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felice〜彼氏なしアラサーですがバーテンダーと同居しています〜  作者: 櫻井 妃奈乃
第三夜 新しい命の灯火
14/35

とうとう四人で話し合う日。

お昼に陽菜は圭が選んでくれたカフェで初デートをしていた。

夕方のことを考えると落ち着かなかったが、圭と一緒にまったりできる時間はやはり幸福そのものだった。


そしてカフェで他愛もない話をしてのんびりしていると、陽菜の携帯に病棟から電話が来た。

陽菜はカフェを出て、外で電話を取った。


「山下さん、お休みのところごめんね。大事な話があって。」

「師長さん、どうされたんですか?」


電話の相手は病棟師長だった。

普段は冷静沈着としている師長が慌てている様子が電話から聞き取れた。


「志田さんが勤務中倒れて。下腹部からの大量出血で今集中治療室にいるの。これから緊急手術をするわ。志田さん今意識も朦朧としていて、誰も呼べる人がいないのよ。いつも仲の良い山下さんなら、誰か…その相手の男性とか知っているかなと思って。」

「わかりました。すぐ呼んで、私も行きます。」


陽菜は電話を切ると立ち尽くし、携帯を握っていた手が震えていた。

詳しい容態は聞かなかったが、経験上母子共に危ない産科危機的状況だということを理解していた。


陽菜は動悸がする胸を押さえながら、ふらふらとカフェへと戻った。

そんな陽菜の動転した様子にすぐに気付いた圭は席を立ち、陽菜の背中を摩った。


「はるちゃん大丈夫?」

「茜が…仕事中倒れて、母子ともに危ないって…。私これから病院に行くね。ごめん。」

「送って行くよ。匠くんには俺が連絡するから、荷物まとめて。」

「ありがとう。」


そして二人は急いでバイクを走らせ、病院に着くとちょうど入り口に匠がいて合流した。


「陽菜さん、俺…。」


匠は顔を真っ青にして動揺していた。

圭は送って行くだけの予定だったが動揺する二人を置いて行けず着いていき、三人は集中治療室の前に行った。


集中治療室では病棟師長が茜に付き添っており、陽菜たちの姿を見ると師長が現れ病状を話した。


茜は子宮頸管無力症による進行性流産を起こし、まもなく手術室で緊急シロッカー術を行うとのことだった。

陽菜達は手術待合室に移動し、何も話すことはなく両手を重ねて俯き、茜の手術の成功をひたすら願っていた。



そして数時間後、茜は手術を終え集中治療室に戻り、陽菜と匠に主治医から話があった。

手術は成功、迅速な処置のかいがあり奇跡的に母子ともに命は助かり、茜も容体が安定してきたようだった。


「良かった。本当に良かった。」

「先生ありがとうございます。」


匠を初め陽菜も涙を流し、茜と胎児に起きた奇跡に歓喜した。



匠は主治医からの話が終わっても、控室でずっと涙を流していた。

陽菜から茜の容体を聞いた圭も安堵し、匠の背中を摩り、三人は感動を味わっていた。


そして夕方過ぎに、茜との面会が許された。

茜はまだ酸素を吸っていたが意識は戻っており、三人の姿を見て瞼には涙が溢れていた。


「心配かけたよね。ごめんね。」

「茜と赤ちゃんが助かって本当に良かった。」


茜の姿に安堵した匠は、止まらない涙を浮かべたままベッドサイドの手すりを支えに崩れ落ちた。


「あんたそんなんじゃ、これから仕事いけないんじゃない?」


茜はそんな匠を叱咤激励し、いつもの調子を戻していた。

匠は溢れる涙を手で拭うと、まだ点滴を受けている茜の手を握って言った。


「仕事は休んだよ。俺にとって一番大切なのは茜と赤ちゃんだから。俺、ずっと茜のことが好きだったんだ。」

「匠…。」


大粒の涙を流しながら辿々しく言ったその匠の言葉に、茜の片目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

これから二人には積もる話があるだろうと、陽菜と圭は静かにその場を去った。


そして陽菜はまた明日ゆっくり茜と話せるからと、圭のバイクの後ろに乗りそのまま帰宅した。

数時間緊張していた疲労がどっときて、陽菜はゆっくりと揺れるバイクの後ろで圭の背中に頬を埋めた。


「二人、きっと俺たちがもう何も言わなくても上手くいくと思う。」


圭の暖かい温もりに眠気がさし居眠りしそうになった陽菜に、圭は呟くように言った。


「私もそう思う。そういえば、思い出したんだけど茜ってアルコール耐性が高くて本当に酔っ払ったところ見たことないんだよね。だから、赤ちゃんも決して望まないでできた子ではなかったと思うんだ。」

「そっか。俺たちは二人を見守ろう。」

「うん。圭、今日は隣にいてくれてありがとう。」


陽菜はそう言うと、抱きしめるように圭の腰に手を回した。

ちょうど交差点でバイクは止まっており、その陽菜の手に圭の手が重なった。


「俺も今日、一緒にいれて良かったよ。」


そんな圭の一言に陽菜は胸が暖かくなり、そのまま圭の温もりに浸った。

いつも側にいてくれる圭の存在の大きさを実感した一日であった。

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