第二十一術 Sランク ムーンビースト
朝日が昇り、軽めの朝食を済ませた俺たちは、いよいよ最深部へ向かうことにした。
「いよいよか……」
『さて、骨のあるやつを頼むぞ』
「ゴクリ……いくよ」
ガーネットさんが『転送石』へ魔力を流し込む。
すると足元に巨大な魔法陣が展開し、眩い光が辺りを包み込んだ。
――ピシュンッ。
次の瞬間、俺たちが立っていたのは広大な空間だった。
まるで古代神殿のような石造りの遺跡、天井は遥か高く、巨大な柱が並んでいる。
「ここが最下層か……っ!?なんだあれ!?」
視線の先にいたのは、異様な魔物だった。
灰色のぬめりを帯びた巨体、頭部からはピンク色の触手が無数に伸び、目は存在しない。
その代わり、裂けた口にはびっしりと牙が並び、真紅の爪が不気味な光を放っていた。
「なにあの魔物!?」
「……っ!?嘘でしょ」
ガーネットさんの顔色が変わる。
えっなに!?なんて書いてんの?
「あの魔物は『ムーンビースト』っていう魔物よ……そして、あの魔物は『Sランク』……最高ランクよ」
「!?」
その一言で思考が止まる。
え、え、え、Sランク!?それって銀瓏と同じランクってこと!?
『ふん、Sランクと言えど、多少手こずる相手だ。だが、気をつけろ……奴の身体は粘液性の体液を纏ってる。物理攻撃があまり効かない』
「ええ!?……というか、まるで戦ったかのような言い方だけど……」
『実際に狩ったからな』
「マジで!?」
その瞬間だった。
『―――グォォォッ!!』
ムーンビーストが咆哮を上げた。地面が震える。
次の瞬間には巨体とは思えない速度で突進してきた。
「ひぇっ!?」
「きゃっ!?」
俺たちは慌てて飛び退く。
『さっきも言ったが、コイツは物理攻撃はあまり意味がない!魔法で攻撃し続けろ!』
「ま、魔法……なら『錬金術:風』!」バシュシュ!
『っ!』
錬金で大気中の空気を風魔法に変え、ムーンビーストへ鋭い槍の風魔法を向ける。
しかし――
『グルル……』
かすり傷ぐらいしかできなかった。
くっそ!こいつ硬すぎじゃね!?
『ガァッ!』
「うわっ!」
今度は俺目掛けて腕を振り下ろしてきた。
「『絶対防御結界』!!」
――ガキィィンッ!!
『がっ!?』
透明な結界が攻撃を受け止め、衝撃で空気が震えた。
た、助かった……
「あ、ありがとうございますガーネットさん!」
「お礼はあと!銀瓏!」
『ぬぅん!!』ゴォォォッ!
『っ!』
銀瓏の姿が消えた――いや、速すぎて見えなかっただけだ。
『『龍王・華炎』!!』
―――ドゴォォッ!!
燃え盛る炎を纏った爪が、ムーンビーストの横腹に突き立てた。
巨体が吹き飛び、神殿の壁へ激突……轟音と共に巨大なクレーターが生まれる。
それでも――
『ぐっ……ガァァァ!!』
「うわっ……銀瓏の攻撃喰らったのにまだ動けてる……」
いつもならサクッと倒していたから、耐久力の凄さに引くわ……流石Sランクと言わざるを得ない……
「なぁ、銀瓏!あいつ倒したことがあるって言ってたよな。どうやってだ?」
『ああ?そうだな……こいつには粘液性の体液を身にまとっているからな……『炎魔法』を纏わせて、その粘液を焼き尽くして倒したものよ』
「炎?……っ!そうか、『乾燥』!」
あの粘液……あれが防御の本体だ。
ならば――
「ガーネットさん!ムーンビーストに向けて『炎魔法』で、銀瓏は弱らせたあと、ムーンビーストに攻撃で!」
「わかったわ!」
『ほう?何か策が見つけたようだな……いいだろう!その手に乗せられてやる!』
俺は両手を突き出した。
「行くぞ!――『錬金術:風』!」ゴォォォッ!
『っ!』
今度は槍じゃない……巨大な竜巻。
ムーンビーストを中心に閉じ込めるように風を渦巻かせる。
「今だ、ガーネットさん!」
「『火炎魔法』!!」ボッ――
――ボゴォォォォッ!!
ガーネットさんの炎魔法と俺の錬金した風魔法を合わせ、炎の竜巻を作り出す。
『ガァァァァァッ!?』
すると、ムーンビーストが苦しみ、悶える。
粘液が蒸発していく音が聞こえた。
「よしよし効いてる!やっぱり乾燥に弱いんだ!」
『ふっ……ナイスだお前ら!―――『突撃龍』!!』
『っ!――』
――ドゴォォォンッ!!
