第十七術 孤独の楽しみと偶には晩酌
翌朝。
朝食を済ませると、銀瓏は『腹を空かせて帰ってくる』と言い残して狩りへ出掛け、ガーネットは部屋に籠もって魔法研究を始めた。
そして俺はというと――
「はいよ!これが『トロール』の肉よ!持ってけ!」
「ありがとうございます!」
解体屋で受け取ったのは、大量のトロール肉と解体料の差し引き分の報酬だ。
店主は腕を組みながらニヤリと笑う。
「しっかし、トロールの解体なんて何年ぶりだ?久しぶりに腕がなったぜ!」
「そ、それはどうも……」
「そういえばさっき聞いたぜ?あのドラゴン、たしかギンロウだったか?狩りに出かけたらしいじゃねぇか。そこに高ランクがいたら解体してみたいぜ」
と、まだまだやる気な感じで話してきた。
……あり得そうなのが困る。
銀瓏はどこからかB・Aランクの魔物を取ってきそうだからありそうなんだよな……
あの後、肉とGを受け取った後、プラプラとこの町を探索する……そうだ!
ロックマウンテンは鉱石の街。なら、食器とか家具とか、良い物があるんじゃないか?
そう思って歩いていると、丁度探していた店があったので入ってみる。
「すみませーん」
「いらっしゃいませ――って、あなたは!」
受付の女性が目を丸くする。
「もしかして『自由の食旅』の方ですか!?」
「え、はいそうですが……」
「ありがとうございます! おかげで街が活気づいたんですよ! うちの旦那も『久しぶりに良い鉱石が加工できる!』って張り切ってます!」
「へ、へーそうなんですか……」
もう、街の噂になってる……まだ一日も経ってないのに……
「あ、あの食器はありますかね?」
「ええ、ありますよ。では案内しますのでじっくり見てってください!」
そう言い、受付の人に案内される……うわー凄い数の食器だ……色々あるな。
木製、鉄製、銀製……そして――。
「……おっ、すげぇ『アダマンタイト製』のフォークやスプーン、ナイフもあるな……で値段は―――」
アダマンタイト製食器具三セット 30万G
うわ高っ!?流石は世界最高峰の鉱石……アダマンタイトだからかな。
でも多分、二人しか使わないし、買おうかな。
でー他には……おっカセットコンロだ!いや、これよく見ると『魔コンロ』って書いてある……魔力で動くのか?
で、値段が―――
魔コンロ 10万G
うむ……高い……でも、これ便利だな。今までは簡易的な竈で作っていたから、火力調整が楽になるのはいいな……どうせ、トロール分のGと後にアダマンタイトの買い取り金も出てくるし……買っちまうか!!
「すみません、この商品をください!」
「はい、かしこまりました……合計で『80万G』になります―――が……」
「が?」
「今回は特別に半額で『40万G』でお売りします」
「ええ!?半額ですか!?」
「はい!なぜなら、この街の危機を救ったのですよ?サービスだと思って受け取ってください」
「そ、そうですか……」
気前がいいな……それだけ、あの鉱山は生活の泉だったんだな……
「ですが、次回の買い物は通常価格で行いますけどね」
「はい、それは分かりました。では、どうぞ『40万G』です」
「……はい、確かに受け取りました。では商品をどうぞ」
「ありがとうございます。ではまた」
「はい、またのお越しを~!」
思わぬ大盤振る舞いに驚きつつも、俺は40万Gを支払い、商品を受け取った。
いやぁ……良い買い物した。
その後も街を回り、折り畳み式のテーブルや調理器具などを購入。
――気が付けば昼になっていた。
目的のテーブルも買えたし、食器もいい感じに買えたな……しかも、このテーブル高さも変えられる代物なんだよな~!――っともうお昼ごろだし、1人だけだからいい物食べるぞ~
そう思い、宿屋の庭でバックからテーブルを取り出し、設置する。
『等価交換』で今日の昼飯を食べるものを決める。
「夜は作るから、今日はせっかくだし、一人飯を楽しむか……」
テーブルに腰掛け、『等価交換』を開く。
画面をスクロールしていると――
「どれにしようか……おっ!『ハンバーガー』か……しかもこれ、ポテトもついてる!これにしようか!」
久しぶりのハンバーガー……くー美味しそうだな~!
