でっぱつしんこー
燃えるような朝日と清々しい朝に響く爽やかな小動物たちのさえずりや同じく爽やかな住人たちの朝の挨拶などは無く人工的な光と夜の群衆の持つ心地よくない類の喧騒ともいうべき音が俺たちの旅立ちを祝福してくれている。
王都の東から出る正門よりは小さな門の外には俺、風間、アリス、謎の美少女、山田が並び王都での生活や思い出を思い出し俺は碌な事がなかったと顔をしかめアリスと風間は青くなり、山田と謎の美少女はニコニコとしていた。
「装備はきちんと装備したか?」
今回の旅に先だちパーティー申請をしたため俺はリーダーになってしまった。まあ、もともと風間とアリスの雇い主という立場上傭兵の不始末は俺の不始末である。気をつける事が増えただけだ。
「はい。」
相変わらず元気がいいような悪いような風間、そういえばというか今更だが彼は転生時に神様とあっている系転生者だった。更に彼の特典がかなり強そうでいてそれでいてイマイチなものであった。
『銃精製』『弾薬精製』『隠密』
字ズラから判断する限り立派なチートなのだが残念ながら彼のソレは残念チート、外れチートと言われるものだった。
ステータスとかレベル、スキル制の世界だったなら最高だったかもしれないが残念ながらこの世界にスキルなどなくレベルなど勿論ない、一応山田の神眼によってステータスらしいものが見えるがそれはどうやら山田を基準に何倍か、と言うものらしく見る相手によっては小数点の場合もあるし大まかにその人物がしてきたことやできる事がわかるだけで素質などは全くわからない。
先ず、メインであろう銃器系の特典だが、これはかなり良チートで銃や弾丸に類するものの知識を深層意識に刻み込まれ材料と魔力を消費して実物を作り出す事ができる。
しかし当然ながら銃器系の中に魔法の付与されたものはないし、その他異世界チートあるあるな魔法弾や属性弾等の製作は不可能、錬金術のようで違う別の何かによって作られているためそれ自体を加工するのは不可能なので魔物相手には豆鉄砲もいいところである。
唯一いいところは魔力を通して使えば威力が多少上がる事と、付属品の知識も入っているためサプレッサーやライト、スコープも作れると言う事だ。
「ま、使わないけどね。」
何せ俺が魔法を使った方が早いし明るいし自在にコントロール出来るからな。
次に隠密なんだが・・・これが最悪だ。コレ実は隠密に関する知識や魔法が授けられるだけで動きの補助や魔力消費で都合よく隠密が出来るようになるとかなどが一切なく、頭に知識があるだけなのだ。
いや、本当にそれだけなのだ。一応忍者であるという勇者服部くんに稽古をつけてもらったが基礎的な部分が足りない上に暗殺者としても遠距離から商人や村長をを撃ち殺す程度の仕事しかしていなかった彼の経験値ではどうにも知識を実行するのは不可能らしい、宝の持ち腐れというやつだ。
さて、残念ながら風間くんしか返事がなかったため後ろを振り返るとなかなか前に進めない二人組がいる。
「うう…はずかしいよぅ。」
「いいじゃないですかアリスさん!私なんてただの拘束具ですし。」
「バカ言え、俺みたいになりたいって言ったのはお前だろうが…」
装備を装備しているがまだ慣れていないからか、それとも羞恥心を捨てきれていないからか特注の黒い認識阻害用の外套をギュッと掴むアリス、そして機能的な意味ではある意味この中で最低レベルの全身に重りじみた鎧をつけた山田だ。
亀じみたゆっくりとした歩みを見せる山田と顔を真っ赤にしてジリジリと動くアリス、いざとなった時1番動きが早いのアリスだろうが山田はもう少し訓練を続けなければならないだろう。
山田は俺の弟子という事で意地でも付いてくると言ってつい昨日俺に絡んできたため仕方なく連れてくることにした。装備は俺の昔使っていた全身鎧の大幅改造版で武者風になっている。
仕組みという程のものはなく。見た目通りの防御力とそれ以上の重量があるだけの訓練用鎧だ。
魔力回転による身体強化と地の肉体の強化が求められる。
俺も冒険者になって酒で作った資金を溶かして最初に作った防具をわざわざ影から引っ張り出してくる羽目になるとは思わなかったが、最初作った時、つまり俺が一桁くらいだった時に中を魔力で満たしてロボットみたいな感じで動かしていたのに比べれば全然普通に動けている彼女を見てちょっとすごいと思ったのは内緒である。
アリスの方は・・・まぁ今の状態を一言で言えば真っ黒いてるてる坊主である。中の際どい水着のような防具と二本の白と黒の大短剣と影の神の神器の劣化版である真紅の大短剣二本は全く見えない。
「ふふ、じゃあお父様は私を装備してくれるのかしら?」
「フゥ〜、ヒミツは変態だなぁ!」
「黙れミゼール、あとトオカは人間の姿の時はできるだけそういう発言はやめて、俺が社会的に死んでしまうあから。」
そして謎の美少女、まぁ大方の予想通りゴスロリ姿のつるぺたな剣の精霊であり俺とニャルラトホテップそして月の魔力の合いの子トオカである。
さて、今回はこの5人と使い魔三体の合計8人で東の学園都市を目指すのだが、それに当たって依頼を受けている。
「どうも、よろしく!マイダーリン?」
「よ、ホーエンハイム、言っとくがまだ未婚だからな?それにアーサー「ふふっ、この旅の間に既成事実を作ってしまえば私の勝ちなのだからもう結婚したも同然じゃん?」・・・大丈夫かなぁ。」
「ダメだ!」「駄目だ!」「上からくるぞ!」「行くぞ!遊○!」「デゥエル!スタンバイ!」
・・・出だしから俺の心はボドボドだが、超一流の錬金術師にして不老不死のホーエンハイムの護衛が俺たちの受けた依頼だ。
どうやらあちらで何かのイベントに参加するそうだが一体何のイベントかは知らされていないし知る必要もない、何故なら俺たちの仕事は飽くまで東の学園都市までこのクレイジーでマッドな天災錬金術師をおくり届けるだけだからな。
「そしてその間に生まれる愛!」
「・・・愛はあるが時期じゃないと俺は一体何度言い訳じみたこのセリフを言わねばならないんだ。」
「おっくせんまん!おっくせんまん!」
「逆に考えるんだ。受け入れちゃってもいいさ。と」
ミゼールと山田がホーエンハイムに共鳴というか外界の汚染のままにネタの走っていてツッコミすら出来ないが、俺はさっさと馬車を影から出し、タヌキチの一部を馬形にしてもらって御者なしで走れるようタヌキチと知識共有をする。
「マリア。」
「わかりました御者のフリ、ですね?」
「もっとはじけよーぜー?」
「マンメンミ!」
「こうなったらイカ型の素体を作るしかなイカ!」
・・・置いていこうかな?
こうして多少の不安と不安と不安を乗せたヒミツとその愉快な仲間たちは一路東へ向かうのだった。




