第百六術 葵さんの夏野菜カレー
今日は、葵さんが料理を作ってくれるそうなので、俺たちはテーブルに座って、料理が出来上がるのを待っていた。
「葵さんの料理か……一体どんなものが来るのかな」
「楽しみだね~」
『フン、俺の口に合えばいいがな』
すると、扉が開き、料理が運ばれてくる。
「皆さん、お待たせしました。今、運びますね」
「おっ来た」
一体どんな料理が来るんだろうか……
そんな期待を胸に抱きながら、俺は運ばれてきた料理を見る。
――っ!こ、これは!!
「これ……もしかして――『カレー』!?」
「……ふふっ」
この匂い、色合い……間違いない!!マジで『カレー』だ!!
嘘だろ!俺は『等価交換』でルーを錬金できるけど……これに至っては、ルーはまだこの世界にない!一体どうやって――っ!も、もしかして……
「まさか……一から作ったんですか!?『カレー粉』を!?」
「ふっふっふっ……ええ!その通りよ!」
葵さんは、自信満々に胸を張る。
「数百年前、私はどうしても『カレー』が食べたいという欲求が高まってね。持てる知識をフル活用して、カレーに必要なスパイスを育て上げることができたのよ!!今ではメイドたちにも作り方を教えたから、好きな時に『カレー』を作ることができるの!凄いでしょ!」
す、すげぇな葵さん。
一からカレー粉を作るのに、相当な苦労をしたんだろうな……
「へー……カレー粉ってすごい大変なんだね……幸はパパっと作れるから、見劣りしちゃうけど……」
「まぁ、あの能力は色々とチートだからな」
「コホン……そして、このカレー粉は、改良に改良を重ねて、今では日本人の舌に合うような辛さと旨さを実現できたの!伊達に元の世界で色んなカレーを食べ歩いてはいないわ!」
「へ、へー……」
カレーに対する情熱が凄いな……
まぁ、異世界で食べ慣れた料理を再現できるのは、確かに嬉しいよな。
「じゃあ、早速食べみますね」
「ええ、どうぞ。私の『夏野菜カレー』……ご堪能下さい」
そうして、葵さんが作ったカレーを一口食べる……っ!!
『『うんまっ!!』』
「ふふっ……」
なんだこのカレー、うめぇ~!
かぼちゃやジャガイモ……他の甘みのある物がカレーの辛さを丁度いい形にしてくれて、うめぇ~!!
『うむ!主のカレーより、少し辛いが、これはこれでうまいぞ!!』
『本当……野菜の旨さを溶けだして、実に美味……!』
「んふ~!旨すぎる~!」
『あーしにはまだ辛いけど。美味しいよ~!!』
「あー大蛇、辛いなら、牛乳を飲んでみてくれ。辛さが抑えられる」
そう言い、俺は大蛇に牛乳を渡す。
『んー……あ、辛さが無くなった。ありがとう、あるじ~!』
「ふふ……にしても、このカレーは美味しいです!まさか、異世界で本場のカレーが食べれるなんて驚きです」
「喜んでもらえたら、私はうれしいです。それに、この『カレー粉』、実は『ラグナロク』では売られているんですよ!」
「ええ!?カレー粉を!?」
「そうです。みんな、カレーの虜になってて、売れ行きもいいんですよ」
これ、他の国に売ったら凄くバカ売れしそうだな~
「その『カレー粉』、他の国に売りに行ったら、凄い反響が出そうですね~」
「ふふ、ありがとうございます。そう思って近々、これを他の国に売る予定です」
「へー!」
俺はいつでも錬金で作れるが……他のみんなからしたら、食の楽しみを増やしてくれる魔法のようなものだもんな。
そんなことを思いながらも、俺はカレーを全て平らげるのだった。
「ん~……美味しかった~!」
「本当、こんなご馳走になるなんてね」
『うむ、なかなかの味だったぞ』
『やはり、カレーとはいいものです』
『あるじの料理も良かったけど、これも美味しかったよ~!』
「ふふ、そう言ってもらえると、作った甲斐がありました」
葵さんは、満腹になった俺たちを見て、嬉しそうに笑った。
◆
ご飯で腹を満たした俺は、お風呂へ入ることにした。
浴槽には銀瓏と大蛇が湯船につかっている。
『あるじ~おふろ気持ちいいよ~……』
「のぼせないように気をつけろよ~……ああ~やっぱり風呂はいいな~」
俺たちが風呂を堪能をしていると、誰かが入って来た。
「となり、いいかい?」
「んえ?……バルムンクさん!」
そこには、バルムンクさんがいた。
「どうかね?私の屋敷の風呂は?」
「ええ、とても気持ちいいです!おかげでさっぱりします!」
「ああ、葵が頑張って作ってくれたものだからね。葵が精一杯努力したかいがあったわけだ」
「へー……葵さんがこれを……」
結構広々とした空間なんだけど……
葵さん、めっちゃ苦労したんだろうな……
「それと、私も葵たちのように『しゃんぷー』とやらを使いたいが……構わないか?」
「ああ、いいですよ。そうだな~バルムンクさんに良さそうなのは……」
お、こういうのはどうだ?
『男の匂いを完全除去!』と書かれたボディーソープだ。何やら加齢臭も除去できるらしい……
早速錬金して、渡してみる。
「これ使ってみてください」
「これは……黒い容器か?」
「それは身体を洗う用の石鹸です。これ使えば男の匂いも綺麗に消せるとか……」
「なんと……これはいいかもな。最近、息子に『なんか、枯れた草の臭いがします……』って言われてしまってな……」
「ご、ご愁傷様……」
バルムンクさんは、少し涙目になっているような顔をしていた。
そりゃ、実の息子にそんなこと言われたら、心がえぐられるよな……
そうして、バルムンクさんがボディーソープを使ってみる。
「おお……液が黒いな……」
「確か中に炭が入っているので、黒いんですよね」
「炭?あの木炭とかの、あれか?」
「そうです、そうです」
「なんと……炭を石鹸に使うは……何とも不思議なものだ」
そう言いながら、バルムンクさんはゴシゴシと泡立ったタオルで身体を洗う。
「ふむ。ほのかに清らかな香りがするな……洗いながら、香りを楽しめるとは……凄い品物だ」
「日本の技術は凄いですからね~」
そうして俺たちは、バルムンクさんと一緒に石鹸や風呂を堪能したのだった。
◆
「――っはぁ~!風呂上りの『コーヒー牛乳』は格別だ!」
「確かに、風呂上りで飲むと、こうも違うとは……素晴らしい発見だな」
『うむ、それもいいが、俺は断然『フルーツ牛乳』だ!』
『あーしも、どれも好き~!』
風呂に上がった俺たちはいつもの風呂上りの牛乳を飲む。今日はコーヒー牛乳だ。
どうやらバルムンクさんも、風呂上がりのコーヒー牛乳を気に入ったらしい。
こうして、俺たちは風呂を堪能した後、ベットに戻って、ぐっすりと眠りにつくのだった。




