第百五術 バルムンク、帰宅
翌日、目覚めた俺たちは、軽めの朝食を取る。
今回は、『甘めの卵焼き』、『ウィンナー』、『塩おにぎり(海苔付き)』、『味噌汁』といった『THE・朝食』を食べていた。
朝はこういうのがいいんだよね。
「少しいいかい?」
「ん?」
すると、ご飯を食べている途中、肌が白く、淡いクリーム色の長髪をなびかせた、まるで貴族のような男性が席に着いた。
もしかして、この人が―――
「えっと……もしかして、『バルムンク』さん……ですか?」
「ああ、いかにも。妻と息子が世話になったね。私はこの国の王である、『バルムンク・ラグナロク』だ」
「は、はぁ……」
ここで、この国の王とご対面したことで、俺は少し緊張に走る。
すると、バルムンクさんは、フランクに話しかけてきた。
「そんなに緊張しなくてもいい。君達は妻にとって、友であり、同じ好みの人間だ。手荒な真似は絶対にしないさ」
「そ、そうですか」
「それにしても……この料理は君が?」
「あ、はい!そうです。いつも『契約獣』達やガーネットさんにご飯を作っていますので……」
「そうか。まぁ、この味で契約するというのは納得だがな」
「え」
俺は言葉が詰まると、バルムンクさんが続ける。
「この世界にない味に、食料……そして料理。こんなにも、旨いものを食べられるというのなら、知性のある者は皆、誰もがついて行くのさ」
「は、はぁ……」
「現に、葵がこの国に来てから、この国は更に文明が発達した。数々の野菜や果実。そして、その加工、料理……おかげで、街にも豊かさが出てきた」
「……」
「君達の世界の知識は凄い物だよ」
バルムンクさんは愛おしいような瞳で言う。
まるで吸い込まれそうな、輝く瞳。
思わず見とれてしまう……
「あ、いえ……そんな、俺はただ、自分ができることを……」
「ふふ……すまない。少々からかいすぎたかな?それにしても、この料理はとても美味しいな。葵といい勝負だ」
「あ、ああ、どうも……」
そう言いながら、俺は卵焼きを食べる。
「そうだ。昨日、私が帰宅した時、葵の姿が一段と美しくなったのだが……何か知らないか?」
「え、ああ……昨日、葵さんに渡した、『シャンプー』とかのやつですね」
「『しゃんぷー』?」
「頭を洗うための石鹸のようなものです。あれがあると、頭の痒みが無くなるんですよね~それに、体や顔を洗う用の石鹸もありますから、身体を清潔に保てるんですよ!」
「そうか、だから葵はあんなにも喜んでいたのだな」
「そうそう。葵さんと美容について色々と語り合ったからね~」
ガーネットさんは昨日、葵さんとお風呂に入りながら語り合ったことを思い出す。
「ははは。葵に、仲のいい友ができてうれしい限りだ。ぜひ、葵をよろしくやってくれ」
バルムンクさんは、楽しそうに笑いながら言うのだった。
◆
ご飯を食べた後、折角なので、ここの畑の収穫を手伝うことにした。
そこには、様々な種類の作物がズラァーっと並んでいる。
採れたての野菜たちは、どれも旨そうだ。
「では、今日はよろしくお願いします」
「ええ、お任せを……」
こうして、俺とガーネットさん、麒麟は畑で新鮮な野菜たちを採ることにした。
ちなみに、銀瓏は大蛇と一緒に魔物の狩りに出掛けていった。
「うわ……結構デカいな」
「このサツマイモ、ボールぐらいの大きさだね!」
『ふむ……このキュウリも実に瑞々しい感じです』
数時間掛けて、この畑の作物を収穫することができた。
凄い量だな……
「よし、折角収穫したんだし、この野菜で何か作ろうか」
「わーい、賛成!」
色んな野菜があるな……そうだ!久しぶりに中華系で行こうか。
今回は―――『麻婆茄子』だな。
まず、茄子とピーマンは縦に切って、にんじんは短冊切りにする。
熱したフライパンに油を入れ、なすを炒める。
焼き色がついたら、にんじん、ピーマンを入れ弱火にする。
火が通ったら、皿にとる。
中火でひき肉を炒め、火が通ったら、いったん火を止め、『麻婆茄子の素』を入れて、再び火をつけ、中火で炒める。
なす、ピーマン、にんじんを戻し、炒め合わせたら―――
完成!『野菜たっぷり麻婆茄子(ラグナロク産)』!!
