第九十四術 大蛇、育成計画④
早速、『スコッチエッグ』を作っていくか。
まずは卵を茹でて、ゆで卵を作る。
その間、ボウルに肉……今回は、このダンジョンで大蛇が狩ってきた魔物で行くか。
挽き肉、塩・胡椒、牛乳に浸したパン粉、玉ねぎのすりおろし、溶き卵を加えて粘り気が出るまで捏ねる。
混ざったら、冷やして寝かせる。
休ませてる間に、茹でた卵の殻をむく。
「あ、私も手伝うよ」
「ありがとうございます。ガーネットさん」
ガーネットさんにも手伝ってもらいながら、ゆで卵を薄力粉でまぶし、肉だねを包み込む。
小麦粉、溶き卵、パン粉の順につけ、揚げ油を170℃に熱し、ときどき転がしながら4~5分揚げ、ころもがカリッとしたら取り出す。
あとは、オーロラソースを作って添えたら……
――完成!『異世界肉のスコッチエッグ』!
「ほら、出来たぞ!」
『『おおっ!!』』
揚げたての料理をみんなの目の前に出すと、歓喜する。
「では早速……」
『『いただきまーす!』』
俺はさっそく、揚げたてのスコッチエッグを一口かじる。
――ザクッ!
「んん!旨ッ!!」
噛んだ瞬間、肉汁がじゅわっと口いっぱいに広がってうめぇ~!
ハンバーグとはまた違った方向の美味さだ!
しかも中には卵が丸ごと入っているから、満足感も凄い。
さてさて……みんなの反応は?
『うむ、旨い!噛めば噛むほど、肉と卵の味が口いっぱいに広がる!!』
『サクサクとした食感に中の肉のジューシーさと卵のしっとり感が合わさってこれまた美味……!』
『あーしね、肉とね、卵がはいってね、あーし満足!』
「んー!まるでハンバーグをあげた食感みたい!」
「みたいっていうか、ほぼそのまんまだよ」
どうやらこれも好評のようだな。
大蛇も気に入ってくれたみたいで何よりだな。
こうして、スコッチエッグはものの数分で完食された。
『さてと……飯も食べたし、次の階へ進もうか』
「そうだな」
ご飯を食べ終えた俺たちは、次の階層へと進むのだった。
◆
『トランザダンジョン 二十一階』
着いた先は……草原のような場所だった。
「今回は草原か……前に来た時は海だったよな?」
「そうだね~まぁダンジョンっていうのは変わるもんだからね」
だからと言って、変わりすぎたとは思う……
すると、銀瓏が何かを感じ取った。
『ふむ……ここには、Aランク寄りのBランクがいるな。前よりレベルは下がったが、それでも少し歯ごたえのある魔物はいるだろう』
「少しって……」
銀瓏が言う、『少し』は俺にとって絶対強い奴だろ……
『大蛇よ。ここの階は前よりも歯ごたえのある敵だぞ?』
『本当?あーし、頑張る!』
そう言って、俺の首元で嬉しそうに身体を揺らす大蛇。
こうして俺たちは、大蛇を先頭にして次の階層へ向かった。
――そして、その後も、大蛇が次々と魔物を倒し、俺たちが先へ進む。
そんなことを繰り返しているうちに――
『トランザダンジョン 二十九階』
……もう最下層直前まで来てた。
いくら何でも早すぎだろ……
「もう二十九階層まで来たぞ……」
「本当、そうだね……ランクが低かったのもあるかもしれないけど」
『さて、次が最下層だ。気合入れろよ、大蛇?』
『うん!分かったよギンロウおじちゃん!あーし、頑張る!』
『期待してますよ』
そう言って、俺たちは『転送石』を使い、最下層へと転送される。
◆
『トランザダンジョン 最下層』
転送された先には、広々とした空間が広がっていた。
「さてさて……今回のボスは?」
『あーし、ババッて倒すの~!』
重々しい足音が、広い空間に響き渡る。
「……!」
俺たちが身構えた、その瞬間……
巨大な魔物が、俺たちの目の前へ姿を現した。
緑色の鱗に覆われた、四足歩行の魔物。
トカゲのような身体には、いくつもの角らしきものが生えている。
そして――
『―――グォォォォッ!!』
「あれは……ドラゴン?いや蜥蜴?」
「あれは――『古代龍』ね」
「アンティーク?」
「『全ての龍の始祖』……って言われてるの」
全ての龍ね……俺はチラッと銀瓏を見る。
あの龍が何世代も時を重ねていったら、銀瓏みたいな感じになるのか?
