宿に広場に
私は、食事の後馬車に乗り込み
赤基調で暖かい車内で
みなさんの過去を聞いて過ごした。
誘導フレアの勉強をどれだけ厚い本でしたか…
精霊との取り決めでどんな熱弁を交わしたか…
水の宝珠の精霊さんがどんな子か…
レンさん達とダンジョンで発掘した装備が
かなり価値の高い物だったこと…
装備については確かに私…価値が分からなくて恥ずかしい…。
だって宝石がある時点であのダンジョンのお宝が
安いわけないもん…。
間食の後も色々話した。
レンさんとライラさんのイチャイチャについて…
バルドさんにも取材が来てたこと…
記者たちに追いかけられたこと…
ライラさんのご家族について…
そんな話をしてたら
いつの間にか宿についていた。
まるで…今までの数日間のように感じて
私…どれだけ苦痛に感じてたんだろうって
少し…思った。
宿の中、月の光に照らされて
こんなに整った寝具で見知らぬ街を眺める。
しあわせな時間…
(本当に、私が傍にいてもいいの?)
「…私が寂しいから。」
胸が圧しあがる様に鈍く痛む。
わがままだって、分かってた。
(うん、私もきっと寂しいから、助かるよ。)
宿で回復して過ごした翌朝は、首都を通った。
「ここで一度、首都を見ていきましょう。」
いつもと違ってローラさんが音頭を取っていて
レンさんとローラさんの将来が想像できて
とっても楽しい…
あ!服屋さん!
「ここ寄っていい?」
替わりの服が必要だったから。
「ああ、俺たちは別の店に…」
そんなレンの手をライラが握る。
「いいから手伝ってくれる?
確認役としてね。」
「ああ…」
「いらっしゃいませ!
どの様な服をお求めですか?」
ライラさん達に…
私私!
「うん、分かったから…
あっちのコーナーが似合うよ。」
手を上げてにじり寄る私を見て
お姉さんは手を広げ右を見た。
うーん小さいし地味だし…
(ほら、ピンクの服とか。)
違う…かな。
色とりどりの服を見ては変えていく中で
結局青と白の庶民服でいいか…ってなった。
「日葵、それでいいのか?」
バルドさんが首をかしげてる。
でも1200クランで安いし
変えたほうがいいのかな。
…あ!
「こっちに、花が描いてある服が……」
茶色と緑を基調に、向日葵の花が抽象的な黄色で描かれている。
“新しい王国の少女”をイメージした、特別仕立ての服らしい。
この服は、職人さんが“ある少女に感銘を受けて”作った最新作。
向日葵のように明るくて、強くて、優しい少女に着てほしい……
そんな願いが込められているという。
実質的に私の事だよね…
私に着てほしい服…ってことだよね。
…
それを聞くと買いたい!無下にしたくない!
職人さんに報いてあげたいという心が…
う……4000クラン。
うーん。
うーーーーん。
「まだ、一人で買うにはちょっと高いかもね。」
苦笑いするお姉さんに悔しくなって
鞄から5200クランを出して突きつけた。
「それぐらいのお金はあります!」
「そ、そうなんだ。
この服、靴も付けれるよ。
1200クランで…」
「あります!」
「じゃあつけておくね。」
や、やっちゃった…。
まだ成長期の服なのに…
所持金の7割が…!
そしてそのまま二つの服と靴を購入した。
紙袋をしまい、ウキウキとその店から出ると
「向日葵が咲いてる…!」
思わず駆け寄り眺めていたら
いつの間にか私たちは、あの広場の中にいた。
「王を改心させてくれた奇跡の向日葵なのよ。
ほら…あの元処刑台…」
ベンチに座っていた青い服のおばあさんがしみじみと語る。
指さした先には、今は刃がないギロチンがあった。
「あれは王様の身勝手の一つ…それをねぇ…
向日葵を持った一人の女の子が
変えてくれたのよ。
それから向日葵が移されてきたの。」
「私は…きっと、求めていたんだと思います。
王様が変わりたいって心の底で思ってて
それを拾ってくれる人がいるって
気が付いたんだって…。」
「来年、猛暑期に来たら
きっと一面花畑になってるよ?」
「うれしい…きっとまた見に来ます!」
首都は…活気にあふれていた。
途中、湖もあった。
結晶が所々浮いてて綺麗だったけど
すごく厳重に警備がされていた。
色んな所があって楽しいねって
何気ない話をしながら…
この日も宿にたどり着いた。
いいお馬さんだから明日にはペンタ市に
着いちゃうみたい。
私の故郷…明さん…待ってて。
そう思ったとき、火の宝珠に変化があった。
私に…語り掛けてきた。
”僕をイメージして”
私は目を閉じ、イメージした。
真っ白な雪化粧の中、火の柱が立ち上がっている。
「祈りをありがとう、僕はフレアスヘル
火の英雄さ。
でも一つ言わせてほしい。
いま、季節は冬じゃない。
でも冬の南限では僕の力を必要とする人たちがいる。
外部からの食料が少なくなるからだ。
それまでに帰りたい。」
息を呑んだ。
そんな事、想像もしていなかった。
「あの、建内日葵です。
一つだけ、先に協力していただけませんか?
この服を外すために、宝玉に貯めている祈りが
必要なんです。
私…必ず…その後あなたを南限にお返しします。」
宝珠を諦神さんの腕輪に当てて
今まであったことを心で伝えた。
「…分かった。
全てが終わったら、自分で帰るよ。
もしかしたら村がないかもしれない。
君を南限に送って凍え死んだら悲しい。」
すごく悲しそうに、声を震わせて言うフレアさんは
そう炎を力強くたぎらせた。
悲しみの中で燃える炎…火の勇者の心を感じた気がした。
「帰るって…」
「君の祈りで空を飛ぶ。
音速で血の翼を広げてね。」
…この人もまた、ポロトンさんと同じ
現実に干渉し、動ける精霊なんだ。
「きっと君の願いは叶う。
それが叶えば過去の悲しみは
僕の翼に載せて還そう。」
本音を言うと、あったばかりで
もっと話したいよ。
どんな考え方を持っているの?知りたい。
「…少し話そうか。」
「はい…!!」
そんな話をしながら2日目を終えた。1




