第二十術 森林攻略とキャンプ
「何でダンジョンに森林があるんですか!?」
突然広がったジャングルのような景色に、俺は思わず叫んだ。
「うーん……これは相当な難易度ね。本来ならこういうのは『トランザ』のダンジョンぐらいしか見たことないんどけど……何年ほどの月日によって、ダンジョンが進化したのね」
『トランザ』もそういうダンジョンなの……?
軽く絶望していると、銀瓏が何かを察知したように鼻を鳴らした。
『……ほう、Aランクの魔物がいるな……』
その金色の瞳が獲物を捉える。
『これはいい!丁度Bランクの雑魚と相手していたからな……食後の運動に付き合ってもらおう』
「ええ!?もう少し情報を集めてからでも……」
『臆病者は来なくていい!行くぞ!』
「もう行くの確定してるわよ?」
「ちくせう……」
俺達は銀瓏の背に乗り、森の中へ次の階層へ進む。
『……っ!いたぞあそこを見ろ』
銀瓏が前方を見据える。視線の先にいたのは――
「あ?……で、デカっ!?」
巨大な赤い蛇だった。
木々の間を這うだけで地面が揺れる。
「あれは……『スカーレットサーペント』!?『レッドサーペント』から進化した魔物よ……まさかこんなところで出会うなんて……」
『俺が引き付ける。俺だけでもいいが、実戦を積むのに丁度いい。お前らは遠距離でサポートしろ』
「あっはい!わかった!」
俺達は銀瓏の背から降り、そのまま銀瓏はスカーレットサーペントへ突っ込む。
『キシャー!!』
『遅い!』
──ズバッ!!
『ギャー!?』
銀瓏の爪が腹部を深々と切り裂いた。
その隙を逃さず、ガーネットさんが魔法を放つ。
「『氷型束縛魔法』!!」
『ぎっ……!?』
氷の鎖が瞬く間にスカーレットサーペントの身体へ絡みつき、動きを止める。
「『錬成』!!」ジャキッ!!
その隙にアダマンタイトを剣へ変化させ、そのまま一気に踏み込んだ。
「うぉぉぉぉっぁぁあ!!」
──スッ………パァンっ!!
硬い鱗ごと、まるで豆腐でも切るかのように、スカーレットサーペントを両断する。
『ふん、あんだけ弱腰だったのにやれば出来るではないか』
「こ、怖かった……」
「お疲れ、幸」
すると、倒したスカーレットサーペントが消え、素材がドロップする。肉もあるから回収しておくか……
回収したあと、階段があったので、先へ進むことにした……この先にまだAランクとかヤバイものもいるんだろうな……
【はぐれダンジョン 十二階】
『ギシャァ!!』
「うおあぁぁぁ!?食虫植物!?」
突如として現れたのは、巨大なハエトリグサのような怪物だった。
「『マンイーター』よ!あの大きな口で捕食するから気を付けて!」
「十分怖いわ!」
うぉぉ!!こっちくんなぁぁぁ!!
「『錬成』!!」
アダマンタイトを槍へ変化し、さらに先端を伸ばし――
――ズブッ!!
そのまま頭部を貫いた。
『っ……あ゛あ゛あ゛っ!!』
――カキィィィィン!!
銀瓏は冷気のブレスを吐き出し、複数のマンイーターを一瞬で氷漬けにした。
そして―――
『ふんっ』
――バキッ!!
その後、尻尾の薙ぎ払いで全て粉砕する……え、エグイな。
「『炎球魔法』」
ガーネットさんも炎の球を連続で放つ。
――ドコォォンッ
正確に命中した炎が次々とマンイーターを焼き払った。
やっぱり魔導士って凄いな……
『……よし、この階層の敵はいないようだ。次に行くぞ』
「ういっす……」
俺は乾いた返事を返しながら先へ進んだ。
【はぐれダンジョン 十三~十九階】
それからも戦いは続いた。
しかし銀瓏のお陰で致命傷を負うこともなく、俺たちはついに最深部直前まで到達した。ちなみに出現した魔物は――
【十三階】
グリフォン Bランク ×20匹
【十四階】
レッドオーク Aランク ×5匹
【十五階】
マンティコア Aランク ×6匹
【十六階】
オルトロス Aランク ×10匹
【十七階】
カルキノス Bランク ×30匹
【十八階】
ウルトラアルミラージ Aランク ×10匹
【十九階】
カトブレパス Aランク ×1匹
という感じだった……いやおかしいだろ。なんでAランク魔物がこんなにもゴロゴロ数いんだよ。繁殖期?
