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十八話

「レディース、エーンドゥ、ジェントルマン! お集まりの皆さん。大変長らくお待たせしました。これより『最強の魔術師』の称号をかけた魔術試験を行います!」


 空気を震わせて、円形の闘技場に響く声。


「実況と解説はワタクシ、幻奏の魔術師ジョビー・キャロルが担当させてもらいます」


 キャシーが座る観戦席から右側の方で、周囲よりも開けたビップ席の下側、ジョビー・キャロルと名乗る司会が魔法陣を広げた杖に声を当てて話す。


 周囲は呼応えない拍手で彼を称えた。


 ジョビー・キャロルは深々とあちこちにお辞儀をした後、軽快なトークと共にこの魔術試験について話出す。


「えぇ、皆様もすでにご存知のことでしょうが、一月前、最強の魔術師と謳われたお方、ハーヴィ・ウルクスピレウス・ダマンフレール様が病により亡くなられました。実に残念なお話でございます。我ら、霧の国の女王様も深く、深ーく、胸を痛め、嘆きました。女王様は彼の死と共に我々の、この国の未来を案じたのです。ダマンフレール様に注ぐ新たな魔術師を見つける為に、このオータル闘技場で魔術試験を行う事を宣言して下さったのです!」


 わーっと会場は一気に盛り上がる。

 周囲の勢いについて行けないのは、キャシーだけではなかった。


 メープルも不安げに様子を伺っている。


 彼女の様にぼんやりとしている者はいなかった。

 誰もが目を輝かせて、試験が始まる事を夢に見ている。

 ショビー・キャロルは喝采が、ちょうど良く落ち着いた頃合いを見計らい口を開く。


「皆様のお気持ちも大変分かります。何せ、ワタクシも興奮を抑えきれません」


 シャビー・キャロルはパチンと指を鳴らす。

 円形闘技場の中央に青白い光の壁が、四方に向けられて現れる。


(スクリーン?)


 ライブ会場のスクリーンによく似た魔法にキャシーは驚く。

 青白い光は砂嵐の様にぼやけていたが、次第にピントが合う様に映像が映し出される。


 薄暗い地下に淡い光が照らされていた。


 画面には四箇所の巨大な扉の前で待機している魔法使いや魔術師たちが立っている。


 その中にはウィータの姿もあった。


「にゃ!(ウィータ!)」


 黒茶色の髪にメガネをかけたウィータが集団の中に混じっている。

 ウィータは斜めがけの鞄をしっかりと握り、集中して備えていた。


「目の前の投影魔法に映りますは、ここ、オータル闘技場の地下にいる勇猛果敢な魔法使いたちでございます。中には名高い魔術師もお見受けするでしょう」


 ジョビー・キャロルの言葉に円形闘技場の観客席からはざわつく声が響く。


「見ろ、番人の魔術師だ」


「あぁ! 蔓草の魔女様もいるわ」


 何人かにウォーカスが当たる中で司会のジョビー・キャロルは今回の魔術試験についてのルールを話し始める。


「それでは皆様、魔術試験についての流れとルールを解説させていただきます。まず、参加してくださった方々には事前にくじを引いてもらい、五つの扉の前に立ってもらっています。彼らにはこれから目の前の門を潜っていただき、五つの試練を乗り越えていただきます」


 ジョビー・キャロルはパチンと再び指を鳴らし、映像を切り替えた。

 薄暗い図書館、鬱蒼と生い茂る森、嵐が起こる船上、アベコベの廃墟、湖の辺りが映し出される。


「参加者の方々は扉を潜ると今ご覧になっている何処かに転移させます。そこはこの世界のどこでもない、魔法結界によって作られた空間でございます。そこで魔術師に求められる、理解、技術、力を示していただきます。その後、最深部にある魔法陣で立っていた最後の一人が魔術試験の合格者となるのです」


 ジョビー・キャロルは高ぶる気持ちを抑えながら、背後に用意された巨大な布を捲った。


 人よりも何倍も大きな砂時計だ。


「なお、最深部までの道はこの砂時計が落ち切るまでに辿り着けなければ失格になります。危険を感じた場合、白いリボンを宙に放り投げれば、直ちに回収いたします。この場合は辞退と言う扱いです」


 キャシーは首を傾げる。

 試練は五つあるが話では三つしかない様に感じたのだ。

 メープルも不思議に思い自身の父に尋ねる。


「ねぇ、パパ、試練は五つなんでしょ。理解、技術、力の他に何があるの?」


 娘の疑問にアケルおじさんは少し苦い顔を浮かべてしまう。

 彼は首をさすりながら話す。


「この魔術試験は魔法への理解、魔法を操る技術、それを扱う力。そして、戦闘センスも問われるんだ。普通の魔法使いならそこまで重要視されない。でも、今回の場合『最強』……最も強い魔術師を決める為にある」


 アケルおじさんは息を呑んで続けた。


「つまり、戦いだ。決闘なんかじゃない。多人数での混戦、それが四つ目の試験になる」


 戦いは常に向き合って起こるものではない。

 決闘、奇襲、戦争など数多の駆け引きの上にある。


 ジョビー・キャロルはこう言っていた。

 最後の一人が魔術試験の合格者だと。


 戦って勝たないといけないと言う事だ。


「それじゃあ、五つ目の試練って言うのは?」


 メープルは不安げに尋ねた。


 アケルおじさんは娘の問いかけに答える事を躊躇してしまう。

 前のめりにスクリーンの方を見つめる。

 その先には扉が開き、試験が始まるのを待ち続ける参加者たちの姿があった。


 中にはウィータの姿も見える。


「これら全部を引っくるめて必要になるのが……」


 アケルおじさんの言おうとした事にメープルは固唾を飲み込む。


「魔力……」


 ウィータにとって致命的な課題だ。

 彼女たちは観客席にいながら、霧の様に冷たく黙り込む。

 乾くことの無い不安が彼らの心に染み付いていた。


「みゃー(大丈夫!)」


 その時、メープルの膝にいたキャシーが鳴く。

 キャシーは水色の瞳を細めながら二人を見上げていた。

 彼女の視線にメープルは眉を下げて言う。


「ウ……ウィータならきっと大丈夫よ……だって、もう魔力欠乏症になる事はないんだから」


 自身を鼓舞する様に話すメープルにアケルおじさんも頷く。


「そうだね。彼の父は計算高い人物だ。きっと、ウィータも何の策も無しにこの試験に飛び込んだ訳がない……」


 親子揃って固唾を飲み込み、試験開始の合図を待った。そして、娘の幼馴染が無事に戻る事、それだけを願うのだった。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

魔術試験は総合的な力が試される為、魔法使いの根幹ともいえる魔力がどうしても必要になってきますす。

様々な二つ名を持つ魔法使いや魔術師がいますが、皆様の中でお気に入りの二つ名などございますか?

良ければ教えてください。

興味を持った方、面白いと思って頂けたらば、ぜひ、ブックマーク高評価よろしくお願いします。

他作品も書いていますのでよろしければ、そちらも読んでいただけると嬉しいです。


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