イスガルと人外と2
「次はこっちね!」
「あっ!あれもいいんじゃないですか?」
「・・・うん、ソウダネ。」
屋台から屋台へ商店から商店へ時には高級なガラス製の棚越しに時には適当に並べられた剥き出しの様々な宝飾品達を物色して行く。
既に百を超えたようなまだ十も行っていないような、男にとってどの商店も露天も代わり映えしないように見える品々を飽きもせず放っておけば永遠に見ているのではないかという長きにわたる待ち時間、女性の買い物を待つ側という男なら誰しも経験があるその時間感覚と商品の違いがわかりにくいが故のつまらなさ、久方ぶりのその感覚に鎧越しにはわからないであろう苦笑いが滲み出てしまう。
本当にしみじみと思うし、女性は買い物好きというのを久しく思い出させられる。
みんなデパートに行けば一階から全て舐るように見て行くし、今のように屋台やらなんやらでていればその全てを網羅せんとばかりに丁寧に丁寧に商品を見て行く。
「うふふふ」
「あははは」
しかしてその姿はあまりに楽しそうで美少女と美女が並んで笑っていればとりあえず店をはしごしても許せてしまうのだから男というのは単純だ。
気がつけば朝方についた筈であるというのに夕方近くなっているというのは買い物あるあるなのではないだろうか?
「えへへ〜」
「・・・」にや
しかして時を忘れても目的は忘れない、今回の目的はこのわがまま娘二人とアーサーちゃんへの贈り物、そして恐らくせびられるのでアリスとトオカとミッシェル、大穴でマリア用の宝飾品や所謂お土産用の御守りなどなどは既に買取済みであった。
山田にはジパンと呼ばれるこの世界で知られている範囲では最東端の島国に有る似非日本文化的なナニカが発達した国から来た髪留め用の櫛と何やら異様な気配のするふた振り一組の太刀と小太刀を贈った。
というか武器として使えるレベルの技術によって作られた刀というのはこの世界に来て初めて見たかもしれない、何せ山田も正義君も武器として使ってはいたし山田はいまも使ってるが迷宮産だからね、『人の手で作られた刀剣として』は見るのが初めてなのだ。
因みに製法は不明な上ジパンでしか造られていないらしい…此処から船で一年以上かかるが行く予定ではある。泳いだ方が早いかな?
ホーエンハイムには・・・なんと言えばいいんだろうか?エキゾチックなと言えばかなりぼやけるがかと言ってどんな国の様式のどのようなものかと言われると言葉に窮する。
贈ったものは髪飾りでピンに銀線でできた繊細な模様を持つ花のような台座の中央に珊瑚かナニカが球形に形成され嵌め込まれているかのような物が載った銀細工と何故か欲しいと言われた踊り子の服だ。
いや、踊り子に失礼なので言っておくとほぼネグリジェのようなスケスケなアレである。
買う時に一人で店に入らざる得ず、店員さんに冷ややかな目で見られたのはおっさんとして一人の男として泣きそうであった。
「ううむ、財布が軽い…」
俺は財布を撫でつつ当たり前の結果を言った。何せ殆ど交易品だし、ジパンのものに至っては真面目に王国金貨レベルの値段で色々噴き出しそうになった。
あと地味にネグリジェの値段もいい感じだったし、風間とミゼール以外の全員に二品ほどずつ買ったので合計はあまり考えたくない、そもそも俺の鎧や武器の修理強化もだがアリスと風間の装備も結構した。
ホーエンハイムの護衛で金は入るが少し金策を考えないといけないかもしれない。
沈みゆく太陽を眺めつつ俺は一人で手紙と言う名の定期連絡を送付する為にギルドに赴くのであった。
「こんばんは、どのようなご用件でしょうか?『月光の騎士』ヒミツ様。」
「・・・何故此処にいるんです?リリゼットさん?」
何の気なしに入った受付で聞き覚えのある声がしたのでそんなわけねえだろと顔を上げるとそこにいたのはチェルシーの母親で冒険者ギルド王国本部秘書兼ギルド監査官総長リリゼットさんであった。
「えへへ、私もいるよ!ヒミツ!」
「チェルシーもか」
いや、まあ、百歩譲って二人が一緒にいるのはいいのだ。俺が出発するまで一週間あったわけだし、超級冒険者である二人が王都から最東端まで1日2日でこれるのもいいのだ。問題は…
「なんで受付に?」
「特に意味はないわね、一応ギルド監査官としてそろそろ冒険者ギルド総本部に帰還しないといけないといけないとか、そのついでにチェルシーにちょっと稽古をつけてあげようと思ったからヒミツ君の先回りをして驚かせようとか思ってないわ。」
「なるほど。まあ深くは聞きませんよ・・・手紙と書類、一応竜種の討伐をしたので証拠の逆鱗、あとアーサーへのお土産と焼き菓子です。逆鱗については討伐証明と街道に竜種がいたと言う証明に、手紙とかそこらへんはギルドの宅急便で送ってください、代金はこれで足りるはずです。」
何故か自慢げに自白してくれたリリゼットさん、しかし普段は簡潔に喋るリリゼットさんがダラダラと喋ると言うことはナニカ面倒なことがあるに違いない、俺は要件を言って代金と包装された小包を渡し外に…
「『気力解放』『鬼人化』!」
「『魔力凍結』」
「ばっ!?」
いけませんでした。魔力凍結は氷系かと思いきや空間系の大魔法で魔力の動きを一定時間一定範囲で止めてしまうと言う魔法使い殺しな魔法、そしてチェルシーが真っ赤に燃え上がっているかのように赤いオーラを纏い物理限界を超えてギルドの床を粉砕しながら俺に組みついて来た。
きっちりと関節が決まっており動けないが魔力による強化がないので加護による身体強化と生命力の強化によるゴリ押しで逃げることも可能、しかし装備が破損する可能性を考えやめる。
「えーっと、なんですか?」
「いいえ?特に意味は、強いて言うなら超級冒険者である貴方に指名依頼が来ていると言うだけです。」
・・・今回はまずった。しゃべっている途中で魔力が動いたのはわかったがまさか最初から完成していたとは・・・さすがおばさ「お姉さんよ?」氷の女王様である。
「まあ、そんな大層な依頼じゃないわよ、ちょっと…チェルシーと殺りあって欲しいだけよ。」
「よろしくね!ヒミツ!」
つまり訓練相手の確保がしたいだけらしい・・・
「いや、普通に最初からそう言ってくださいよ!」
「うふふふ…」
因みにチェルシーの戦闘力チェック、つまりギルドの監査官として冒険者の質を確かめると言う事務として片付けられるらしいので給金はないらしい…トホホ。




