幕間 ー3ー
(side.???)
人の娘はよく鏡を眺めるのだと聞いたことがあるが、竜はさほど容姿に頓着しないせいもあって鏡を見ることはあまりない。
鱗の艶や爪の鋭さ、牙の美しさには気を配るけれど、人の姿をした顔形にはあまり興味がないのだ。
だから自分がかつて最愛に向けていたのがどんな表情だったのか、自分ではまるでわからない。
だけど他人のことならば、よくわかる。
熱を帯びた眼差しに、柔らかく綻ぶ口元。一挙一動を見逃すまいと追いかける視線に、些細な危険すらも近づけまいと身構える動作に。
大切だと、愛おしいと、全力で叫んでいるのがよくわかる。
ならば簡単だ。
同じように笑ってみせればいい。
蕩けるような眼差しで、艶やかに、誘うように。
これで少しは軋むだろうか。
あやふやな関係に答えを見つけさせてやるつもりはない。
王よ。
不完全なままこの世界を背負うことだけがおまえの義務だったはず。
私は約束を忘れたことはない。
すべてをくれてやると言ったのは、不完全なおまえが不完全なままであり続けることへの幾許かの憐憫と、己の虚ろに通じるものを僅かに感じたせいだ。
抜け殻に成り果てたこの身以外、失うものなど何もない。だから全部、くれてやると言ったのだ。
それなのに……。
鳴るのだろうか。運命の音は。
ああ、きっと鳴るのだろう。
おまえの欠片の在処に気づいたそのとき。
それはきっと鳴るのだろう。
遠く離れていても伝わる愛の唄は、私の唄は。
あの日、あの場所で永遠に途絶えてしまったというのに。




