第百一術 襲来、『魔術皇』ソー・サリー
翌日。
俺は朝食を済ませたあと、『イーストタウン』から出ようとしていた。
「じゃあ、またなさっちゃん。多分また交流するけど、あんたの飯、美味しかったよ」
「ええ。イールビも元気で」
「あ、あの……」
すると、メデューがイールビの後ろに隠れながらも、前に出る。
「その……ご飯、ありがとうございました……!とても、美味しかったです」
「そうか~ありがとうな~」
「……///」
そう言い、俺はメデューの頭を優しく撫でる。
「じゃあ、また会いましょう!」
「おう!さっちやんたちも元気でな!」
そう言い、俺たちは『イーストタウン』を出たのだった。
◆
銀瓏たちに乗って葵さんのところへ向かう途中、俺たちは話し合っていた。
「それにしても……イールビに奥さんがいたなんて……驚いたよ」
「そうだね~私も驚いたよ。まさか『蛇人族』と付き合ってるなんてね……」
「ラミア?……あの下半身が蛇の?」
『基本『蛇人族』は、どちらか片方に蛇の特徴が備わっている』
「へー……そうなんだ」
よくよく聞くと……娘の『メデュー』って、『メデューサ』から取った名前だもんな。
……石にする能力とか、ないよな?
そんなことを考えていると……突然、目の前の空間が歪み始めた。
「!?」
『むっ!』
急な出来事に銀瓏達は急ブレーキをかける。
「な、何あれ!?」
「嘘……あれは『時空間魔法』!?」
「時空間?……なんか凄い名前ですが……」
『時空間……時間と空間を司る魔法で、『瞬間移動魔法』や『転移魔法』よりも高度な魔法です』
「マジで!?」
すると、歪んだ空間から、謎の人物が姿を現した。
フードを纏い、水色の鉱物の仮面を被った人物だった。
「なんだあいつ……?」
『……っ!』
「お、大蛇?」
すると、大蛇が俺の首元に少し強めに巻きつく。
『あるじ~……なんかイヤな感じがする……』
「いやな感じ……確かに不気味なオーラをしているような……」
そう思っていると、謎の仮面の男が口を開いた。
「『サカモリ サチ』……そなたの活躍を見ていたぞ」
「は、はぁ……」
「人類未踏の『二つ名』と『聖獣』の『契約獣』……そして、そなたの能力である『錬金術』――その力があれば、この国どころか世界をも変えることができる」
「……」
「私は『バハムート』の王、『ソー・サリー』……私の右腕となり、共に世界を変えようではないか……」
謎の仮面――『ソー・サリー』がそう言うと、俺へ手を差し出した。
そんな王からの提案に、俺の答えは――
「いや、結構です……」
「……何?」
「いや、だって……急に世界を変えようとか言われても、俺はただ普通にガーネットさんたちと異世界を楽しんで、色んなものを見て回ったりしたいですし……」
俺は銀瓏たちを見る。
「それに、こいつらもただ飯目的でついてきただけだから、言いなりって感じじゃないですし……それに――」
『っ……』
「俺の大蛇がさっきからあんたに『警戒』しているんだよね……!」
大蛇は、ソー・サリーという男に目を光らせている。
それに、バハムートってあれだろ?『レオンガル』と同じやばい所だろ?
そんな奴の言いなりとか、御免だね……本当に。
「むぅぅ……凡俗め……!その力の『価値』を分からぬのなら……私がその力を有効に使わせてもらう!」
『ふん!愚か者が……この俺を利用しようと考えているとは――よほど死にたいようだ!』
『私も……舐めてる感じがヒシヒシと伝わります……聖獣の『怒り』は相当ですよ?』
銀瓏も、麒麟も戦闘態勢に入る。
俺たちも、銀瓏たちから降りて、戦闘の準備をする。
「相手は一人だけど……油断はするなよ!皆!」
『ああ!』
『ええ』
「うん!」
「ふん……よかろう。我が『魔術皇』の力、とくと見よ!!」
そう言い、ソー・サリーは空中へ浮かぶ。
……そんなこともできるの!?
「まずは小手調べとしよう――『特大雷魔法』!!」
――バリリリッ!!
ソー・サリーの両手からどす黒い雷が迸る。
な、何か凄い魔力なんだけど!?