音を置き去りにした突撃、銀色の閃光がムーンビーストを貫いた。
『グガッ……!?』
巨体が大きく抉れ、その身体はゆっくりと崩れ落ちた。
「や、やったか?」
「幸、それ多分ダメな奴」
なんかフラグっぽい台詞を吐きつつ見守ると、ムーンビーストがポンッと音を立てながらドロップする。
「ドロップした……ということは!」
「ムーンビースト、討伐成功だ!!」
「わーい!!」
『ふんっ……まあ軽い運動になったな』
全然良い運動の範囲じゃないと思う。
ムーンビーストの討伐に喜んでいると、ゴゴゴッと何か音が鳴る。
「えっ何!?地震!?」
「っ!幸あれ!あれ見て!」
ガーネットさんが指したその方向には、神殿中央の床が割れ、その中から一本の剣が姿を現した。
何あれ!?剣!?
「ど、どうしようガーネットさん……」
「ど、どうって……引っこ抜くしかなくない?」
ええ……怖いんだけど……
恐る恐る剣の柄を握り引っこ抜くと、いとも簡単に抜けた。うわっ意外と軽っ……
「ガーネットさん、この剣は何ですかね?」
「ちょっと待ってて―――ヴぇ゛!?」
「?どうしたんですか?」
『なんだなんだ?なんて書いている?』
ガーネットさんの鑑定でこの剣の詳細を見ると―――
『神剣エクスカリバー オリハルコン製。魔力を込めれば聖神属性のビームが出る』
沈黙―――
なんかどっかの騎士王が使いそうな剣が出てきたんだけど……というか『神剣』って何!?
『お、おお……神剣か、俺は初めて見るな』
「あわわ……!嘘でしょ噓でしょ!?」
「え?何?そんな有名?」
「有名どころじゃないわよ……」
ガーネットさんが食い気味に言う。
「『神剣』って言うのはね、神が作り出した剣と言われていてね。その『神剣』は特別な効果をもつのよ……!しかも効果は絶大で、『なんでも切れる』とか『身体能力向上』とか持つだけで効果が発揮されるわ。しかも発見した数が少ないって言われるのよ。ほとんどがダンジョンで出て来たって言われたけど……は、初めて出てきたとこ見た……!」
や、やべぇ代物だった……これ……!
と、とと取り敢えず……これは次のギルドの時に鑑定してもらおうかな……
「……ひとまず、ダンジョンでドロップしたもの確認しません?」
「……うん、賛成」
俺はそっと神剣を収納した。
……うん、後でギルドに相談しよう。
絶対に俺一人じゃ判断できない。
というわけで、ギルドに献上する時の為に、一回ダンジョン産の素材を確認する。
あっ銀瓏は興味ないのか寝ちゃってる。
……数時間かけて、確認が完了した。
今回でドロップした素材は―――
・キルスパイダーの足×20個
・キルスパイダーの目玉×10個
・プチバットの翼×30個
・オークの肉×10個
・オークの睾丸×20個
・オークの牙×30個
・ツインコブラの牙×5個
・ツインコブラの目玉×1個
・ツインコブラの皮×1個
・スカーレットサーペントの牙×2個
・スカーレットサーペントの皮×1個
・マンイーターのツタ×20個
・グリフォンの肉×5個
・グリフォンの翼×15個
・グリフォンのくちばし×5個
・レッドオークの肉×5個
・レッドオークの睾丸×2個
・レッドオークの牙×10個
・マンティコアの肉×5個
・マンティコアの毒針×5個
・マンティコアの毛×5個
・マンティコアの牙×10個
・オルトロスの毛×5個
・オルトロスの牙×10個
・カルキノスの肉×15個
・カルキノスの甲羅×10個
・ウルトラアルミラージの肉×2個
・ウルトラアルミラージの角×5個
・ウルトラアルミラージの牙×5個
・カトブレパスの目×1個
・カトブレパスの角×1個
・ムーンビーストの触手×1個
・ムーンビーストの爪×2個
・ムーンビーストの粘液×3個
・神剣エクスカリバー×1個
以上が今回のドロップした素材だ……うん、多いな。
「こんなに素材がいっぱいですね……」
「そうね……私も別でダンジョン行ったことあるけど……ここまでの収穫はなかったわ」
これ全部売ったら何Gになるんだ?
――うん、考えるのは止めよう。
「取り敢えず、ここから出ましょう。そして早く『トランザ』のギルドで買い取りしていきましょう……」
「賛成」
『ん?もう終わったか?』
「ああ、今終わったよ。じゃあ戻るか」
そうしてダンジョンのボス、ムーンビーストを討伐に成功した俺たちはダンジョンから出るのだった。
~こぼれ話『やらかし』~
ガーシュ「暇だったから色々な剣を作っていたのだ」
ソトール「嫌な予感しかしないんだが」
ガーシュ「気付いたら神剣が完成していたのだ!」
ソトール「気付いたらで済む話じゃないだろ!?」
ガーシュ「やっちっゃたZE★」
ソトール「やっちゃったじゃないだろ!何カッコいい言い方してんだ!」




