第九十六術 変な奴と出会った……
翌日……俺たちは、暇つぶしにギルドの依頼をこなそうと思い、掲示板を眺めていた。
『うむ、これはどうだ?』
「ん?……『オーク・キングの群れの討伐』?」
『ああ、肉の確保にもなるし、いいと思うのだが……』
「ふーん……良いんじゃないか?オーク肉って結構うまいし、何にするかな……」
「オーク肉か~丼ものも旨いけど、揚げ物もいいよね~」
『ああ、カツですね。あれは美味しいものでした……』
と、もうすでに食ムーブに浸っている。
「おっと……肉に浸っていね場合じゃないな……今日はこれにするか」
そうして俺たちは、ギルドのクエスト『オーク・キングの群れの討伐』へ向かうことになった。
◆
目的の場所まで向かっていると――銀瓏たちは何かを感じ取ったようだった。
『むっ?』
「どうした銀瓏。急に止まって……」
『あれを見ろ……人がいる』
「ええ?ここオーク・キングの集落だろ?こんなところに人が……」
すると、俺が前方へ視線を向けた先には――
「~♪」
い、いたぁー!?
しかも、リゾートに出てきそうな椅子にくつろいでいる!?
つか、ここ森だぞ!?どうなってんだ!?
すると、くつろいでいる人物が口を開く。
「正直に答えてね―――あんたたち、ここで闇の取引にきたのかい?」
「や、闇の取引?」
その人物は、顔を紺色のローブで巻き付けており、その隙間から赤い光を放つ目が見えている。
服装はスーツに近く、執事のような格好だ。
だが、その雰囲気からして、どこかの護衛というわけでもなさそうだ………
その椅子の隣には、二つの剣が置かれている。
……日本刀?
そんな怪しさ満点の人物が、少しドスの利いた声で話しかけてきたかと思えば――
「闇の取引じゃないなら、此処で一緒に『ルボルスティー』でも飲まない?オレちゃん、なんか知らんけど、ここで厄介払いされているの!――ところで闇の取引ってなに?●薬でも取引すんの?」
「な、なんだこいつ……急に……性格が変わったように話しかけてきたぞ……」
『あるじ~この人何言っているの?』
「ああ、大蛇……俺もさっぱり……」
『フン、そんなことより、俺たちはこの先にクエストで『オーク・キングの集落』にようがある。そこを退け』
すると、謎の人物は目をキラキラさせながら、こっちに近づいてきた。
「『クエスト』だって!?オレちゃんも一緒に行かせてくれよ~!」
「うわっ!何だこいつ!?」
「オレちゃん、パーティーにも、ガールフレンドにも断られちゃってるんだよぉ!」
そりゃあ、その姿で話しかけられたら、誰だって断るような……
「んだとてめぇ!オレちゃんのファッションはな!ミステリアスなクールっぽさを出してんだよ!成り立てホヤホヤの甘ちゃんには分からないだろう!」
「何で、思ったこと分かるの!?」
「自分で言ってるだろ?──語り手として」
「語り手ってなに!?」
何かこいつ、さっきからメタイ話ばっかしてないか?
本当に何なんだ、こいつ……
『……』
麒麟がさっきから無言でこの人を見つめている……ど、どうしたんだ?
『……あなた、本当に『人間』なのですか?』
「え?」
「あっ、分かっちゃう?流石聖獣だね。伊達にどっかのハイ●アの騎士の馬はやっているようだね」
『誰ですかそれ』
「というかそれゼ●ダ!?」
お前、N社に怒られっぞ!?
……というか、何でお前それ知ってんの!?
「ネタバレすると……オレちゃん、普通じゃないんだよね……」
「ええ?……な、なにこれ!?」
「ガーネットさん?」
ガーネットさんが目の前の人物を鑑定すると、何かに驚いた。
一体、何に驚いているんだ?
そう思って見てみたら───
【名前】 イールビ
【年齢】 ??
【性別】 ♂
【職業】 ●●●●●●●●
【種族】 ●●●●●
【レベル】
【ステータス】
・体力 ●●●00
・魔力 ●●00
・筋力 ●●00
・俊敏性 ●●00
・耐久性 ●●00
【スキル】
・隠密・剣術『極』・透視・危機察知・自己能力強化・●●●●●●
【個体能力】
・●●●●
【加護】
・●●神の加護
な、何だこれ!?殆ど文字化けしてるじゃねぇか!?