「にしても、珍しい魔物ね。滅多に見かけないわ……」
「まぁ、『始祖』って言われるくらいだから、そうでしょうね。ランクは?」
「え~っと……『A+』ね」
A+か……Aランクの魔物を単独で倒せるようになった大蛇でも、不安になるレベルだな……
「よし、大蛇。俺も手伝うぞ。」
『本当?ならあーし、あるじと一緒に戦う!』
そう言って、大蛇は離れないように俺の首へ身体を少し強めに巻き付ける。
『ほう、主が自ら動くか』
「流石にパーティのリーダー的な感じだからな……少しくらいは強くならないとな」
そう言い、武器を『錬成』し、構える。
「……行くよ、大蛇」
『うん!』
『グォォォォッ!』
ガーネットさん達が見守る中、先に動いたのは――『古代龍』だった。
「っ!」
古代龍が大きく口を開き、俺へ噛みついてくる。
俺はすぐさま『フォース』を盾へと変形させ、大きく展開して、迫り来る噛みつきを、正面から受け止める。
――ガキィィンッ!!
「ぐっ……!」
重い……!流石はA+ランク。
だが、その隙を逃す大蛇ではない。
『それっ!!』
――ドドドッ!!
大蛇が魔法陣を展開し、高圧の水流を連続で撃ち出す。
『!?』
水圧の光線が古代龍の身体へ突き刺さり、その巨体を大きく吹き飛ばした。
多少の傷から血が流れている……
だが、それでも古代龍はすぐに体勢を立て直した。
流石、A+……タフだな。
なら――
「『爆破銃』!」
――ビリッ……!
『グォッ!?』
『ウィズ』のトリガーを引いた瞬間、銃身から電撃が走る。
その電撃が古代龍の顔へ到達し――
――ドコォォンッ!!
『グ、グルルッ……!』
爆発が起きた。
これは俺が『ウィズ』の装着している宝石の魔力で編み出した合体魔法だ。
前にガーネットさんに魔法を合体させることができるか聞いてみたら、『可能』とは言っていた。
それこそ、前に戦った『ムーンビースト』のように……
だけど、合体魔法は消費する魔力が高いし、コントロールも難しいと言っていた。
そこで俺は、『雷魔法』で軌道を作り、そこへ『炎魔法』を流し込んで起爆させる方法を試してみた。
――その結果、何とか完成させることができた。
完成できてよかった……いや~苦労したぜ。下手して、至近距離から爆破事故もあったからな……
『グッ……グルルっ……』
お、意外と効いてるな……
古代龍の顔は焼け焦げ、苦しそうに唸っている。
『グルァッ!!』
だが、まだ倒れる気配はない。
古代龍は再び俺たちへ向かってくる。
『あるじ~!右から来るよ!』
「よし来たっ!」
大蛇の『危機察知』が、攻撃の方向を知らせてくれる。
俺はすぐさま身体を動かし、古代龍の攻撃を回避する。
凄いぞ大蛇!これなら、死角からの攻撃にも対応できる。
『グルルッ……!』
「ふぅ……大蛇、最後は決めるぞ」
『うん、分かった~!』
そう言うと、大蛇は俺の首元から離れ、軽くジャンプする。
そして――
『脱皮分裂』を発動!
一体、二体、三体……次々と分裂し、合計五体の大蛇が出現する。
「おお……!」
そして俺は、『ウィズ』を剣へと変形させる。
その刀身へ魔力で水を纏わせる。
『それぇ!!』
「『水流斬撃』!!」
俺たちは一斉に、水魔法による遠距離攻撃を放つ。
『!!』
――ズドォォォンッ!!
高圧に圧縮された水流が、古代龍の身体へ次々と直撃する。
『グ……ォ……』
その巨体が大きく揺らぎ……
――ドスンッ!!
古代龍は、その場へ倒れた。
そして、その身体は光となって消え、後には素材だけが残される。
「おーし!やったぞ大蛇!」
俺は古代龍を倒したことに喜び、大蛇の方を見る。
すると――
「……ん?」
大蛇の身体が、妙に光っていた。
「お、大蛇!?」
俺は慌てて大蛇のもとへ駆け寄り、心配しながら身体を持ち上げる。
すると――
徐々に光が収まっていく。
「お、大蛇?なんともない?」
『んー……なんともないよ?』
「そ、そう?」
すると、銀瓏が近づいてきて、大蛇をまじまじと見つめる。
『ふむ……大蛇、レベルが上がって進化しているぞ』
「ええ?……本当だ。なんかさらに青くなっているぞ」
『ええ?本当?』
以前は水色に近い色合いだった大蛇の鱗。
それが今では――完全な青色へと変化している。
「古代龍を倒したから、レベルが上がって進化したのね……」
『おめでとうございます。大蛇』
『あーし、強くなった?』
「ああ、そうだぞ!よかったな~大蛇!」
『本当?……えへへ……』
大蛇は嬉しそうに声を漏らす。
こうして――大蛇の育成を目的とした、二度目の『トランザダンジョン』攻略は、無事に完了したのだった。




