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felice〜彼氏なしアラサーですがバーテンダーと同居しています〜  作者: 櫻井 妃奈乃
第三夜 新しい命の灯火
15/35

茜は手術を受けた次の日には産婦人科病棟に転棟し、離床も順調だった。

陽菜は日勤だったため、勤務の合間を見ながら茜を見舞った。


茜は内緒にしていた妊娠が、皆の知るところになったが特に気にはしなかった。

しかし面会時間の終日を茜のそばにいる存在には参ったようだった。

それは茜のことをまだ心配する匠だった。


「同伴と断って、ギリギリまで付いてるのよ。もう恥ずかしいったらなくて。」


午前10時、茜の病室にて。

匠がコンビニで買い出しに行っていない間にバイタルを測りにきた陽菜に、茜は愚痴を吐露した。

陽菜は特に返答もせず、二人の仲睦まじさに微笑んだ。


そう、匠はホストを辞めることを茜から猛反対を受け続けることにしたのである。

茜は匠がホストを辞めるくらいなら私が一人で育てると言って、折れさせたらしい。

そう強引に言いながらも、やはり茜は匠の夢を諦めさせたくなかったようだ。



「茜ちゃん、今日お腹のエコーしたいんだけど処置室に来れる?」


その時、茜の部屋に回診で担当の産婦人科医が現れた。

同僚の気さくな女医である。


「ちょっと相方が来てからでもいいですか?」

「ええ。待ってるわね。」

「茜、私も行ってもいい?」

「いいわよ。」


陽菜はさすがに茜の様子にニヤニヤと笑ってしまい、怒られる前に病室から出た。

文句を言いながらも、二人はうまく行っているようだった。


そして匠が帰ってくると茜がナースステーションにある処置室に来たため、女医を呼び陽菜も付き添いした。


「元気だよ、赤ちゃん。胎動もう感じるでしょ?」

「はい、かなり痛いです。」


エコー画面に映る、胎児の動く様子に陽菜は安堵した。

匠も茜よりも興味津々に女医に胎児の様子を質問をして聞いていた。


「あ、性別分かっちゃったかも。茜ちゃん、聞く?」

「もちろん。」

「男の子。」


そして女医はまだ妊娠五ヶ月だというのに、性別を言い当てた。

茜は顔を綻ばせ、匠は目を丸くしていた。


「これは私に似たイケメンが産まれてくるわね。」

「茜に似た女の子よりはいっか…。」

「匠、それはどう言う意味よ?」


二人が小競り合いを始め、女医と陽菜は顔を見合わせて笑った。


「将来はホストかな?」

「「それは絶対だめ。」」 

「茜ちゃん、なんで?」


陽菜の揶揄いに二人は声を合わせて答えたが、匠は突っ込みを入れた。

また二人の喧嘩が始まりそうだ。


しかしもう余計な心配はいらないと、陽菜は思った。

例え辛い過去を持った二人でも、今は子供のことを一緒に考えている。

きっと二人ならこれから訪れるどんな困難も乗り越えられるだろうと感じた。



そして一ヶ月後。

午後四時、バーホワイトにて。


それからすぐに退院した茜は数週間自宅療養した後に、職場復帰してバリバリ働いている。

そんな茜は今日、開店前のバーを貸し切って匠とささやかな結婚式を挙げようとしていた。


「茜、すごく綺麗だよ。」

「白じゃなくて赤っていうのが私らしいでしょ。」


お互い仲の良い友人らニ十名ほどで行われた小さな結婚式だった。

陽菜は七海と一緒に茜の準備を手伝った。


茜は結婚式に純白なウエディングドレスよりも、大好きな赤色のドレスを選んだ。

それでもお腹の膨らみが強調され、どこか神聖な姿になった。


そんな茜の隣には白いタキシードに身を包んだ匠がいた。

本来なら黒の方が合いそうだが、匠は仕事柄黒のスーツばかり着ているので白を着たかったらしい。


「おめでとう~。」

「茜可愛いよー!!」


そして二人は共に入場し、バーマスターによる簡易的な挙式を終えて皆から祝福の喝采を受けた。


それからバーマスターが早々に潰れてしまい、圭が大忙しでキッチンとドリンクを回し陽菜が配膳を手伝っていた。

圭も陽菜も茜と匠とゆっくり話したかったが、いつでもそれはできるからと二人の裏方に達した。


そしてだんだん開店時間に迫る頃、バーカウンターに茜と匠が座り一息ついた。


「お二人さん、何飲む?」

「私オレンジジュース。」

「俺、水で…。」

「圭、私作るね。」


数時間ですっかり慣れた陽菜は疲弊している茜と匠にドリンクを出した。

匠は友人達からかなり飲まされていて、テーブルに突っ伏していた。


「二人ともありがとうね。匠から聞いたよ。私が倒れる日、四人で話し合おうとしていたって。」


茜はジュースに手をつける前に陽菜と圭に頭を下げて言った。


「まさか匠と結婚するなんて予想外だったけど。私、今すごく幸せだよ。」


そして茜は満面の笑みでそう言った。

陽菜と圭は肩を撫で下ろし、胸が熱くなった。


「なにかあったらまた二人に頼ってもいい?」

「もちろん。もう一人で抱え込んじゃダメだからね。」

「うん。私ずっと一人で生きてきたつもりだったけど、今回生死を彷徨ったときたくさんの人に助けられて。あぁ、私っていつも一人じゃなかったんだなって思ったよ。今はこの子もいてくれるし。」

「茜…。」


陽菜は目頭が熱くなり、茜も涙目になっていた。

陽菜はバーカウンターから手を出し茜の頭を優しく撫で、二人は微笑みあった。


陽菜は流れた涙に、これからたくさん茜と匠を支えていきたいと心に誓った。


そして茜と匠の祝福に包まれた結婚式は終わり、二人は喧嘩をしながらも愛を育み子供が産まれるのを心待ちに過ごしたのであった。



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