昔々
やはり誤字や脱字のチェックもしないといけないですな、政権とか色々誤字が多すぎて自分でも笑ってしまいました。
だが、この量を一人で直せる気がしないのでとりあえず前に進みます。はい。
「あれは今から何年まえだっただろうか、俺にとってはつい昨日のようにも思えるが大きくなったアリスをあいつの娘を見れば確かに時は流れているのだと実感する。
考えて見ればそれはあまりにも無謀な挑戦で、工房長と言う立場にある俺としては止めたほうがよかったのかもしれないし、今、その結果を知っている身としては何故止めなかったのかが不思議なくらいだ。
なんて事のない日常が崩れたのは彼奴が、グラハムが『聖剣』に魅了されちまったことから始まったんだ。」
そうやって妙に詩的に話すのは剛毅のガーランドとまで呼ばれた筋骨隆々3メートル越えの巨人、違和感も大きいがそれ以上に彼は悲しみを湛えていた。
「人工的に聖剣を、神器を作ろうとしたって事か?」
「ああ、そう言う事だ。だがそれ自体は何の問題もない、鍛冶屋名乗ってる奴らなんて大体はそこに行きつきたい阿呆ばかりさ。」
そう言って自嘲気味ながら笑う。
現状人間がその短い生の間に聖剣や神器を創り出したという話は聞かないが、聖剣にとても近付いた魔剣、劣化聖剣にまでなら到達した人類はチラホラといる。
ガーランドの鍛え上げたアンサラーなんかその最たるもので持っているだけで少しだが動きが最適化される。ガーランド自身も俺がこの剣を提げているのを見るとニヤリと満足げに口を緩ませる程度には良い出来だと思ったのだろう。
だが、聖剣に近いレベルの能力があるとはいっても持ち主の魔力を消費して使う事になる物は総じて魔剣、魔具と呼ばれ逆に魔力を生み出し有るだけで持ち主を強化するのを聖剣、神器で有るとされ人間の手だけで作られた聖剣や神器は歴史上一度として存在していないのだ。
だが・・・魔力を生み出すという機構について多くの学者は口を閉ざす。何故なら魔力というものについて正解で有ると断言できる説明ができる者は誰もいないからであり、強いていうなら生きている魔物や人間がその機構を備え魔法を使い魔力を操作しているとされる。つまり・・・
「いいか?続けるぞ。」
そう言って俺に話を聞く様に注意を呼びかけるガーランドの顔色はどんどん悪くなっている。
「ああ、お願いする。」
そして俺は何となくだがその『事故』という名の狂気的発想を想像できてしまった。
「あいつは天才的な鍛治師であると同時に魔法使いであり、錬金術師だった。あの嬢ちゃん、アリス嬢も生まれながらに天才的な魔力操作を身につけていた。だがやつが追い求めているのは誰にでも使える聖剣、魔力操作に長けたものだけの特注品としての魔剣はすでに聖剣の域に届いていたんだ。」
そう言えば聞いたことがある。人造魔剣の極致と呼ばれる一振りを確かメダロックの下位互換の様な能力だったがその切れ味や頑強さはいかなる魔剣をも凌駕すると言う。銘は確か・・・
「魔剣『グラム』自身の名の一部と伝説上の魔剣をかけた名を持つその剣は今もなを奴の魔剣職人としての技量を轟かせている。そして、同時にそれがあいつの心をおかしくした。」
「どう言うことだ?」
鍛治師じゃないからなのか、俺にはそれが良いことの様に聞こえる。少なくとも魔剣の極致と言われ最も聖剣に近いとまで謳われたのだから次作ればさらに聖剣に近づくことが出来るはず…
「・・・その魔剣ができたときな、あいつの妻マリーが変死してんだよ。」
「まさか!?」
「そうだ。あいつは・・・剣に自分の妻を、人間を練り込みやがった。」
そう言ってガーランドは立ち上がる。俺の剣が全て打ち終わった様だ。だが…
「残ったのは最愛の妻を自身の狂気のために剣に練りこんだ男とその最愛の妻に良く似た生き写しの様な娘、妻は魔力操作に長けてはいなかったが娘や自分の様に魔力操作に長けていれば・・・或いは、と考えたんだろう。俺はようやくそこで奴の持つ聖剣への異常な執着と狂気をかぎとり、アリスを教会に無理やりにでも狂っちまったグラハムから離したんだ。
そして最悪な事にやつはアリスの目の前で自分の身を練りこんだ魔剣を作ろうとして失敗、職人街の一部を吹き飛ばして死に、アリスはその間に・・・馬鹿だったんだな俺は、その教会は暗殺者ギルドと繋がってたんだ。爆心地に靴だけ残してアリスは影も形もなかった。」
「・・・・」
恐らく商人や職人のネットワークによって彼女の安否は確認できていたのだろうが、所在は暗殺者という日陰者である以上わからず、もう会うことも謝ることもできないと考えたんだろう。
今更だが彼のこの巨大な工房の1番奥、最も新しい建て替えられたのであろう建物の裏に小さな墓標があったのを思い出した。
「情けねえよな、この剛毅のガーランドが親友の娘の一人も助けられず、人の闇も見抜けず、全く間抜けなもんだぜ。」
初めて彼を紹介された時を思い出す。
その時の彼は異常に魔剣に凝っており今でこそアンサラーという神の権能じみたものを持つ魔剣を作ったが、当時は誰か別の人物の真似をして自分のスタイルに合わない武具ばかり作っていた。
「さ、奴らの寸法も測り終えたらしい、さっさと仕事を始めるかな。」
俺は何も言わずカラ元気を出すガーランドの武器を陰にしまい精神安定作用のある蒸気を出す聖布に包まれた筒を渡す。
それを見て仕組みを見ただけで理解しその効能を見て複雑な表情をした彼の気持ちは前世でも今世でも滅茶苦茶やってきた俺には計り知れないものだった。
「ありがとな。」
「いいよ、情けないジジイは見てて情けなくなるからな。」
少しだけだが彼の表情が良くなり、俺は凄まじい勢いで横殴りされた。
「それはそうと・・・今回もむちゃしてくれたみてぇじゃねぇか?ああ゛?」
「えー、元気ないんじゃんかったのー。」
「それはそれ、これはこれだ。とりあえず、もう一発だぁ、ゴルァあああ!」
すでに恒例となっている鉄拳制裁のキレは相変わらずだった。




