第九十三術 大蛇、育成計画③
『トランザダンジョン 十五階』
あの後も、大蛇は着実に成長していった。
そして、大蛇が一人でも魔物に対処できるようになった頃には――もう十五階層に到達していた。
……何か、大蛇の成長が早くなってない?
それに──
『あっ、こんなのはどうかな?──それッ!』
──ズパァァンッ!!
大蛇は尻尾に水魔法をまとわせ、鋭利な刃を生み出す。
そして、それを振り抜くと、まるで水圧カッターのような一撃が、魔物を真っ二つに切り伏せる。
……何か、戦い方まで上手くなってきてない!?
『わーい!上手くできた~!』
「お、大蛇?今のは凄いけど、それ絶対に人にやらないでね?」
『?……分かった~!』
そう言い、大蛇は残りの魔物を倒しに行った。
素直で言うことを聞いてはいるが……もし敵対したら、かなりヤバい気がする。
『ふむ……これで『レイク・スネーク』か……強さだけなら『サファイア・サーペント』並みだがな……』
「えぇ!?マジで!?」
『ああ。恐らく、主との契約によって、大蛇のステータスが多少変化したんだろう』
多少どころじゃないと思うんだけど……
「にしても早いね……一回のダンジョンでここまで成長するなんて……」
「いやまぁ、確かに……」
『ここまで来ると、最終進化までもそう時間はかからんだろうな』
「最終進化?……それってどんな?」
『そうだな……こいつの最終進化は―――Sランクの『シー・サーペント』だろうな』
「『シー・サーペント』……」
ファンタジーでよく見かける海の魔物か……
しかもSランク。
『おれも一度戦ったが……まぁまぁ、歯ごたえはあったな』
「まぁまぁ……」
銀瓏が『まぁまぁ』と言うと、相当強いだろうな……
それこそ、ブラックドラゴン以上に……
『あるじ~!見てた~?』
「ん?ああ、見てたよ。凄いな大蛇~もう一人で倒せてるじゃないか」
『えへへ……あるじに褒められた~!』
そう言いながら、大蛇は俺の首に巻き付き、嬉しそうにじゃれ始める。
本当に可愛いなぁ、大蛇は!
『ふむ、これなら二十階まではそうかからんだろうな。行くぞ』
「ん?ああ、そうだな」
そうして、俺たちは次の階層へと進んだ。
◆
『トランザダンジョン 二十階』
あの後も順調に階層を進み、気付けば――もう二十階層だ。
大蛇の戦い方も、短時間とは思えないほど磨きがかかっている。
『よーし、倒すぞ~!』
「次はBランクが出てきそうだな……」
すると、そこに現れたのは――蛇の尾を持つ双頭の黒犬だった。
しかも、一匹ではない……
十匹もいる。
「うわ!あれ『オルトロス』か!?……にしては小さい?」
「あれは『リトル・オルトロス』よ。普通の『オルトロス』よりランクは低いけど、数が多いわね……」
あれは大蛇一人で対処できるのか?
そう思っていると、銀瓏が言う。
『ふん、心配はいらんだろう。Bランク1、2体でも対処ができたのだ。この数でも問題はない』
「ええ……大蛇、無理はしないで、手伝ってほしかったらちゃんと言うんだぞ!」
「うん、分かった~!」
そう言うと、俺たちはガーネットさんの結界を展開し、万が一にも攻撃が大蛇へ当たらないようにしながら、その戦いを見守る。
『グルルルル……ガァッ!!』
すると、リトル・オルトロスの一匹が大蛇へ向かい、鋭い爪を振り下ろした。
――ドシィィンッ!!
強烈な一撃と共に、土煙が舞い上がる。
「大蛇!」
『グルル……っ!』
だか、その場に大蛇の姿はなかった。
あるのは―――青い鱗が目立つ、大蛇の抜け殻だった。
「あ、あれって!」
『ほう……『脱皮分裂』で回避したか……』
『?』
リトル・オルトロスたちは、大蛇の姿が消えたことに戸惑い、辺りを見回す。
だが――
『っ……!』
その時にはすでに、大蛇はリトル・オルトロスたちの頭上にいた。
『それぇ~!』
――ガガガガッ!!
