっと俺たちの前に顔をだす。
カッコいいね……こんだけ強いんならそれらしい名前にしたいな……うーん銀、銀、スチール、光――あっ閃いた!
「『銀瓏』……ってのはどうかな?」
『『ギンロウ』……ふむ、お前にしてはいい名だ。それでいい』
「よしっ決まり!よろしく銀瓏!!」
「あっでた」
ドラゴンが呟いた瞬間、銀色の鱗が夜空の星のように輝きだす。
すると……空白だったステータスの名前欄に、ゆっくりと文字が刻まれていく。
【名前】 銀瓏(New)
よしよし、でたね。
『ふむ……では主よ、三度の食事の用意を頼むぞ?』
「……え?」
ってやっぱこいつただ食いたいだけじゃねぇかぁぁぁぁぁぁ!?
こうして俺たちの旅に新たな仲間ドラゴン改め、『銀瓏』がついてくるようになった!
……どうしようかこれ?ほんと。
ちなみに。『光輝なる白銀龍』の他にも『烈火の紅赤龍』(スカーレット・レッドドラゴン)、『深海に潜む水蒼龍』(オーシャン・ブルードラゴン)、『暴風を生む嵐緑龍』(ハリケーン・グリーンドラゴン)、『地壊なる土黄龍』(グランド・イエロードラゴン)、『雷光に轟く黄金龍』(ブリッツ・ゴールドドラゴン)がいる。出るか分からんけど