「ふんっ!」
『……っ!『雷光斬』!!』
――ズガァァンッ!!
太い雷撃を、麒麟が角に凝縮した雷魔法の剣で叩きつける。
「ほう……流石『聖獣』だ。私の魔法を弾くか……」
『その程度では私を倒せません』
『むんっ!』
すると、今度は銀瓏が、ソー・サリーへ突撃する。
『『龍王』――『印』!!』
「むっ……!」
――ガキィィンッ!!
銀瓏の魔力が込められた爪を、ソー・サリーが透明な壁を出現させて防御する。
あれって……『結界』!?
『むっ……硬度が高いな……!』
「ふんっ……『レッドドラゴン』でさえも弾き返す結界だ」
『だからどうした!俺は『二つ名』だぞ!』
「むっ……むぅぅ……!」
銀瓏が爪を結界へ押し込み続ける。
すると――
――ビキッ!
「むっ!?」
結界にヒビが入った。
その亀裂は瞬く間に広がっていき――
――パリィィンッ!
「ぐっ……!」
結界が粉砕される。
しかし、ソー・サリーは咄嗟に銀瓏の攻撃を回避した。
「おのれ……っ!」
ソー・サリーが上を見上げる。
そこには、いつの間にか雷雲が空を覆い尽くしていた。
『行きなさい……『天滅』!!』
麒麟が放つ、最大威力を誇る聖と雷を合わせた魔法。
それが、ソー・サリーへと降り注ぐ。
「むぅ……!『究極草魔法』!!」
――ブワワワッ!!
ソー・サリーの手から無数の葉が展開される。
それらは渦を巻くように集まり、麒麟の攻撃を真正面から受け止め――相殺した。
「嘘だろ……麒麟さんの特大の攻撃を相殺した……!」
『……成程、腐っても『魔術の王』……ですか。これは、ウロボロス並みに厄介ですね』
「ふん、私が長年研究した魔術だぞ。貴様らよりも私の方が―――練度が高い!!」
『っ!』
「大蛇!」
すると、大蛇が飛び出し、『形態変化』によって、一気に全長50mほどまで巨大化し、そのままソー・サリーへ襲い掛かる。
「むぅ……!これは―――『形態変化』か!『ブルー・サーペント』にしては小さいとは思っていたが……しかし!」
ソー・サリーは大蛇へ向けて魔法を放つ。
「私が『ブルー・サーペント』如きに遅れを取ると思ったか!――『特大風魔法』!!」
『シャアァァッ!!』
――ビュゥッ!!
ソー・サリーは嵐のような竜巻を放つ。
対する大蛇は魔法陣を展開し、そこから極太の水圧光線を放った。
二つの攻撃がぶつかり合い――
巨大な爆発と共に、煙が舞い上がる。
そして――大蛇が、地面へ倒れ込んだ。
「お、大蛇!?」
『ムギュッ……』
ドシンッ……と大蛇が倒れ、その身体が徐々に小さくなっていく。
『あ、あるじ~……あのおじさん強いよ~……』
「大蛇……!無茶しないでくれ!」
大蛇はAランクの魔物を倒せる実力を持っている。
だけど、生まれたばかりで、まだこのパーティではレベルが低い……!
麒麟の攻撃を相殺できるほどの実力を持つ相手に、大蛇が単独で向かうのは危険すぎる……!
「ふん、いくら珍しい大きさに変化していても……所詮、Bランクの雑魚……!『魔術皇』の敵ではないわ!」
「っ……!」ピクッ――
――今こいつなんて言った?
「大蛇……っ!さ、幸?」
『?……っ!』
『あいつ……』
「むっ……」
ソー・サリーは空中から、俺たちを見下ろしている。
「なんだ?まさか、次に貴様が戦うのか?さっきまで『契約獣』達が戦っていたというのに……いくら『Sランク』といえど貴様はまだ若い……このソー・サリーには当然及ばな「うるせぇ」……何?」
俺はソー・サリーを見上げ、睨みつける。
……俺は今、猛烈に怒っている。
なんか勝手に俺のことを利用したいと言い出し――
銀瓏たちを政治の道具に利用しようとしたし――
けど、一番頭にキテるのは……
「そんな眠っちまいそうな長ったるい『演説』しないで、さっさと来いよ。ブリキ野郎」
――俺の可愛い大蛇を侮辱したことだ。