「オレちゃん、この能力のせいで、周りから浮きに浮きまくってるのよ」
「でしょうね」
「まっ!今更だし、気楽にやっているのよね~」
えぇ……何て適当な人なんだ……
「そんなことより……さ!早くクエストに出向いた方がいいんじゃなーい?オレちゃん、結構強いから!」
「え、えぇ……どうする皆?」
流石にこれはパーティーメンバーに相談だ。
得体の知れない奴に入れていいか、分からん……
「うーん……まぁ、悪い人じゃなさそうだし……いいんじゃない」
『別にどうでもいいが、狩りの余波で当たっても知らんぞ?』
『……まあ、神の加護もありますし、大丈夫でしょう。一応』
『敵に反応しないからいいよ~』
と、皆は普通に賛同していた。
うーん……まぁ皆が大丈夫って言ってるし、何かあったら麒麟達が何とかしてくれるか……
「分かりました。では、銀瓏達に乗ってください。あともうすぐで着くらしいので」
「おお!オレちゃん、ドラゴンに乗るのはじめて!気分が上がるぜ……手に2本の槍を武装したいぐらいに……」
「何の話?」
こうして、謎の人物──『イールビ』と共に『オーク・キングの群れ』の討伐に向かうのだった。
◆
目的地に着くと、そこにはオークの大群がいた。
「結構な数だな……」
『丁度いい、俺が蹴散らしてくれるわ』
『この程度では私たちの敵ではないです』
『よーし、やるぞ~』
「イールビ、行きまーす!」
そう言うと、イールビは背中に帯刀していた二本の日本刀を抜き、銀瓏たちと共に駆けだす。
「うわっ、速っ!?」
何だあの速さ!?銀瓏たちにも劣らない速度だ!?
「っ!」
―――ズバッ!!
イールビの剣戟が、オークの胴体を簡単に斬り伏せる。
す、すげぇ……何だかよく分からない奴だけど……戦い方がスピーディで正確だ……
「トロいな。俺はフェニックスよりずっと早いぜ?」
『ほう……中々の強さだ。いつか戦いたいものだ』
「いいぜ?いつかな。なんなら『紅血玉』くれよ。『天鱗』でもいいぜ?あと少しで新しい武器ができるんだよ」
『なんだそれは』
というかそれモン●ンじゃ……つか、なんでこの人、ゲーム知ってんだ?
そんな感じで見守っていると――
他のオークより巨大で武装したオーク……『オーク・キング』が現れる。
「あれが『オーク・キング』!」
「あれでもランクは『A』よ」
「ランクはAでも、どうせ数秒で終わるんだけどね★―――尺の都合上、仕方ないのよね!!」
そんなメタいことをぶっこみつつ、剣を構える。
そして数秒後―――
本当にあっさりと『オーク・キング』を倒した……
「いっちょ上がり!」
そう言うと、剣を地面に刺し、俺に顔を近づける。
「どうよ?オレちゃん、結構やれたでしょ?」
「は、はい……分かりましたから、近いです……」
本当……戦いのオンオフが激しいな。
「この後、ギルドに報告するんだろう?オレちゃんも暇だから行ってもいい?」
「え……別にいいですが……『冒険者カード』って持ってるんですか?」
「おうよ!ここに」
そう言って取り出したのは――
『運転免許』だった。
「いやそれ運転免許!?」
「あっいっけね。間違えた。これ今年で取った奴……こっちだこっち」
そう言って戻したあと、取り出したのが……『Aランク冒険者カード』だった。
「え、Aランクだったんですか?」
「おうよ。オレちゃんこれでも忙しくてね……更新のために年に一回ぐらいギルドの依頼をしているんだよ」
忙しいって……あんたさっき、くつろいでなかったか?
「まぁ細かいことは後々~!さっさと依頼完了を済まそうぜ~!」
「ええ……」
こうして、イールビと名乗った人物の謎を抱えたまま、このまま『トランザ』へ帰るのであった……




