第十六術 等価交換と書いて『カタログ』andステーキ三昧
聞いてるだけでステーキ食べたくなるな……ならない?
新しく手に入れたスキル――『等価交換』。
早速使ってみたものの……
「いや、これどう見てもネットショッピングだろ……」
よくア●ゾンやらヤ●ーショッピングとかに見られる項目だよな?『おすすめ商品』なんて項目まであるぞ……
というか――――
「『アルケミスト』ってなんだよ!」
画面上部にデカデカと表示されたショッピングサイト名。
絶対、『錬金術』だからって安直に付けただろ。ネーミングセンスどうなってんだよ。
「ねぇねぇ、なんだか見たことない物ばっかだけど、何かしらそれ!」
『そうだぞ!何やら肉があったのを見たぞ!!』
二人が目をキラキラさせながら、俺の肩越しに画面を覗き込んでくる。子供か。
……いや、銀瓏はいつも子供みたいなものか。しょうがないな、俺もこの『等価交換』っていうスキル試したいし、やってみるか……
「分かった分かった。俺も試したいし、何か買ってみるよ」
そう言って、画面を指でスライドしていく。
「えっと……最初は――」
スライドパッドの要領で、『等価交換』の内容を色々と見て回る……
調味料。
国産肉。
魚介類。
野菜。
お菓子。
服。
化粧品。
生活雑貨……
「なんでもあるな。マジでネットショッピングだ……」
しかも、どれも俺が元いた世界で見たことのある商品ばかり。
『おっ!!』
突然、銀瓏が声を上げた。
『今のだ! 赤い果物が乗った菓子! あれが食べたいぞ!!』
「ん?」
銀瓏が指さした先を見る。
「あー、『いちごのショートケーキ』か」
なるほど……
確かに初回のお祝いには丁度いいかもな。
「よし、じゃあこれにするか」
そう言い、俺は銀瓏が目に留まった『いちごのショートケーキ』を選択し、会計へ進むと、こう言うのが出てきた。
『イチゴのショートケーキ』×3個
【お支払い】
スポンジケーキ×3
イチゴ×3
乳類×3
or
MP 900
「……あれ?」
これ現金じゃなくて、物と直接交換すんの?あーだから等価交換か……しかもこれ、MPって事はあれか、『魔力』で支払うのかよ……『魔力転換』っていうのもあるし、多分その能力が進化してこうなったんだろう。
「まぁ、材料はないし……今回は魔力で払うか」
幸い、俺の魔力は1900ある。
900くらいなら何とかなるだろ。
画面に表示された。
[MPを投入してください。]
という、場面が出たのでそれに触れると……
「うっ……」
身体から何かが抜けていくような感覚がした。
少し気怠い……でも、動けないほどじゃない。
すると画面には――
[決済完了しました。すぐに配達します]
と表示される。
「配達?」
その瞬間、突然魔法陣が現れ、箱に詰めた何かが魔法陣から出てくる。
「うわっ!?」
「きゃっ!」
『おお!?』
光が収まると、そこには白い箱が置かれていた。
「こんな感じで出てくんのかよ……」
「おお……これが『等価交換』の力……中にさっきの菓子が入っているのね!」
『どれ!早く開けんか!』
「はいはい……お、すげぇマジで『ショートケーキ』が出てきた」
そうして、箱を開ける。
中には――
"真っ白な生クリーム"
"真っ赤ないちご"
"ふわふわのスポンジ"
完璧な一切れサイズの『イチゴのショートケーキ』が三つ並んでいた。
「うおぉ……」
思わず声が漏れる。
店頭で売っているやつより綺麗なんじゃないか?
「じゃあ、俺の新スキル誕生を祝って―――いただきまーす」
『いただきまーす!』
――パクッ
一口食べるその瞬間―――クリームが舌で溶ける感覚がした。
『っ!?』
うっっっっまっ……!?なんだこれ旨ッ!?一口食べた瞬間、濃厚な生クリームとふわふわした食感のスポンジ生地が合わさって旨ッ!?店で出せるレベルのどころじゃないぞこれ!!
