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いい加減装備を作ろう!


「というわけで事情は聞いたがよくわからん、今はサクッと装備を作ろう。」


「さんせー。」


「むしろそれしか選択肢なくないですか?」


「で?どうすんだ?」


三者三様の反応だが概ね賛成らしい。とりあえず俺はいつも通り素材を提供するだけだ。


「そう言えばガーランドおじさん、グラムはどこにあるの?」


いたって普通に聞いている様に見えるがガーランドとアリスのやり取りは何処かぎこちない、しかも聞いているのがただの剣の所在で無く自分の母親が練りこまれた剣だというところもヤヴァイ。


「ああ、グラムは今東の学園国家にあるはずだ。そこのグラハムの親戚の家に引き取られた。」


「なるほど〜、早く行きたいね!」


目からハイライトが消えていてとっても病んでるので早くなんとかしたいがトオカの体ができるまでは出発できないのだ。スマソ。


しかも今の空間掌握能力と次元の裏や異界への警戒心が高い状態になってようやく気づいたが彼女の持つ白と黒の大きめの短剣、改めて解析した結果かぎりなく聖剣に近い魔剣以上の何かであると同時に誰かの魂を感じる。もしや・・・いや、できすぎか?だがガーランドの話では爆心地に最後までいたのはアリスだけだ。

まあない話ではないしあの短剣の性能はおおよそ魔剣というには異質すぎるし魔法具の類であるとかたずけられないものがあったのだ。今更気にしてはいけない。



「んで、ヒミツ、お前さんはこの二人の装備を作りにきたんだったな。」


「ああ、素材は相変わらずこっち持ちで最速で最高の仕事を頼む。」


まぁ、アリスやガーランドの過去や、風間とアリスのつながりなどはおいおいなんとかしていけばいいし、結局のところこの王都で最高の仕事をしてくれるのはこの工房だと誰もが口を揃える。職人であれば、そして工房長である剛毅のガーランドなら当人同士の問題くらい乗り越えて超一流のモノを仕上げてくれると信じている。


蓄えられた顎髭を伸ばす様に顎に当てた手で扱きながら弟子たちの採寸結果やいつの間に知られていたのか彼らの戦闘スタイルまでおおよそ装備作成に必要な書類群に目を通したガーランドは頭をかく。


「俺の本業は鍛治師なんだよなぁ…」


「まあそれはそうか。」


遠距離攻撃と軽い護身用の近接戦闘をする風間と短剣の二刀流と四刀流を使う回避主体の速さ重視な軽装暗殺者であるアリス、その両方に必要な能力を強化するのなら最も必要なのは鍛治師では無く革を主な素材とする革細工や裁縫、またそれに魔法を封じ込める際必要になるのは魔法具の職人では無く錬金術師や付与術師、工房長であるガーランドは超一流の付与術と革細工、金属細工の腕を持つがどうしても手が回らないところが多過ぎる。


「ま、色々言いたいことはあるがいいだろう。とりあえず仮組みして見て付与する能力や魔法を大まかに決める。素材についてはヒミツが死ぬほど持ってるだろうから・・・まぁ、なんとかなるだろう。」


工房長である彼の真の姿は鍛治師というよりも工房という一つの職人達の集合体を指揮することだ。

響く怒号をさらに大きな自分の声でかき消し、金と未知の素材そしてそれを依頼してきた一流であるもしくは見込みある者達、つまり依頼者達までも利用してバラバラな職人達を工房という集合体に変えていく。


「モーゼスはとりあえずこの毛皮をなんとかしてくれ、ケリィは超高位の魔法儀式申請をしてこい!今すぐな!・・・」


「ううむ、いいねぇ。」


「一体感ありますね。」


「流石大工房だね!」


瞬く間にものが運ばれ加工され、寸法通りの試着が出来上がった。驚きの速さだが試着はあり合わせの素材と既製品の組み合わせ、ぶっちゃけて言えばハリボテだが着心地や物理的な機能面はこの状態から修正して完成になるので着用者の意見を聞くことになっている。

もちろん俺も最初この鎧を作ってもらう時にはやってもらったが・・・まぁそもそも使い方が邪道だったために、その内容や機能面での話し合いはあまりにも普通の装備作成とは違ったのをよく覚えている。


