第一術 『錬金術』
日本の食べ物を異世界の人が驚く展開、いいよね。凄い飯テロだね
取り敢えず、ガーネットさんに俺が持つ、『錬金術』について説明される。
――というか、そういう書類あったんだ……そんなに有名なのか?
「いい?あなたの『錬金術』はこの書類には三つの錬金方法があるらしい」
「三つ……ですか?」
「うむ。順を追って説明するわね――まずは『転移転換』ね。これは、物体を似たものに変化させる錬金術よ」
「似たものに?」
「例えばそうね……『リンゴォ』って言う果実をそれに似たもの、例えば『ナッシー』に変化させたり、腕があれば果物系なら何でも変化させることが可能よ」
「つまり、種類が同じものなら変化させることができると?」
「ざっくり言えばそうね」
へー……そりゃすぇげな。
「次は『合成転換』ね。2つ以上の物体を合成して、一つの物質に変化させる錬金術よ。例えば、剣と鉱石があれば、鉱石出てきた剣が作れるのよ」
「おお、合成か!」
RPGでお馴染みのやつか~テンションあがりそうだな!
「そして最後に『魔力転換』。自身の『魔力』を変化させ、多種多様な物体に変化させる錬金術よ」
「自身の……魔力、ですか?」
「ええ、といっても名の通り、他のと比べて魔力をかなり消費するから手持ちが無かった場合に使うけどね……」
成る程、便利だけどそれなりに制約があるのか……そりゃそうだよな、もしそれだったら『魔力転換』だけでいいもんな……
「こんなところね……ねぇ、幸。最後に錬金術について一番大事なことを言うわ」
「一番……大事なこと?」
「そうよ。その大事なことは───『イメージ』よ。自分が思う『イメージ』を強く願うことで、多少の不足分を補うことが出来るし、成功率も高くなるわ」
「イメージ……」
「まっ、口で言っても分からないでしょうし……実戦あるのみよ!」
ガーネットさんがそう言うと、用意したのはこげ茶色のパンらしきものが机に置かれた。
「さぁ、試しに『錬金術』でこのパンを何か転換してみなさい!」
「何かって……まぁいいや、いっちょやってみっか!」
俺は心の中の興奮を高め、気合を入れて手を翳して唱える。
「『錬金』!!」
シーン……
『…………』
そこには微動だにしないパンに静寂が俺たちの周りに沁みこむ。
「……あれ?」
「ハァ~……」
何ででないかと思っていると、ガーネットさんがふっかいため息を吐く。
――そんな呆れた顔せんでも……
「私の言ったこと忘れた?『イメージ』を強く持たないと反映されてないって。今のあなたは考えなしに言っただけ……もっと変換したいものを『イメージ』するのよ。例えば……このパンなら、あなたがいた世界のパンとかね?」
!……成程、それなら!
俺はガーネットさんのヒントを生かして、今度こそ『イメージ』を持って机に置いたパンを転換させる。
一番メジャーのパンなら……『食パン』だな!
「『錬金』!!」
バズズッ!!
『おぉぉ!?』
『イメージ』したパンを錬金すると、みるみるとこげ茶色のパンが白くなって、いつも見ている四角型のパンが現れる……袋ごと。
……え、袋ごと来たんですけど。おもっくそ本社のパンが出てきたんですけど。
「ほぉ……これがあなたがいた世界のパンなのね。どれどれ……」
ガーネットさんは転換したばっかのパンの袋を開け、食パンを一つハムッと一口食べ始めた。
すると……
「!?……な、なんじゃあこのパンは!?なんてふわふわな食感なの!?」
(めっちゃ驚いてる……)
「一般的なパンと言えば、パッサパサの味がしない黒麦パンなのに……ハムッ……この食感といい、味といい、貴族しか食べれないほどのパンよ!あなた、実は貴族なの!?」
「いや……この食パンはいつも低価格で買えますけど……」
「なぬ!?……ちなみに何Gなの?」
「えーと、こっちの世界は円なので、1円=1Gとすると……大体200Gになりますね」
「な、な、な、なんじゃとぉぉぉぉ!?」
うおっ!?ガーネットさんは驚愕な顔をしながら迫ってきた!?
「こんな低価格で美味しいパンが食べられるの!?はわわ……う、羨ましい……」
「あはは……」
と、ガーネットさんはキラキラした目で涎が滝のように流しながら見つめていた……どんだけひどいんだ、ここの世界は……
「はっ!――他にも、こんな美味しいパンがまだあるのでは……よし、幸だったわね。『錬金』の力を試すついでに、あなたの世界のパンを錬金して見なさい!!」
「あんたが食いたいだけじゃねぇか!!」
「そ、そ、そ、そのようなことがあろうはずございません……」
と、図星なのか目が高速で泳いでるガーネットさんを見つつ、しかないと呟き、何か錬金に使えないか、ちょっとこの部屋を探索する。
「これが冷蔵庫よ……モグモグ……」
「これがか……ん?」
冷蔵庫をみてふと見つけたのは……黒い豆のようなものだった。
「豆?……あの、ガーネットさん。この豆は?」
「んあ?ああ、『ブラビーズ』という豆ね。一般的な豆で煮料理に使うわ」
豆か……あ、ならあれなんかどうだろう?
