幕間 ー1ー
(side.???)
竜という生き物に生まれついたことを不満に思ったことはないが、良くも悪くも〝番〟という相手に縛られる生態はどうなのだろうと眉を顰めたことはある。
おそらく竜として生まれついた者は誰であれ、一度は胸に抱く感情だろう。
出逢えないことは苦しい。
だが、出逢えることが幸せばかりとも限らない。
何故ならば、そこには必ず別離が存在するからだ。
千年を超える長い孤独を過ごすことと、至上の幸福を味わえるが、絶対にそれを手放さざるを得ない時を迎えることと。
果たして、どちらが耐え難いのか。
竜の数だけ答えがあって、竜の数だけ迷いがあろう。
いずれにしても、〝番〟が理由で狂う竜は多い。
誰とも分かち合うことのできない長い長い孤独に耐え兼ねて。
或いは、失くした愛の重さに蝕まれて。
竜は強い。
けれど、竜は脆い。
壊れるのはいつだって〝番〟のせいだ。
出逢えることと、出逢えないこと。どちらが良いのか、かつて自問した答えは自分なりに見つけた。
出逢わないことが幸せだったとは、決して思えない、と。
たとえ己の内に、どれほどの空洞を抱えることになろうとも。
胸に抱える珠玉がぴたりと重なり合うあの心地よさも、離れていても気配を感じるあの充足感も、出逢わなければ知り得なかった幸福だ。
何ひとつ忘れたりはしない。
どんな記憶も薄らいだりはしない。
ただ、今はもうどこにも手触りがないというだけで。
〝番〟という呪いがどれほど容赦なく、そしてどれほど残酷に世界を焼き尽くすのか。
壊れた竜だけが見る歪な世界は、案外とても、美しいものだ。