『牛肉100%ハンバーガー。フライドポテト付き』一個
【お支払い】
パン×1
肉類 (牛)×1
トマト×1
レタス×1
ジャガイモ×1
or
MP 500
そういえば、確かジャガイモに似た『ジャンガ』とトマトに似た『マトマ』があったけど……別でいけるのか?
そう思い、試しにジャンガとマトマと黒パンを入れてみると……
【お支払い】
パン×0
肉類 (牛)×1
トマト×0
レタス×1
ジャガイモ×0
or
MP 380
おっMP減ったぞ!へー個別にすれば消費するMPも少なるなるのか……これは基本的に材料を買わなければいけないな……
取り敢えず俺は、残りを【MC】から支払う。すると、テーブルから魔法陣が展開し、紙袋が現れる。
「おー!!まんまお店っぽいな!どれどれ……」
紙袋を開くと、揚げたてのポテトと香ばしい牛肉の匂いが鼻に来る……うわーうまそう!!
「ではでは……いただきまーす!」
――ガブッ!
「っ!?」
んっ!!―――うっまぁぁ!!何これ!旨!!久しぶりに食べるハンバーガーだけど、旨ッ!!肉の味と新鮮な野菜が口の中で噛みしめば噛みしめるほど旨っ~……ポテトも焼き立てだからサクサクして旨~!
それにしても……
「懐かしいなぁ……」
元の世界でも他のバーガー店で食べていたな……
でも、これはその何倍も美味しい。
「ふぅ~……美味しかった……こりゃいいな『等価交換』……あ、そうだ。時間もあるし、ガーシュ様にお供えするか……」
ガーシュ様、甘い物好きだから、絶対興奮するだろうな……
「あー、ガーシュ様。どうぞお納めください。今回は『イチゴのショートケーキ』と『チョコレートケーキ』を用意していますので、どうか俺に加護をお願いします」
――『うむ!感心なのだ!かなり甘いと聞いているから楽しみなのだ!』
と、今ガーシュ様の声が響いたと同時に、ケーキがふわりと浮き上がり、光に包まれて消えていった。
……相変わらず反応が早い。どれだけ甘い物好きなんだ、あの神様。
「……さて、そろそろ銀瓏が帰ってくるから、迎える準備でもしておくか……」
銀瓏のやつ、調子乗って狩りすぎないようにしろよ……
◆
「あ、ああ……」
「おいこれ……」
「すげぇ光景だ……」
夕暮れ頃、やっと帰ってきた銀瓏を迎えたが―――
宿の前で、門番たちが揃って絶句していた。俺も同じ顔をしている。
なぜなら――
『』バァァァァンッ!!
銀瓏の後ろに、山のような魔物の死体が積み上がっていたからだ。
『すまん、楽しみ過ぎて狩りすぎた』
「お、お、おま、お前、何やってんだお前ぇ!!」
狩りすぎたじゃねぇんだよ!!量がおかしい!!前のキノコ狩りの比じゃないぞ!!
『だ、だがな……全部Bランク以上の魔物しか……』
「だとしても多いんでだよ!?つーかなんでBランク以上の魔物がゴロゴロいんだよ!?ここ低レベルの国だろ!?」
『それはまぁ……少し遠出をだな……』
「遠出」
遠出ってレベルじゃねぇ!
なんでこんな大量の魔物を狩って来たんだよ……多分絶対、依頼内容のもんまで狩ってない?
取り敢えずガーネットさんに報告するか……
「う、うわぁ……随分とまた狩ってきたね……」
うん、流石の量にガーネットさんは引いていた。
ガーネットさんが鑑定でみた情報をまとめると……
・『スピアーラビット』Bランク×5匹
・『ブラック・クロコダイル』Aランク×1匹
・『Q・ビー』Aランク×1匹
・『グリーンサーペント』Bランク×2匹
・『沼ウツボ』Aランク×1匹
・『クイック・ホーク』Bランク×1匹
・『ストロベリースネーク』Bランク×1匹
だった……つーかこれ全部解体しなきゃダメだろ?
「はーっ……解体は少なめにして、次の街に全部解体するか……」
全部解体とか無理だろ……そう思っていると――
「その心配は必要ないよ幸!」
「え?」
ガーネットさんが胸を張った。
なんだ?何か策があるのか?