『『グガガガっ!?』』
大蛇が展開した魔法陣から、高圧の水流を連続で放つ。
何本もの水の光線がリトル・オルトロスを撃ち抜き、数匹を一気に倒した。
『グゥ……ガァッ!!』
続いて、別のリトル・オルトロスが大蛇へ飛びかかる。
その牙で、大蛇に噛みつこうとしたが――
『っ!』
――ズバッ!!
『 』
大蛇は尻尾に水魔法をまとわせ、水圧カッターの要領で一閃。
襲いかかってきたリトル・オルトロスを、一撃で切り伏せた。
『よーし!ちょっとでかくなるよ~!』
そう言った瞬間、大蛇の身体がみるみるうちに巨大化していく。
水色だった鱗は、さらに濃い青色へと変化。
1、2mぐらいあった身体は――あっという間に20mぐらいまで巨大化した。
――いやでかぁ!?
「あれデカくない!?」
『こ、これで『レイク・スネーク』か?俺が見かけた個体より、数倍は大きいぞ……』
「あのサイズは『サファイア・サーペント』でしょ……」
『他のサーペントでも、あそこまで大きな個体は見たことがありませんね……』
嘘でしょ……ガーネットさんだけじゃなく、銀瓏や麒麟が驚くほどの大きさかよ……
『あれ?大きくなりすぎちゃったかも?……けどいいや。えーい!』
――ブォォンッ!!
大蛇が巨大な尻尾を振り抜く。
その一撃によって、残っていたリトル・オルトロスたちはまとめて吹き飛ばされた。
そして――
――ドゴォォンッ!!
壁へと激突。
いや、威力がエグイ……一撃で倒したぞ。
こうして大蛇は、この階層にいたリトル・オルトロスたちを全滅させることに成功した。
――シュルシュル……
巨大化していた身体が縮み、いつもの大きさへと戻る。
『わーい!いっぱい魔物倒せた~!』
「そ、そう……凄いね」
やばい、仲間にしたばかりなのに、ここまでパワーアップするとは思ってもいなかったぞ……
「お、大蛇?今日はいっぱい動いたから、今日はここまでにして、帰ろうか?」
『え~……』
すると、大蛇が残念そうに声を漏らした。
えっ?嘘だろ?あんだけやったのにまだ足りないのか???
『まだあーし、うごき足りない~!もっとババッてしたい~!』
大蛇は駄々をこね始める。
「え、ええ……けどほら、この先大蛇よりも強い魔物がいるかもしれないんだぞ?」
『やだやだ!あーし行きたい!!』
そう言って、大蛇は身体をくねくねと揺らす。
『ふふ、諦めろ主。どうやら、大蛇はやる気が満々だぞ?』
「はぁ……本当はここで終わらせたかったんだけどな……仕方ないか」
俺は大蛇の姿を見て、ついに折れた。
「分かったよ、大蛇。そんなに行きたいなら、いいぞ」
『本当!わーい!あるじ大好き~!』
「こらこら……くすぐったいぞ?」
大蛇は嬉しそうに、俺の顔へすりすりと身体をこすりつけてくる。
「その前に、一回ここで飯にするか。大蛇が頑張ってくれたし、ちょっとだけ豪華にするよ」
『本当!!わーい!あるじのごはん楽しみ~!』
『ほう、それは良いな。ちょうど小腹を詰めたいと思っていた所だ』
「はいはい……さてと、今日はどうしようかな……」
大蛇はまだ子供だからな……子供が喜びそうなものというと……
「ハンバーグとかかな?けど、普通だとつまらないし……そうだ、あれを試してみよう!」
そう言い、俺はバックから取り出す……
手に取ったのは、卵だった。
――そう、今回俺が作る料理は……『スコッチエッグ』だ!
~異世界知識~
大蛇の成長度合い
ポンド・スネーク
⇒レイク・スネーク(今ここ)
⇒ブルー・サーペント
⇒サファイア・サーペント
⇒シー・サーペント