出来上がった料理をガーネットさんや麒麟、収穫をしていたメイドたちに振舞う。
「どうぞ、食べてみてください」
「これは……では、いただきます」
そう言い、メイドたちは『麻婆茄子』を一口食べる。
「っ……!!お、美味しいです!」
「このピリッとした辛さに、野菜の味がより一層引き立ってますよ!!」
「コクがあって、ご飯との相性がいいです!」
と、メイドたちはバクバクと食べ進める。
俺も食べるか。
「……んっ!旨い!!茄子がトロトロだ!」
油を吸った茄子の身がトロトロとしてて、そこから麻婆の味が染み込んでて、うめぇ~!!
他の野菜も歯ごたえを残しつつ、野菜の旨味が出ている!
「っはぁ~!やっぱり中華もいいな!」
「あむあむっ!本当、美味しい~!」
『ええ、どの野菜も味がしっかりしみこんで美味しいです!』
ガーネットさんと麒麟もこれには満足のようだ。
こうして、食べ進めること数分……『麻婆茄子』は完食したのだった。
「うわ~スイカうめぇ~」
「本当~」
俺たちは食後のデザートとして、さっき採れたスイカを食べていた。
すげぇ瑞々しくて、うめぇ。
塩、入らねぇなこれ。
「スイカ食べると、『夏』って感じがするよな~」
「そうだね~こんなとき、『オードブル』へ行って、海で楽しみたいね~」
オードブルか……彼処は確か、海の幸が豊富なんだよな。
海鮮でBBQを楽しむのもいいよな~……
「いつか、『オードブル』にも行きたいですね」
「そうだね。幸なら、海の魔物をより美味しく食べれそうだし!」
「ははは……すっかりガーネットさんも、銀瓏みたいに食い意地が強くなりましたね」
「むぅ……幸が作る料理が美味しすぎるのがいけないもん!」
「ははっ、なんだそれ」
そんな会話をしつつ、スイカを食べ続けるのだった。
◆
そうして、日が暮れ、銀瓏と大蛇が帰ってくる。
『うむ、帰ったぞ』
『いっぱい、ババッてしてきたよ~!』
「おーおかえり――」
銀郎達が狩ってきた魔物をみると、どれも手強そうな魔物がゴロゴロと置かれていた……
「――なんか、狩りすぎじゃない?」
『ここには手ごろな魔物がいたのでな。つい狩りが進んでしまったのだ』
『あーしも、魔物をババッてやったよ~!』
「へ、へー……そうなんだ」
と言ってもな……
俺は銀瓏たちが狩ってきた魔物を見てみる。
・レッドオーク Aランク
・ハイパーアルミラージ A+ランク
・スカーレットサーペント Aランク
・カトブレパス Aランク
・グリーン・アリゲーター Bランク
・レモネードラゴン Aランク
・コカトリス Cランク
・マタンゴ Dランク
・ゼライム Eランク
etc……
肉類が高ランクばっかじゃん……
「……『ゼライム』?聞いたことない魔物だが……『スライム』か、これ?」
「『スライム』の突然変異ね。食べるとプルプルしてて美味しいし、味が色によって違うから、子供でも楽しめるの。それに、これって肌にいいから私的にはいいものよ!」
「へー……」
ここで言う、ゼリーやプリンみたいなもんか……
そう思えば、抵抗は薄いな。
「さてと、これを解体して、晩飯を作るとしますか」
「あ、それなんですが……」
すると、料理を取り掛かろうとした時、葵さんが声を掛けられる。
「なんですか?」
「今日は、私が晩御飯を作りますよ」
「え?それはありがたいんですが……いいんですか?結構こいつら食べると思いますが……」
「ふふ、大丈夫ですよ。メイドたちも手伝いますから、それに―――ちょっとしたサプライズをしてみたいですし」
「サプライズ?」
「それは、料理ができ上がってからのお楽しみと言うことで……心待ちにしてくださいね♪」
「は、はぁ……」
そうして、俺たちは晩飯を葵さんに任せて、テーブルで待つことにしたのだった……