「ふふふ……( *´艸`)実は私、レベルが上がったおかげでなんと!『Bランク』以下の魔物を解体できるようになったの!」
『なんと!』
「おお!それは凄い……」
「Aランクはまだ先だけど、取り敢えず、Bランクの魔物全部『解体魔法』で解体するわ」
「ありがとうございますガーネットさん!じゃあ早速お願いします!」
おぉ救世主だ!
ということで、Aランク魔物は一旦、『マジックボックス』へしまい、Bランク魔物は解体するのだった。
それを見ていた門番二人は……
「なんか……凄いなあのパーティ……」
「だな……俺、『ブラック・クロコダイル』なんて初めて見た……」
と、ぽかんと口を開けて解体を見つめていた……
まぁ気持ちは分かる。うん。
なんなら俺も若干引いてる。
そうして、解体し終わった後、銀瓏が腹が減ったといってきた。
確かに銀瓏はお昼食べてないからな……早めの夕食にするか。俺はそんなに食べないから……今日は晩酌しよう!
今日は解体したての肉で焼き鳥にするか……丁度、『等価交換』で酒類もあったし……たまには晩酌もいいだろう。
まずは肉を一口サイズに切って、串に刺す。
『ん?それは、前に食べた串焼きか……今日はそれか』
「ああ、しかも今日はそれに合う酒を飲もうと思っているんだ」
「酒!いいねいいね!幸の世界の酒は美味しかったし、期待大だよ!」
ガーネットさんの目が輝く。
『俺は酒はあんまり好かんが……』
「そう言うと思って、アルコール度数が少ない酒も頼むから、安心しろよ」
『むぅ……』
刺した肉を焼いて、半分は塩、もう半分はタレをかけて……いい感じに焼いたら完成!
ジャーン!『魔物の色々焼き (塩・タレ)』!
それと……『ハイボール缶』と、『カシスとオレンジのサワー』、『メロンサワー』……と。
よし、こんなもんか!
「ほら、出来たぞ!」
「わー来た来た!」
『おお!やっとか!』
「よし、じゃあ揃ったことだし……」
『いただきまーす!』
――カリッ!
「んー!旨い!兎肉うめぇ~!」
「この鳥、塩でもいけるわね!」
『うむ、旨い!グリーンサーペントの肉も絶品だ!』
と、二人とも好評のようだ。
やっぱり串焼きっていいな。簡単で美味しいし。
さて、そんな料理に合うのはやっぱり―――
「はいドンっ!『ハイボール』!……どうぞガーネットさん。これ飲んでください」
ハイボールを差し出す。
「来た来た……ではさっそく―――」
――カチャ、プシュー!
「っ!いい香り~爽やかなレモンの香りがするわ……どれどれ味は……っ!」
ガーネットさんが『ハイボール』を一口飲んだ瞬間、ゴクゴクと飲み始め、飲み終わった瞬間満足そうな顔を浮かべる。
「―――ぷはぁー!!」
「どうです?」
「なにこれ!?旨すぎでしょ!!コクもいいし、口の中がさっぱりするわ!」
ハイボールを飲み干したガーネットさんは目を輝かせながら叫ぶ。
『そんなにか……』
「はい、銀瓏。お前は『カシスとオレンジのサワー』な。度数3%だから酒が苦手な人でも飲めるぞ」
『ほう……どれどれ?』ペロ
コップに注いだサワーを銀瓏に渡し、そのコップを見つめている銀瓏はペロっと酒を試しに舐めると、表情が変わる。
『んおっ!?な、なんだこれは!んっんっ……シュワシュワした舌ざわりにフルーツの酸味と甘さが舌の中で感じるぞ!これなら俺でも飲めるな!』
「炭酸だからな。気に入って良かった……俺は『メロンサワー』を飲むとしようかな。ンッンッ……っはー甘くて美味しい~」
酒を飲みながら、串焼きを食べるなんて絶品だな~!
そして、数分の内に串焼きが完食し、ガーネットさんがいつも以上に出来上がっていた。
「うへへへへへ……」
『こいつ、『ハイボール』二本でダウンしたぞ』
「それだけ美味しかったんだろうな」
あの後片付けして、酔いつぶれたガーネットさんを宿のベットまで運んで、俺は自分のベットまで行って寝始める……あー今日は良い収穫もできたし、明日はそろそろ次の街へ向かう準備だ。
でも――
こうして、のんびり過ごす日も悪くない。
そんなことを思いながら、俺は静かに眠りにつくのだった。