『おおっ!?なんだこの味は!このイチゴの酸味とこの濃厚な乳に、ふんわりとした生地が味を引き立たせる!こんな美味しい菓子があったとは……旨い!!』
銀瓏が尻尾をぶんぶん振る。
「あっまぁ~♡こんなに美味しい菓子なんて初めて食べたよ~いくらでもいけるわ!!」
ガーネットさんも頬を押さえながら悶えている。
ショートケーキは何回か食べたことはあったけど……こんなに美味しいケーキは食べたことないぞ!恐るべし『アルケミスト』……
というかこれ、俺が知ってるネット通販じゃない。未来の通販だ。
でもよく見ると、俺の魔力以上のものが多少あるな……神様の加護があるとは言え、こりゃレベルを上げないとな……ん?
ふと、『等価交換』をじっくり見てみると、画面の右上に、見慣れない項目を見つける。そこにはこう書かれていた―――
【MC】 魔力をチャージしてストック可能。支払い時、残高から自動決済されます。
へー、要はプリベイトカードのチャージが……これは便利だな。今日はもう帰るし、試しに魔力を500入れてみるか。
そう思って操作し、場面が出たのでそれに触れた後、確認すると――
【MC】 現在残高MP 500
と書かれていた。よしよし、ちゃんとチャージ出来たな。
『なぁ!もっと食わせてくれよ!他にもあるだろ!?』
「あー、ごめんけどまた今度な?」
『むぅ……』
銀瓏が露骨に不満そうな顔をする。
「如何やらこれ、Gじゃなくて材料か俺の魔力で交換するから、作るに作れない状況だから今は無理な?」
『むっ……そうか、まぁいい。まだ夕食が残っているから、そこで食べるとしよう』
と、しっかり要求してくる。
「夕食って……どれだけ飯のことしか考えてねぇのかよ」
『主の料理はどれも俺には見たことが無い物だらけだからな。それ以上の楽しみはどこにある?』
「はいはい……それじゃ目的の魔物も討伐したし、帰るか」
「ええ、そうしましょ♪」
そうして、俺たちは大量にいた『アダマンタイトスライム』の討伐を終え、銀瓏の背中で風を感じながら、『ロックマウンテン』のギルドへ向かっていった。
◆
「ただいま戻りました~」
ギルドの扉を開ける。
「おお、意外と早かったな……して、結果は?」
「そりゃもう……こんだけ取れました!」
と、ガーネットさんは机いっぱいにアダマンタイトを出した。
「おおっ!!」
ガンロックさんの目が見開かれた。
「こ、これは……この純度の高いアダマンタイト……こんなものが取れるのはアダマンタイトスライムしかおらん!しかもこれを大量に……」
『ざっと30匹以上いたな……まぁ、俺の敵ではなかったがな』
「なんと……大量のAランクを半日で終わらせるとは……はっはっ!!本当に大したパーティーだわい!!」
痛い痛い……感心しながらバシバシ叩かないで……ドワーフってやっぱ力強いな……
にしても、改めて見ると、本当に多く取れたな……ん?なんだこの紫の結晶は?
「あの……この結晶は?」
「ん?おお、珍しいな。」
ガンロックさんが紫の結晶を見る。
「そりゃ『魔結晶』と言ってな、魔力を凝縮した鉱石だ。Aランクの魔物に見かけるものだ。Sランクだと必ずあるし、質も違う。それを魔道具や杖に作る素材となるんだ」
「そうなんですね」
魔力の鉱石か……ん?魔力?って事は―――
「あの、この『魔結晶』もらってもいいですか?」
「ん?ああ、大丈夫だぞ。何なら全部持って行っていいぞ。ただ、そのアダマンタイトは買い取らせてくれ。何処も加工の鉱物が不足していたんだ」
「分かりました」
「うむ、ありがとうな。買い取り金額は二・三日後ぐらいかかるからそれまでのんびり待っててくれ」
「はい。では、俺たちは帰りますね」
「ああ、またここに来いよ」
そういい、俺たちはギルドを後にし、宿屋の庭で、とあることを試す。
「何してんの幸?」
「いや、この『魔結晶』……魔力で作られているから、【MC】に使えるんじゃないかって……」
俺は試しに【MC】の場面に魔石を近づけると、吸い込むように場面の中へ入った。
おお、もしかして成功か!!