「さて、仕事が早く、正確なのがこの工房の売りな訳だが…まじか。」


風間とアリス合わせて二着とも試作品はできていた様だが緑色の風間の試着であろう外套と一体化したポケットなどの収納が多い皮鎧の様な、それでいて厚手のタイツの様な、ぴったりと体にフィットしそうな装備ともう一つを見た時ガーランドの顔が盛大に引き攣った。


「・・・とりあえずカウンターに座れ、なに長くはならねえよ。」


俺は風間とアリスの二人だけをいつも目に入れてはいたがイマイチ存在意義の分からなかった木製のカウンターに座らせ、ガーランドがその反対に風間達の向かいに座るのを見てようやくこのカウンターの存在意義がわかった。


「よし、じゃあまず小僧の方からだが・・・着てみるか?」


「はい!」


試着室で軽く試着、出てきた彼を見て俺はスニーキングスーツと野戦服を足して二で割ったみたいな装備を着たス○ーク的なモノを思い浮かべた。


「待たせ「それはきっとアウトかな。」・・・いいじゃないですか!ふざけても!」


辞めるのだ世界の抑止力に殺されたくはないだろう?


ま、おふざけはこの辺にしておいて、着心地やポケットなどの位置については特に文句はないらしい、強いて言えば筋力強化などの付与と急所や膝、肘など武器の関係上接地することが多い場所や致命傷を防ぐために多少重量を増やしてでも金属板をつけてほしいという要望を出す風間だったが、筋力付与は自分で鍛えて確保しろと突っぱねられ、金属板は多少強化魔法や隠蔽系魔法の威力が下がるのを覚悟の上でつけることになりすんなりとスムーズに進んだ。


そして、ガーランドの顔が引き攣ったアリスの番になる。

風間の試着品が下げられガーランドの手に残ったのは・・・


「ビキニアーマー、だとぅ?」


「えぇ…」


「俺だって親友の娘に薦めたいような装備じゃねえよ!」


様々反応が出る中アリスはというと…


「ふふふふふふひひひ…」


すごい顔で真っ赤になりつつきれていた。認識するまでもなく彼女から撒き散らされるさっきと魔力によって周囲の温度が急激に低下する的な意味で変化する。


・・・だが、ぶっちゃけて言えばこれはかなり合理的かつ素材的に余裕があるがゆえに生まれた最強の魔法剣士用の装備である。

何せ布や革がなんであれ所謂匠と言われる人間が素材を慎重に扱って、超一流の加工をして渾身の作品を作り上げたとしても魔力的、魔法的な強化力はどうしても落ちる。

しかも魔法でなく純粋な魔力を出力して四刀流などをするアリスにとっては服というのはこの上なく邪魔な物なのだ。

実際には装備に魔力を吸わせて装備に付与された能力を発動させているため気になっていないし、俺の場合個人使用など烏滸がましいレベルの超希少素材を何百年んか生きてるらしい錬金術師に加工してもらい、それを超膨大な、有り体に言えば普通のやり方で普通の人間には出力できない魔力によってぶん回してようやく魔力の増幅という荒技を可能にしているので分配くらいしか調整していないが、実際に金属鎧は革や布よりも何倍も魔法強化の効率が悪いのでアリスには向いていない、そうなれば単純な話になって来る。


つまり、布面積、装備品の面積が減れば装備は軽くなるし、彼女の魔力もほぼ減少せずに外に出せる。強いて問題を挙げるとするならそのわずかな面積の装備にいかにして防御力を持たせるかであるが、そこは素材と職人技でゴリ押しである。


「グギギギギ…合理的なのはよくわかったけど!女の子にこれは、これはぁぁ!」



様々な議論がなされ、アリス自身の希望によって認識阻害全振りの外套をこの水着めいた超技術の結晶上から着用し、四刀流などの本気モードの時だけ外套を外すということに決定した。


「ふふっ、お嫁にいけなくなったらガーランドをぶち殺して、雇い主さんに責任を取ってもらうから!」


「おおう。」


「何故俺、いや、まあ、わかるんだが・・・防具の恨みで殺される筋合いは「それとも今…」あー、あー何も言ってないな!うん!」


どうにかいつもの砕けた雰囲気になったこの混沌とした店内で俺は一人トオカの体が出来るまでの五日の間でどのようにして彼女らの精神を強固にし、如何にSAN値直葬されないかの訓練をつけようか、おそらくとても悪い顔で計画を立ているのだった。

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