第百十術 タンドリーチキン
商談を終えた俺は、さっそく今日の晩飯を作ることにした。
さて、今夜の料理は何にするか……
そうだな……今日はスパイスの話ばっかしていたし……おっ、これ良いな。
俺が『全知魔書』で探していたところ、目に留まったのは──『タンドリーチキン』という料理だった。
ヨーグルトとカレー粉を使って作るのもいいが、こういう市販の調味料を使って手軽に作るのも悪くない。
早速作っていくか―――
まず、コカトリスの肉を一口大に切る。
肉を袋に入れ、市販の『タンドリーチキン』用のソースを入れて揉み込ませる。
次に、『タンドリーチキン』用の粉を加えて、粉っぽさがなくなるまで、さらに揉み込む。
油を入れ、熱したフライパンに先ほど揉み込んだ鶏肉を皮を下にして焼く。
ひっくり返し、中火で蓋をして火が通るまで焼いたら……!
――完成!『コカトリスのタンドリーチキン』!!
あとは、千切りキャベツにごまドレをかけたものを添えて……と。
「皆~!ご飯出来たよ!」
『おおっ!やっとか!』
「ん~いい匂い……」
「これは──もしかして、『タンドリーチキン』!?」
「お、分かりますか?」
日本育ちの葵さんは、この料理を知っているらしい。久しぶりに食べられるのが嬉しいのか、少々興奮気味だった。
『なんだ?そのタンドリーチキンとやらは?』
「簡単に言うと、カレー粉とかのスパイスを肉に揉み込んで、味を染み込ませてから焼いた料理だよ。ピリ辛で美味いぞ~!」
そう説明しながら料理をテーブルに並べ、さっそくみんなで食べることにした。
「あむ……っ!なんて香ばしい味わいだ!葵さんのカレーとはまた違った美味しさですよ!」
『うむ!前に食べた『カレー』とは似ても似つかん味わいだぞ!コカトリスの肉がより際立つ!!』
『スパイスが効いていて、肉のうまみがさらに深まっていますね』
『ちょっとピリッとしているけど、たくさん食べれるよ~!!』
「ん~!久しぶりのタンドリーチキン、美味しい~!!」
どうやら、みんなにも大好評のようだ。
「俺も食うか……んー!カレーの風味に、鶏肉の味が合わさってうめぇ~!」
こういうスパイスの効いた料理もたまにはいいな!
俺たちはタンドリーチキンを頬張り、合間に添えられたキャベツを食べながら、あっという間に完食した。
「ご馳走様」
「……ふぅ、美味しかったです。話に聞いていた通り、絶賛されるのも納得の料理でした」
「ははは、ありがとうございます」
「今後とも関係を継続して頂きたいものです」
リンリンはニコッと微笑む。
「それにしても……これほどの上物を錬金できるとは……。ほかの品物も、つい見てみたくなりますね。そして、ぜひ買い取りたいものです」
「は、はは……それはまた後日……」
このまま行くと、何千万以上のGが動くかもしれないからな~……
商人としてのリンリンの目は、どうやら本物らしい。
◆
さて、明日に備えてそろそろ寝ようと思ったが……その前に、神様たちへお供え物をしないとな。
えーっと、まずはガーシュは……
今回は『和菓子』でいいかな?葵さんのところに来たときも用意したし……そうだな~……『どら焼き』『水羊羹』『饅頭』『豆大福』……っと、これぐらいかな?
次にソトールとビネガーンだな。
酒は……おっ、『ウイスキー』か……折角だし『角』でいいかな?あとはつまみに『ミックスナッツ』と『スモークチーズ』にしようか。
次はユーセイだな。
あの人は生活用品や料理に興味があるからな……『食器用洗剤』と『洗濯用洗剤』、それから『惣菜の素』を何種類か入れておこう。
よし、最後はミイソだな。
……と言っても、俺、女性向けの品物ってあんまり詳しくないんだよな~……
『あら?それなら、ちょうどいいわ!私、最近髪がパサついて困っているのよね~……。ねえねえ、潤いを保てるものってないかしら?』
……ナチュナルに会話に入って来たな、おい。
それにしても、髪のパサつきか……――おっ、これはいいかな?
保湿成分がたっぷり使われたシャンプーだって。これなら、ミイソも喜んでくれるんじゃないかな?
あとは、毛穴汚れに対応した洗顔料と、肌の潤いを保つ化粧品も用意しておこう。
「えー……お待たせしました。どうぞ、お納めください」
用意した品物を供えて祈ると、それらは光となって天へと昇っていった。
『『ひゃっほぉーい!!』』
……奥底から、神々のはしゃぐ声が聞こえてくる。
あんたら何歳だよ……
「やれやれ……これで寝れるな。ふぁ~……俺もお休み~」
そう言って、俺はベッドに横になった。
そして、そのまま気持ちよく、すやすやと深い眠りについたのだった。
◆NOside
その頃、天界では……幸が送った品物を前に、神様たちが大いに盛り上がっていた。
「んぐっ……っはー!!うめぇなこの酒は!!やっぱり異世界の酒はいい!」
「飲みすぎだぞ、ビネガーン。もう少し節度を保て」
「ん~甘味、甘味……!」
「貴様はもう少し食べるペースを考えろ……!」
ソトールは、送られてきた品物を次々と消費していく二人を叱っていた。
そんな中、ユーセイはミイソの髪に目を留めた。
「ミイソさん、なんだか髪に艶が出ているっすね!」
「あら、そう? 凄いでしょ、これ! 髪に潤いを与えてくれるシャンプーなのよ!」
どうやら、さっそく効果を実感しているらしい。
「それにしても、異世界の品物って、凄いっすね!」
「そうなのだ!どれもこれも、美味な菓子ばかりなのだ!」
「酒も、なにやら色んな種類があるらしいからな!全種類飲み干したいな!」
「本当!異世界の化粧品はこっちのものより性能がずっといいんだから!いや~、目を付けておいて正解だったわ~!」
「……」
四人がそれぞれ異世界の品物を満喫する中、ソトールだけは眉間にしわを寄せていた。
「……すまない、幸。あれはもう、どうすることもできん」
そう呟きながら、ソトールは送られてきたウイスキーをロックで嗜むのだった……