【MC】 現在残高MP 1300
うんうん、しっかり反映しているな……これなら、自分の魔力を削って入れる手間も少なくなるな!
あ、そういえば『魔結晶』ってガーネットさんにも使うかもしれないから一応聞いてみよう。
「あの、ガーネットさん。『魔結晶』ってガーネットさんは使うんですか?」
「んー?私は研究に少し使うから少な目で貰えればいいよ」
「分かりました」
如何やら、ガーネットさんは少しぐらいで大丈夫らしい……ならびに残りは全部【MC】に詰め込むぞ!!
その後、一個、二個、三個……
ガーネットさんの研究用を残して、全部ぶち込んだ結果――
【MC】 現在残高MP 25000
二、二万超えた……これだけあれば大抵のものは買えるな……それに、見たことない物も買えば、錬金で作れるし、いいな、『等価交換』。
『おい』
銀瓏が口を開く。
『そんなことより腹が減ったぞ。散々狩ったから肉多めがいいぞ』
「私も~!」
「銀瓏……お前さっき物足りんとか言ってなかったか?」
とはいえ……ここまでこれたのはガーネットさんと銀瓏のお陰だし……よし!今日は奮発するか!!
『リトルグリフォン』の肉と他の余りの肉も全部使ってステーキにするか!!
―――ジュワァァ!!
まずは『コカトリスステーキ』と『リトルグリフォンステーキ』!『レッド・ブルステーキ』に『オークステーキ』などなど……取り敢えず色んな肉を片っ端から焼いていったぞ。
そしてさらに……
「じゃーん!!今回は色んなステーキソースをご用意したぜ☆」
『おー!!』
やっぱステーキと言えば、ステーキソースは必須でしょ!!
まずは赤ワインと黒コショウのステーキソースだ。
「んー!!赤ワインのコクと胡椒のピリッとした辛みがグリフォンの肉にあう~!」
次は野菜と果実の旨味を濃縮したステーキソース!
『んむ!うまい!!ソースの甘さがこのコカトリスの肉汁が合わさってさらに進む!!』
次は焙煎にんにくの味がするステーキソース!
「旨ッ!!ニンニクの味がレッド・ブルの肉に合いすぎ!!」
今度はレモンステーキソースだ。
『んむ!このさっぱりとしたレモンの風味と味がオークの油の味を中和して、バクバクと行けるぞ!!』
よしよし、どれも好評だな。早速俺も……うっまぁ!!
と、このように食べ進み、あっという間に完食したのだった……
『んー……もう食べれんぞ……』
「美味しかったー……」
「そりゃどうも」
食後のお茶を飲みながら、ガーネットさんがしみじみ呟く。
「にしても、凄いな幸の世界のソース……種類が違うだけで、肉の味がこうも変るなんて……」
「そこは会社の企業努力ってことだよガーネットさん」
『旨いめしの後は運動しないとな……明日、俺は狩りに行くぞ』
「じゃあ私は明日、魔法の研究するね。どうせ、二・三日に滞在しなきゃいけないし」
俺はそうだな……やることが見つからないし、取り敢えず『トロール』の肉を回収した後で考えよう……
それにしても『等価交換』、まだまだ知らない物ばかりだ……明日が楽しみだな。
そう思いながら、俺たちは宿のベッドへ潜り込み、深い眠りにつくのだった。
いちごのショートケーキ
ふわふわとした食感で甘くて濃厚な菓子。
1時間魔力を30%アップさせる