「あの、ガーネットさん……ここ本当に低レベルの国ですか?どう考えても危険地帯の国ですよね?」
「あ、あはは……私もこんな高ランクの魔物ばっかいるなんて思わなかったな……」
さすがのガーネットさんも乾いた笑いを浮かべる。
『さて、次がやっと最深部だな……いまにも行きたいが……』
「今、空が真っ暗なんだよな……」
見上げれば夜空が広がり、月まで浮かんでいる……
なんでダンジョンに月があるんだ。
「取り敢えず、今日は飯を食べた後、朝まで寝よう。そして朝日がのぼったら行くということでいい?」
『うむ、構わん』
「休息は大事だからね~いいよ!」
ということで、夕食の準備を開始する。
森林エリア。
焚き火。
キャンプ。
ならば料理は――
「じゃーん!『カレーライス』!!」
『……カレーライス?』
カレーライスと聞いて、二人が揃って首を傾げた。
そっか、ここに香辛料という名のスパイスとかの認識は薄いからな……
「要はスパイスがいっぱい入った料理って事だよ」
「へースパイスね……なんか凄そうだね」
『わからんが……主が絶賛するものだから、相当旨いんだろうな』
「ああ、待ってろよ……」
肉は……色々たべてみたいし、道中で手に入れた肉を片っ端からいれるか!ボス戦前だしな!
まずは野菜だな。
ネギオンは繊維にそって、くし型に切る。
ジャンガとキャーロトは皮をむいて、一口大に切る。
肉類も一口サイズに切っておく。
そして次は鍋で炒めるのだが……
「ジャーン!!この前、アルミを錬金したあと、フッ素やらなんやらで錬成した俺特注の鍋『寸胴鍋』!!これなら大食いの銀瓏だって満足できるはずだ!」
まず油を引き、熱した後、ネギオンを炒め、全体に油が回ったらジャンガ、キャーロト、肉類の順でいれ、炒める。
それぞれの具材全体に油が回り、ネギオンがしんなりしたら、水を加えて、弱火で煮込む。
時々アクをとりつつ、具材が柔らかくなったら火を止め、ルウを入れる。ルウは当然――
「やっぱこれだな!『はちみつとリンゴのカレールウ』!」
本当は二種類のカレーとか組み合わせて作りたいけど、辛さに適応できるか分からないし、辛みが少ないから美味しく食べれるはずだ。
ルウをいれ、溶けたら再び火をつけて、焦げないように煮込み、とろみがついたら……
――完成!『ごろごろお肉のカレーライス』!!
炊き立てのご飯にかけて……二人に渡す。
「わー……スパイスのいい香り……」
『……嫌な匂いではないが……』
では早速、いただきまーす!
――ハムッ……
『っ!!―――旨いっ!!』
んー!色んな肉をふんだんに使っているから色んな食感が楽しめてうめ~!
この鶏肉っぽい味はグリフォンか……その次に微かに鶏肉より野生感がある肉、兎肉か?ということはアルミラージか!次は豚肉だ、ということはレッドオークか!噛んだ時の肉汁がうまっ!!
「このピリっとした食感が食欲を注ぐわ!それに米との相性抜群ね!」
『うむ!辛みもあるが、果実のような甘さも感じるぞ!!それに、色々な肉が入っているから俺は大満足だ!』
と、如何やらカレーは大好評のようだ。やっぱ異世界人でもカレーは好きなんだな……今回は甘口にしたけど、次はちょっと辛さを足しても大丈夫そうだ。
バクバクと食べ進み、あれだけあったカレーがもうすっからかんになっていた。
『んは~!……食った食った……』
「美味しかった~……」
「喜んでもらえて何より」
『さて、飯も食べたし、明日に備えてひと眠りするか……』
「そうだな……明日はいよいよダンジョンのボスだ。気を引き締めないとな……」
ダンジョンボス……いったいどんな強さなんだ?まさかSランクとかはないよな?ないよね?
そんな不安を胸に抱きながら、俺は銀瓏の身体を枕代わりにして横になった。焚き火の音を聞きながら、ゆっくりと瞼が閉じていく。
――明日はいよいよ、最深部だ。