「ガーネットさん、ここに砂糖はありますか?」
「モグッ……あるにはあるが、何をするの?」
「ちょっと甘い豆のパンを……と」
「?」
まずはこのブラビーズを日本の代表豆『小豆』に転換させる。
『ブラビーズ』⇒『小豆』
そして、この出来上がった小豆を砂糖と一緒に合成転換させ、『餡子』を錬金!
『小豆』+『砂糖』⇒『餡子』
「おお、これは何?」
「『餡子』って言って、豆を甘く煮たさせたものです」
「どれどれ……っ!?なんと、味わい深い甘さ!しつこくなくていい!」
「ふふ……そしてさらに、このパンと餡子で合成すれば―――できた!『あんぱん』だ!」
『餡子』+『食パン』⇒『あんぱん』
出てきたのはいつもスーパーで見ている『あんぱん』だ。
……やっぱり袋ごとできたよ。やっぱ『イメージ』で作っているから袋詰めで来てんのかな……
「こ、これが『あんぱん』という奴ね……どれどれ?」
出来上がったあんぱんをパクリと一口食べると――ガーネットさんが驚愕の顔で弾けた。
「あっっっっっまぁぁぁぁぁいっ!?―――何この甘いパン!?そのままでおいしかった食パンが、この餡子の甘さと食パンの甘さが合わさって美味しい!?ハムッ……こんな美味しいパンを……格安で売っているとは……ハムッ……畏るべし」
すっげぇ喜んでいるなガーネットさん……さて、次はどれを錬金しようか……うん?これって……クッキーか?
「ああぁぁ!!そ、それはダメ!!」
と、突然ガーネットさんが叫んで、手に取ったクッキーを奪い去った。
「こ、これは、私が楽しみに取っていた貴重お菓子!とても高級で唯一の楽しみなの!」
「く、クッキーがですか?」
この世界の食べ物ってそんなに価格が高いのかよ……まぁ確かに、昔って胡椒はかなり高級だった話だしあり得るのか?
「えっと……そのクッキーを使って、あんぱんみたいな美味しいパンを錬金できるんですけど……」
「あんぱんみたいな……だと?ん~……」
ガーネットさん、めっちゃ悩んでる……悩むこと数分経って、ガーネットさんは決心する。
「~~っ……失敗したらただじゃおかないからね!」
「は、はい!」
渋々了承したガーネットさん、早速このクッキーを錬金する。
クッキーのパンと言えば―――やっぱこれだな。
『クッキー』+『食パン』⇒『メロンパン』
合成してできたのは、これもスーパーでよく見かける『メロンパン』だ。
ガーネットさんは袋を開けて食べてみると……
「なんじゃこれ!?外はサクッと香ばしく、中がふわふわで美味しい!あんぱんとは別でこれもまたいい!」
よかった……これも喜んでいた。
「はっ……!あれも行けるのでは……」
「あれ?」
そう言って、ガーネットさんが取り出したのは茶色の塊だった。
「ガーネットさんそれって……」
「これは『チョコレート』よ。さっきのクッキーよりも高級な菓子でもあるのよ……」
「ええ!?クッキーよりも!?」
チョコもこっちじゃ低価格なんだけど……
「それで……このチョコレートと食パンを錬金すれば、あんぱんとやら並に美味しいものができるのか?」
「チョコですか……いいですよ!」
そう言い、ガーネットさんからチョコを貰い、錬金する。
チョコのパンだったらこれだよね。
『チョコレート』+『食パン』⇒『チョココロネ』
出てきたのはドリル状の形をしたパンにチョコレートクリームが入ったパン『チョココロネ』だった。
「おお!?なんじゃこの珍妙な形をしたパンは!!」
「『チョココロネ』っていう中にチョコレートのクリームを詰めたパンです」
「なぬ!?……!本当ね。中にチョコレートが入ってる……どれどれ……!?」
ガーネットさんが一口食べた瞬間、大粒の涙が零れる。
ええ!?ガーネットさん!?大丈夫ですか!?
「あ、あのガーネットさん?何か良くないことが……?」
「グズッ……違う、ただ、こんな美味しいパンが沢山食べられて、今までの人生をちょっと感慨深く感じただけよ……グズッ」
「そ、そうですか……」
泣きながらチョココロネを食べ終えると、ガーネットさんはコホンと、咳払いする。
「さて、これからだけど……あなた、これから行くあても目的もないでしょ?もとに帰れるほしょうもないし」
「ええ、まぁ……」
「なら、あなた……この世界で『冒険者』になってみない?いろんな世界を旅して、見て回る……そんな素敵な生活は!」
いろんな世界……!確かにそれもありだな……ん?いや待てよ?
「いいと思いますけど……それただ単に俺と一緒に行けば美味しいもの食べられるとかじゃないですよね?」
「……」ピュー♪
「おーい、こっち見ろ」
図星なのか、ガーネットさんは口笛拭きながらそっぽ向いていた。
やれやれ……でも、せっかく異世界に来ちゃったんだし、この世界を探求するのもありだな!
そうして、俺はこの異世界での生活が始まるのだった。




