また会えたね
「日葵ちゃん…忘れちゃったの?」
日凪ちゃんが悲しそうに目を抑える。
「最近…ずっと来てくれて、
毎日、面白い話をしてくれてたのに…」
「それは…私じゃないの。」
両目に当てたおて手を剥がすように、
私の手を添えてその瞳を見た。
「…え?」
「それは…もう一人の私…」
私自身、もうどっちが本物の魂かもわからない。
少なくとも、今この体に居ないほうの"私"。
「…え、そうなの?」
だから私は、何回も夢に出て…
今の私の話を聞きに来てたんだ…。
「日葵!無事だったか!」
「何ででてったん…」
レンとバルドはその様子を見て止まり
黙った。
「もう一人の、日葵ちゃん?」
私は頷いた。
「だから…お願い。」
「軍隊ミニオンに、もう一人の私を封印して欲しいの。」
「え…!」
日凪ちゃんが驚く中、明さんが立ち上がる。
「何だか分からないけど…持ってくるわ。」
明さんはその場を離れた。
「もう一人の思考が私とリンクしなくなる前に
…物体にとどめる必要があるの。
バカな精霊が言ってた。」
フラリスさんからの合いの手は無かった。
「私がやるの?」
その言葉に私は頷く。
「日凪ちゃんの事を一番気にしてるはず。
会いたいと強く願って、
返事が来たら…封印したいって強く願って。」
「う、うん、分かった。」
そうして扉が開き、バルドと明さんが機械を持ってきた。
鉄製の少女の機械…軍隊ミニオンだ。
「確かにこれは魔物の魂で動いてる…
魂を新たに宿すことは出来るかもしれない。
でも魔物と混ざって変質した場合は…止めるわ」
本当は壊すって言いたそうな…間だった。
母親の顔を見た後
日凪ちゃんはその機械の前に立った。
両手を胸に押し当て、目を閉じ
「会いたい!封印したい!封印したい!!!!!」
と叫ぶ。
十秒ほど見つめていただろうか…
突然機械が起動し、立ち上がった。
そして…私を見る。
「また…会えたね。」
私も笑顔で答える。
「おかえり…”日葵ちゃん”」
「”日葵ちゃん”!」
日凪ちゃんが機械に抱き付いた。
「…あり得ない…」
明さんが絶句する中私は目の前に進む。
「今はまだ…そんなだけど…
色んな精霊を探して、味覚とか触覚とか
取り戻そう?ね、”日葵ちゃん”
明さん達や、お父さんお母さんに
手伝ってもらおうね。」
「ごめんね…ありがとう…」
私が泣いているのを見てた。
涙なんてなくても…分かるよ…
私…泣いちゃったから…!
「皆さんのご飯が出来ましたよ~」
$良かったな、娘たちよ…さらばだ$
「日葵見つかったんでしょ…!」
ライラさんとお母さんの声に勢いよく振り返るそれは
…私だった…
…
もう一人の私は食卓に居ない。
日凪ちゃんの友達になる様に伝えて
今は気持ちの整理をしてもらっていた。
そんなこと言う私も…
「ごめん、今はあじあわせて…」
シチューをよく噛んで、味を覚える。
最後のひとくち、お代わりまでした。
「お腹いっぱいになった?日葵。」
途中からみんな、押し黙って私の方を見ていた。
今にも止まりそうな心臓を握りながら、声を絞り出す。
「ごちそうさまでした。」
胸が…痛む!苦しい…寂しい
浅く息を吐き、反射で吸い込みながら
考えていた別れの挨拶を解き放った。
「お願いがあります、お母さんお父さん、みんな。
色々言いたいかもしれないけどまずは黙って聞いて。」
顔が歪んだ、また泣いちゃった…
でも止まらない、私ってずっと同じだ…
「私はギルドに戻ります。
だから、もう一人を…本物の日葵として考えて。
私にはギルドや体があるけど、その子は機械だし
戸籍もないの。
たった一人の”日葵”として、友達になってあげて。
もし、私がその立場だったら…私の話を聞くのは
すごく嫌だから、手紙も、会うのも控えて…だから。」
私が”偽”にしか視えなくなったとしても、それでいい。
私には未来があるから。
喉を抑えて、頭を上げて詰まっていた息とともに吐き出す。
「さよなら!お母さん、お父さん!
お世話になりました…」
聞こえたかな、声が掠れちゃった…
レン達…帰ったら…同じ理由で頼むつもり。
きっとレンさん達も、居たほうがいいから。
「日葵…」
「分かった。安心して、ギルドで働いてこい。」
あっさり、受け入れられてしまった。
ずきずき、頭が痛んだ…私、もうよそ者だ。
目を見たくなくて、話したくもなくて、
その場に居られなくて、静かに寝床へ立ち去った。
何を語り掛けても、フラリスさんの返事がない。
その中にあったのは、たった一人の夜…
これからの道を、それでも進んでいく。




