運命の時(怒)
「アーサーちゃん、痛いんだけど・・・」
「どうして!あなたは!こう言う時だけ動くのが異様に早いんですか!?」
180を越えそうなその長身で170くらいの俺をアイアンクローで持ち上げるとか、辞めてくだいさいしんでしまいます。
現在、俺は影伝いに動くことで誰よりも早く現地に到達したはいいものの超超遠距離からの完璧な投げ槍とそれにマーリンがかけた魔法によって磔に拘束され、次の瞬間俺の目の前に立っていたアーサーちゃんといつの間にか俺の肩を掴み一緒に影伝いに移動してきたジャンヌ、山田そして遅れて炎の柱から小夜によって勝手に進んでいかないように拘束され直した。
その後キングベひンもすに乗ってやってきたブロント、何故かバイクを乗り回す神凪君、などなどが続々と到着しいつの間にか昼になっていた。
「今回の依頼、一応即席だけどパーティー組んだじゃない?ねぇ?この前の騒動の時も思ったけどあんた一応リーダーなんだから指示くらい出して行きなさいよ?」
アイアンクローが終わり去り際に「知らないところで傷つかれるのは嫌なんです。」というアーサーちゃんの可愛い発言で気力が回復したところに、続けざまに俺を襲ったのは凄まじい怒気を纏う我らが重量系殴打聖女、ジャンヌだった。
ゴキゴキと巨大な重りのような巨大な盾のようなのようなガントレットの上からも聞こえる指の鳴る音は恐怖感を煽ってくるが、責任者としての問題点やその他色々、衛兵を辞めて旅人になったために投げやりというか責任感とかをフライアウェイさせていたおじさんの身に染みるありがたい説教を食らいつつ、改めて今回の依頼内容と此処で得られた情報を整理する。
とりあえず前提としてだが、今回の相手は迷宮を媒介に出てきた邪神、ティンダロスであり、ティンダロスという概念である。
どうやら鋭角と尖った時間が支配する領域は迷宮内のみに制限されており、今回の戦いに失敗しなければこの世界に鋭角から飛び出てくるわんわんおは儀式でもしない限り出てこない、しかし逆に考えれば彼らには迷宮を広げる以外にこの世界に尖った時間の世界の法則を適用させる条件があるはずであり、それを潰すことでもこの世界の終わりは防げる。
月の神様的には今回のことは予想できていたらしいが言うと娯楽、もとい、俺の自堕落で健康的な旅人生活が始まってしまうことを危惧したらしいが、はぁ、余計なことを心配しおってからに…
それにしても、である。既に加護の内容で旧主との戦いを義務ずけられているとはいえそれに危機が共合わないと俺が本気で戦おうとしないと言うのをよくご存知でらっしゃる。
相手は仮想戦闘力がミゼールと同等程度だと考えるとあの頭のおかしい影の国のバグチートを倒すくらいの勢いが必要になってくるだろう。
「ぬ?そういえばスカアハ様は?」
《呼んだか?ヒミツ、今は生死の境をさまよって影の国に流れ着いたデインの叩き直しに忙しいんだが?》
・・・とても元気そうで安心しました。はい。
情報の整理が一向に進んでいない気がするがまあ、マーリンや神凪君と打ち合わせをすればなんとかなるだろう。後ついでに仔犬二匹の本性を今回初めて組んだアライアンスパーティーの主要人物に教えつつそういえば何故かいるブロントとジャンヌ二人に話を聞こう。
ただの村娘から超級冒険者、そして聖女として成り上がってきた彼女にはちょっとした。と言うか敬虔な神の使徒、まあ、実際には神への復讐者なのだが、には心に決めたことがある。
それは神と名のつくものの討滅、つまり神殺しと言うものに参加できる機会があるのならその全てに参加する。と言うものだ。
そしてあわよくば神殺しを敢行し復讐の糸口を見つけようとしているのだ。その点でいうと彼女にとってヒミツと言うのは頼りになる同僚とかそれ以上に神と名のつくものを殺しきった正真正銘の神殺しの狩人であり、神は殺せると言う確信を与えてくれた人物だった。
「・・・私、神様ってやつにどんな形であれば復讐したいのよ、そのためにはやっぱり神殺しって言うのは必要な段階だと思うのよね。」
そして、以前彼女の身の上話をした彼に『わざわざなんでこんなとこにきたのか』と聞かれれば、そう答えざる得なかった。
「へぇ、あいもかわらず難儀だなぁ。」
その気の抜けるような親戚のおじさん的な適当な返事にわずかな安心と、そして嫉妬を彼女は覚えていた。
肉体的な強度、魔力量、戦闘の技量、武器の扱いや技能の多さ、何よりその異常な精神性とおもて裏のある人間性、大凡凡庸な器用貧乏と言うべき素養の数々であり、特化型の彼女が彼を凌駕できてとこそれはリソース割り振りの上で当たり前の、それこそ火を見るよりも明らかな自明の理というやつである。
しかして彼はその強大なと言うにはあまりに凡人から離れすぎ、数多の人外じみた偉業を成した力は器用貧乏を万能型に昇華させ、特化型の人間を軽く凌駕する程度の攻防力を手に入れている。
しかもそれを旅をするためだけにつけたと言うのだから腹立たしい、そもそも才能や努力、運だってジャンヌとヒミツでは比べ物にならないほどの差があるはずなのだ。
勿論、自惚れでなく彼女の才気と努力と運はヒミツのそれを凌駕して余りある。
何が違うのかと言われればきっとそれが彼が転生者であると言うことなのであり、ヒミツの持つ唯一のアドバンテージであり、彼女が彼を追い越せない理由の一つなのだろう。
「ま、特に不利益のありそうな考えとかはない感じだよな?信じてるぜ?」
「言われなくても輪を乱すようなことはしないしできないわよ、騎士王の御前でそんなことできると思ってんの?」
そう言って今度はブロントに今回の招集に応じた理由を聞きに言ったヒミツを見送った彼女は、ふと彼が彼の周囲のあらゆる全てを信じていないのではないかという疑念に駆られた。そしてそれはある種確信と言えるまでに確かなことであると彼女の中で結論ずけられたが、きっとそれは当たり前で、世界を渡りあるこうなんていう物好きには必要な素養なのであろうとそっと心にしまった。
「ぬ?何故ここにきたか、だと?」
「ああ、聞けばかなり遠くで討伐依頼を受けてたらしいからな。」
ブロントは、いや、正確にはその中身である彼は目の前の男に投げかけられた質問に対し、明確な答えを持っていなかったが、強いていうならと口を開く。
「世界の大事だと聞かされたからには集まらざる得ないだろう?何か問題があったか?」
(こんなイベント出ないけりゃゲーマーの名折れだぜ!)
「おおう、なんとまともな理由だ。」
「そうか?」
(そうかなぁ?)
そう、何を隠そう彼は転生者、それもかなり特殊な類のものであるのだから、だが、この話が詳しくされるのはもっと先になることは確かだ。
何故なら今回の話には関係がないのだから。
一通り話を聞いて回り、犬の説明で固まる情けない超級冒険者の端くれ(ジャンヌ)や宮廷魔道士を捨て置いて、結局どうすればこの塔を、さらに言えばこの上か、それとも次元の狭間かにいるティンダロスを倒せるのか本格的に思案しはじめた。




