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放浪系騎士の様なナニカの冒険記的なサムシング  作者: 名状し難い魔王
鋭角には気を付けよう。刺さるしな!
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ギャグ空間という名のバトルシーン2


槍と剣という互いの力量がもろに出てしまう得物での斬り合い、取り回しに難がある長槍のそれを高速で振り回すアーサーにそんな隙があるとは思えないが、相手が人を越えているのならヒミツは人を辞めている。槍での突きの悉くを長剣を使って払い、いなし、時には変則的な柄での防御を敢行する。


「グッ!」


「甘い甘い!」


あの頃は聖剣という絶対的なアドバンテージがあったというのもあったが、ヒミツの驚異的なそして異常な成長速度に徐々に槍の間合いを潰されるアーサー、現状、ヒミツ得意の魔法は封じられている上聖剣の解放をしてはいるが加護や魔力によるゴリ押しなどもしていない、端的にこの状況を説明するなら、いま、ヒミツはアーサーに対し手心を加えている。


「喝!」


大きな踏み込み、アーサーの槍の間合いは完全に潰され純粋な身体能力と技術によって繰り出された震脚擬きはアーサーの足を崩し体制が重要な槍での戦闘において最も最悪な足が浮いた状態が生み出されてしまう。そして浮いた体にはいささか重い槍は鋭い踏み込みから放たれた長剣の横薙ぎで手から弾かれ、アーサーが再び地に足をつける頃にはその首にはそっとヒミツの長剣が突きつけられていた。


「すごい…」


山田の悔しさや至らなさが多量に含まれたひどくくらいつぶやきは距離と彼彼女らの間にある魔力同士の衝突によって生じる空気の震える音でかき消された。


アーサーは高揚していた。


「ふふっ。」


「うむ?負けず嫌いな常勝の王様が負けて笑うとは、珍しいものを見たな。」


吹き抜ける風は未だ土混じりで、二人だけが切り抜いたように身綺麗なままであった。


「いいえ、負けたのは悔しいですが初めて貴方が私という個人をハッキリと認識している気がして、何でしょうね、やはり嬉しいのでしょう。」


「おかしな事をいう、俺は女性とはきちんと向き合う方だ。」


アーサーはそれを聞いて男性というものがいかに女性の機微が分かっていないかというのを思い知らされたような気がして、それでもやはりこんな女々しい事を考えている自分がいるのが少しおかしい気がして、そして何より、いたずら好きな彼女は彼女の新しい切り札を切る時がきてそれが彼だというのがとても嬉しかった。


「では、本気で行きますよ。」



その言葉が聞こえるのが早いか、それともヒミツが後ろに吹っ飛ぶのが早いかまあ、どちらにしても結果としてヒミツは吹き飛んでいた。


「やはり幾多の戦場を駆けたこの姿・・・馴染みますね。」


「はは・・・マジかよ。」


単純な魔力量が向上しただけならまだしも、今の彼女は異様であった。ヒミツよりも高い身長と女性らしい体つきはヒミツの胸ほどの身長となり体は発展途上さを感じる寸胴な物に、しかしその力強さは比較にならない。


「久方ぶりですね・・・」


そう言って撫でるのはまるで太陽の光輝と月の美しさの化身とも言える黄金に輝く刀身と絶対的な勝利をもたらす魔法言語で刻み込まれた常勝の刻印、そう、それは、まるで彼女が無くしたあの・・・


「エクスカリバーだと!?」


「そうですよ?勿論、鞘もあります。マーリンやヴィヴィアン、ガイア様3人の力作です。」


あいも変わらず長くそれでいて美しい髪とそれを傷付ける事を阻む絶対の防御、マーリンの師でありアーサーに最も長く支えた『賢者マーリン』の術式の編み込まれた防御と言うものの最上位の一つ、概念防御の術式はヒミツの解析すらも防ぎ切る。


「なくしたものが帰ってきたのではないですよ。これは長い年月私の体を蝕んでいた聖剣とその鞘の術式の残滓から彼女たちが好意で組み上げてくれたいわば人工神器、ガイアにもヴィヴィアンにも感謝の念が尽きません。」


彼女はアーサー王は聖剣と鞘を携え、もう一度真っ直ぐと構える。


「もう一度いいますね、『本気で』行きますよ。」


口角が釣り上がるのを抑えられない、あの伝説に歌われた最強無敵の常勝王、アーサー・ペンドラゴンの限りなく全盛期に近いその姿と戦えるのだ。

前世でも少々戦いというものに没頭することが多かった俺だが、今世でも前世でも基本生きることに重点を置いていた。

しかし、このあらゆる騎士の憧れとも言える騎士王を前にして、俺はきっと歓喜している。まるで山田だな。


「ああ、分かった。」


ヒミツは全身鎧にロングソードと黒剣と言う最も使い古してきたそれ故に最も信用できる装備に再度換装、聖剣の魔力を全て身体能力と知覚能力の強化とアーカイブスとの接続を強めることに注ぐ。

加護の使用を徐々に開始、100パーセントでの運用は不可能だが、出力を落としての起動ならまだ何とかなる。

影を纏い、魔力と魔法を持って揺らめく蜃気楼の様な分身を複数生み出し影の次に適性の高い氷と炎を発生させ自身に付与、左腕のヘクトアイズと月の賢者の知識そして何よる日頃から魔法使用のための術式処理を自身の脳で行なっているヒミツのその全てを戦闘に特化させたまさに人外とも言えるその異形じみた姿はぱっと見もはや人間の形すら怪しほどになっている。



邪竜の時は修練が、邪神の時は自身の管理が、スカアハの時は時間が、それぞれ足りないものがそれなりに存在した。しかもそのどれも死んでしまえばそこで終いの死闘ばかり、どうしても生存や相手の解析に割かねばならないリソースがあった。


「はぁ!」


しかし今はどうであろうか、結界の維持は自分がしているとはいえ再生魔法の無意識下使用を切ってそこに差し込めば問題ない、死ぬ要素はないし、時間もある。修練やスペックの管理は終わりがないがしかし現状では完璧と言えるだろう。


踏み込み魔力を推進力に変換して突っ込むアーサーの耳にそれが聞こえたのは必然だった。何故なら彼は既に彼女の背後に移動しており、彼女の耳元で囁く様に言ったのだから。


「じゃあ、俺も本気を出させてもらうよ。」


「っ!!」


怪物じみた直感ですら一瞬対応が遅れた。あまりに速くあまりに気配がなさすぎた。


炎を揺らめかせ冷気を発し影の如く掴み難く相手だけを見つめその未来すら見切る彼は今、確実に本気だった。


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