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十四話

 カチカチと古時計が一定のリズムで鳴り続けている。

 時計の音に耳を傾けているとメープルはいつも眠ってしまっていた。


 ふかふかの枕で眠るメープルは寝返りを打つ。

 ぐっすりとした寝顔を浮かべるメープルの顔の前に一匹の猫が近づいて来た。


「むにゃむにゃ」


 涎を垂らしている彼女の頬に何かがふにふにと押す。


「ん〜……」


 心地よく眠っていたメープルは邪魔されて、目を覚ます。

 イタズラに起こされたと思った彼女は、イラッと険しい顔を浮かべて、叩いて来た輩を睨む。


「にゃー」


 低い唸り声の様な鳴き声が響く。

 真っ白な猫が水色の瞳を細めて彼女を見下ろしていた。


「ん〜……キャシー? あとね……五分だけ」


 幼馴染の猫がどうしてここに居るのか、疑問に思う気持ちすら、寝ぼけたメープルにはない。

 枕で顔を隠し、二度寝をしようとする。


「にゃーー!」


 彼女の態度が気に入らなかったのか、キャシーは連続で猫パンチをメープルに食らわせた。


「あぁ、ごめん、ごめん、ごめん、辞めて! 起きる、起きるから!」


 キャシーに文字通り叩き起こされたメープルは涙ながらに体を起こす。

 だが、頭の方はまだぼんやりとしている。


 紅葉の様に明るい髪は、木の様にぼうぼうに広がっていた。

 目を覚ましたメープルは何をするでもなく呆然とする。


 白猫のキャシーがどこに行ったか彼女は目で探していた。

 その時、コンコンっと扉からノックの音が響く。


「メープル、起きているかい」


 彼女のお父さんの声だ。

 メープルは目を擦りながら返事をする。


「うん、起きてるよ!」


 散らかった部屋の中で唯一、彼女の寝床は綺麗に保たれていた。

 だから、少し向きを変えてしまうと。


 ドッ、ガラン!


 椅子の上にまとめて置いた画材が散らかってしまう。


「あ! あちゃ……」


 メープルはようやく、はっきりと目を覚ます。

 ベッドの下を恐る恐る覗き込むと一枚の絵に筆が刺さっているのを目撃する。


 黒茶色の髪に愛想のない視線。


 丸いメガネをかけて静かにこちらを覗く幼馴染のウィータの絵があった。

 これは昔、絵の練習でモデルになってもらった頃の物だ。


 何度もモデルを頼んでいる為、なんて事ない一枚である。しかし、彼の胸の辺りに筆の芯が刺さっているのを見ると喪失感を感じてしまう。


 メープルはゆっくりとベッドから抜け出すと傷ついた絵を持ち上げる。

 カランっと筆は落ちて、肖像のウィータの胸に穴が空いてしまう。


 途端にメープルの背筋はゾッとする。


 これは何かの暗示なのかもしれないのだと、そう思ったのだ。


 例える事すら恐れ多い。


 何しろ今日は、彼にとって大切な日なのだから。

あやしいものじゃないよ、あやかしだよ。

どうも、あやかしの濫です。

メープルの事が嫌いなキャシーがなぜ彼女の部屋にいるかと言うと、ウィータの為にとっとと会場に向かいたいからです。ウィータファウストの猫

メープルの父親は魔法使いであり画家でもあります。そのため、彼女も絵を描くことが好きで部屋はベッド以外は汚かったり……

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