第百十一術 サウスタウン
翌日。
目を覚ました俺は、いつものように朝ごはんを作ることにした。
今日は『鮭の塩焼き』『味噌汁』『卵焼き』と、なんとも和風な朝食にした。
「あむ……ん~美味しい!この魚、皮までパリパリだね!」
「鮭の皮って美味しいですよね~」
「ああ、分かります~」
『お魚も卵も、美味しいよ~!』
「なんとも上品な料理ですね……んん~美味しい!」
みんな美味しそうに朝食を食べ進め、あっという間に完食した。
その後、俺たちは次の街へ出発する準備を整えた。
「では、皆さんまたの機会で会いましょう」
「ええ、リンリンさんも元気で」
「はい!……いつでも来ていいですからね?歓迎しますよ?」
「は、ははは……」
リンリンがニコッと微笑みながら言う。
……十中八九、俺が錬金した商品の件なんだろうな……流石、商人。抜け目ない。
「では行きましょうか」
「ええ、そうね」
そうして、俺たちは次の街『サウスタウン』へ向かうことにしたのだった。
◆
次なる目的地であるサウスタウンについて、俺は葵さんに尋ねた。
「サウスタウンってどんな所なんですか?」
「そうね……あそこは鉱山業が盛んだから、武器や防具が主な産業ね」
「そうなんですね」
『ふんっ……武器や防具なら、主が使っているもので十分だと思うがな』
「あはは……」
確かに。
こっちにはミスリルやアダマンタイトもあるし、防具だって結構いい素材で作られているからな……
「あっ、あと、サウスタウンには四天王の『パンジャ』と言う人物がいまして、『狂戦士族』なんですよ」
「ば……『狂戦士族』?また聞き慣れない種族ですね……」
「名前の通り、狂ったように敵との戦闘を好む種族よ。種族としての外見はさまざまで、いろんな種族の特徴が混在しているの。生まれつき『狂気』というスキルを持っている者が、『狂戦士族』と呼ばれる感じね」
「へー……ところで『狂気』ってどんなスキルなんですか?」
「そうね……発動すると魔力を消費し続ける代わりに、ステータスが上昇するスキルよ。かなり強力な強化がかかるけど、維持するための魔力消費も大きいし、知能が低下して動きが単純になるというデメリットもあるわ」
「そうなんですね」
なんか、ゲームに出てきそうな設定だな……
『むっ……見えてきたぞ』
「え?……おお!ここが―――」
銀瓏たちに乗って大地を駆け続けていると、山々が連なる鉱山地帯の向こうに街が見えてきた。
他の街と同じく、活気に満ちた場所のようだ。
「ここが『サウスタウン』ですか……!」
「ええ、さぁ行きましょう。この先に『パンジャ』の屋敷があるわ」
葵さんに案内され、俺たちは街へと向かった。
◆
「……」
葵さんの案内で到着した俺たちは、パンジャの屋敷を目の前にして立ち止まった。
――そこには、いかにも和の趣を感じさせる豪邸が建っていた。
(わ……和風!?)
「あの……葵さん。あれ、なんですか?他の街の建物と比べても、明らかに浮いているんですけど……」
「ああ、それはね……ここだけの話なんだけど―――実は、その『パンジャ』っていう人……『転生者』なのよ……!」
「て、『転生者』!?」
『『?』』
俺は思わず驚く。
「転生者……ってあれですか?俺たちみたいに日本から直接異世界へ来たんじゃなくて、一度死んでから、こっちの世界に生まれ変わった……っていう」
「ええ、その解釈で間違いないわ」
「マジか……!」
まさか、ここに来て転生者に会えるなんてな……
というか、どういう経緯で四天王になったんだろう。
「じゃあ、入りましょうか」
「あ、はい」
そうして俺たちは、屋敷の中へと足を踏み入れた。
◆
屋敷の中は完全な和室で、どこか懐かしさを感じる空間だった。
……やっぱり、日本育ちだからかな?
「うわ……完全に『和』だな。落ち着く……」
「そうだね……どこか自然を感じさせる雰囲気だね」
そんなことを話していると――
「よく来た。旅の者たちよ」
「ん?」
声のした方を見ると、そこには侍を思わせる人物が立っていた。
腰には刀を差し、顔が隠れるほど深く編み笠を被っている。
「ようこそ、私の屋敷へ。葵殿も久しぶりです」
「ええ、久しぶりね。『パンジャ』」
「この方が……」
何というか……洋風の世界で、ここまで和風な人物が現れるとインパクトが凄いな……
まぁ、かっこいいけどさ。
「自己紹介をしておこう。私は、このラグナロクの四天王の一人『パンジャ』と申す」
「ああ、ご丁寧にどうも……俺は『酒森 幸』って言います」
「私は『フラム・ガーネット』です」
「そして、俺の『契約獣』の『銀瓏』、『麒麟』、『大蛇』です」
「ふむ……」
俺たちが自己紹介を終えると、パンジャは銀瓏たちへと視線を向けた。
「流石、『二つ名』と『聖獣』……見ているだけで、魔力の凄まじさが分かる」
『ふん、当然だろう』
銀瓏が得意げに鼻を鳴らす。
すると、パンジャは銀瓏へ向き直り、深々と頭を下げた。
「そこで、銀瓏殿にお願いがあるのだが……」
『ん?』
「どうか、私に一手、御指南いただきたい」
『ほう……!』
「えっ!?」
つまり……銀瓏と戦いたいって!?
ええ……大丈夫か?
「ちょっ……大丈夫なんですか?銀瓏って、結構強いと思うんですけど……!」
「そうですね……でも、彼はああ見えて四天王の中では実力は一位ですよ」
「うっそぉ!?」
まさかのパンジャ、四天王最強だった。
イールビも相当な実力者だったけど……パンジャはそれ以上なのか?
……いや、でも不安だな。
――別の意味で。
『ほう……!パンジャとやら、お前はそこまでの実力なのか!』
「ええ、単独でSランクを討伐できるぐらいには」
「マジで!?」
Sランクを単独で……?それって、銀瓏と同じくらいの実力ってことなのか!?
『なんと!実力は申し分ないな!最近は狩りもしていないから、いい準備運動になりそうだ!』
「私も、『二つ名』の実力、ここで試したいものです」
そう言いながら、銀瓏は爪を光らせ、パンジャは腰の刀を抜いて、その刀身を眺めた。
『二人は戦う気満々ですが?』
『何々?ギンロウおじちゃん、戦うの~?』
「ええ……」
こうして、到着早々、まさかの四天王との御前試合のようなことをする羽目になったのだった。
……大丈夫かな、これ。




