運命の時(笑)
とりあえずいつもの鎧と服を着込み武器の装備をして部屋をでる。
肩と頭にはいつの間にか黒い仔犬が載っておりマーリンに少々凝視され頭に王冠のようなアホ毛があるミゼールの方を少し撫でて訝しげに首をひねる。
どうやら看破できな上に解析もできないので困惑しているようだ。
「新しい使い魔だ。メスの方は機嫌が悪いから気をつけろよ?」
「・・・ま、そう言うならいいけど・・・なんかあったら責任とってね?」
俺は曖昧に手を振り了解の意を表し、それを見たマーリンはスッと振り向いてテクテクと歩いて行く。
その瞬間兜に高度な魔法操作によって生み出された超指向性の衝撃が乱打されるがその全てを相殺して平然と歩く。
ここでふと左腕じゃない方のタヌキチを思い出し瓶を取り出す。ウネウネと体の一部を伸ばして戯れてくるので元気なようだ。なぜ彼らそれを見たミゼールが目を剥いていたが気にしてはいけない、俺だってこいつから何故か竜の気配がするのかに着いて突っ込むかどうか迷っているのだし、なんだかんだそのうち猟犬の素材を食っていそうで軽くヘクトアイズという種族を超越しそうな勢いなので、もう好きにやらせるしかない。
でるように指示すると不定形の体がうねり黒い飛竜のような形でミゼールの居ない左肩に乗る。質量的に体を超圧縮しつつ自身に軽量化の魔法や浮遊の魔法、飛行の魔法を併用してようやく肩に乗れる重さになっているらしい、もう既に俺とガチバトルした時と同じような大きさになっているような気もするが、やはり、気にしてはいけないし彼が仲間であるうちはそんな心配をしても仕方がない・・・ま、そもそも契約魔法で使い魔契約をしているのだから否が応でも頭に彼ら使い魔の能力や現在の状態が流れてくる。
「仲良くしろよ?」
「わん!」
(はは!君らしい使い魔だね、ま、折角だし仲良くしとくさ。)
「・・・・」
(この変態が、この純粋な生き物を使って女性を・・・いえ、なんでもないです。)
「プルプル」
(コンゴトモ、ヨロシク。)
なかなか気が合いそうで良かった。あとキティさんは後で面談です。
案内されたのは城の近く貴族街一等地に佇む馬鹿みたいにデカイ屋敷、表札に佐藤とあるだけで残念感が増すこの魔法的に見ると完全に要塞化された魔法使いの工房である佐藤小夜の家、その地下である。
「久しぶり。」
「お久しぶりですね、ヒミツさん。私のクラスメイトに手を出したそうですね、ぶち殺してもいですか?」
なんか山田の件で凄まじい誤解が生まれて居た。そして完璧に宇宙的恐怖の代名詞とためが張れる超々高位の旧主、クトゥグアの力を完全に掌握ししかも神性を二つ同時に行使するというもはやそれは巫女というより神の使役者に他ならないのではないかと疑ってしまうような芸当を目のまで披露され、少々言葉を失う。
あ、天照大神はちょっと力が強すぎる為力を少々落として狐、九尾の狐のような形態を取ってから彼女に力を貸しているらしい・・・いや、それは多分だが神様の趣味だろう。と内心思ったが銀髪狐耳に黒肌モードはとても眼福だったのでよしとする。
とりあえずサクッと事情説明、小夜が話のわかる常識人で助かった。アーサーちゃんだったら昨日の焼き増しが街中で容赦無く起こるとこだった。
というか小夜もアーサーもだが、俺の居ない間に何が起きたのだろうか、というか俺が寝ている間から何か特訓でもして居たのだろうか?
というか、だ。
「微少女が遂に美少女にハイパー大変身したか。」
「そう言えばそうですね、認識阻害を自由にオンオフできるように訓練しました。おかげで冒険者ギルドでのあだ名が『傾国』とかに成りましたが。」
そう言って俺に見せるのは超級冒険者章、成る程、彼女も遂に人外の領域に達したわけだ。
「さ、ココです。」
中に入って早々沢山の勇者君たちが居たが何故か怯えられているのでとりあえず今はスルー、少々薄暗くじめっとしたようなイメージがある地下室に案内されるが流石日本人、空調管理外気と届いた快適空間だ。
少々大きなスペースの中央には巨大な術式、魔法陣が多層に重なった多重連結式の魔法陣がある。
「へぇ、元の位置に戻す魔法の応用か、魂や肉体がこちらに同化して居ない転移者ならではの帰り方だな、だが、これだとお前さんは帰れないんじゃないか?」
「・・・一瞬で見抜かれると悲しいですね、ていうか帰り方知ってたんじゃないんですか?」
術式理解と魔法使いとしての知識が導き出した答えにやや不服そうに答える小夜。
「ま、聞かれなかったからな。それに座標指定が重なりすぎて失敗する可能性があるから座標指定とか置換を無くして単純に元の時空間、元の世界線に戻る式・・・そうだなぁ、時空が歪みがちな迷宮からの帰還スクロールにある式を使ったほうがいいんじゃ無いか?
「・・・いや、本当私の苦労を一瞬で解決しないでくれません?」
そう言ってむくれる彼女だが、俺の言ったアイデアなど最後の最後最終調整の様なもので、その根幹たる次元の跳躍を含む異世界からの帰還魔法の術式を組んだ彼女ははっきり言って天才、それもとびきりのものであろう。
さらに彼女は才能に奢らずその知識や技術を深め特殊な体質であるはずの神降ろしの巫女の力を改良し完成させて行っているし、こちらの世界の魔法に造詣が深いというわけでもなかった彼女が転移魔法という点だけにおいてとは言え此処までの術式を完成させるに至ったと言うのは本当に凄まじい、いや、今の時代完全にオリジナルな魔法を持つ魔法使いなど希少種レベルであるのを考えればもはや異常とすら言える。
ひとしきり悩んで、ヒミツの指摘した修正をさらに幾つか改良して加え、軽くそこらへんの転がって居た紙束をその陣の上に投げ入れ魔力を通す。通常の転移ならこれが元の転がって居た位置に戻るのだが、これは完璧に元いた場所、時空間にそれを置き直す術式、つまり結果は・・・
「あ、」
「おっと、」
完璧に同じものが二つあると言う矛盾により紙束は引き合い衝突、パラドックスによる粒子化を経て消失した。
「うまく行き過ぎたか。」
「・・・完璧に時間まで合わせて調整すると危険ががありますね、此処はやはりスクロールのほうがよくできてますね、少々遅延が入っていることで同じものが存在しない様に調整されてました。」
そう言いつつさらに幾つか術式改良している小夜には悪いが、此処で彼女を一旦呼び止める。
「なぁ、今回は帰還する奴がいるかどうか最終確認して魔法陣を起動すんじゃなかったのか?」
「あ。」
そう言えばと言うか今思い出した。みたいな間抜けな顔をする小夜そして同時に邪悪な気配を感じて彼女を陣から引き剥がすと魔法陣は無数の鋭角の棘によって破壊された。
「・・・」
「あ、ああああ・・・・はぁ。」
どうやら彼女らにも事情を話す必要が出てきてしまった。
(ふふふ・・・勇者が魔王を倒すんだね!)
(英雄譚的ですね。)
(勿論!うちの主人様が勇者だね!)
頭いてぇ、しかしまあとりあえず凄まじく脱力した小夜と地下室から出て、小夜は勇者君たちへの説明、俺はマーリンを通じてアーサーとモードレッドに各地の転移施設や迷宮都市について、情報を集めるのであった。




