気が回らない
久々の再会なのに雰囲気は最悪
死んだものを見るようなギョッとした視線に
泣きながら近づく友達を見て、首に汗が伝った。
「…ホント?」
「な、そんなに泣かないで?」
肩を持とうとして、力強く手が握られる
目を逸らすも、視線がついてきた。
「…プレゼントした花の色は?」
ギルドが変わる予感、私の大切な思い出
目の前の、アリッサちゃんがくれた花。
「白と紫の香りのいい花?」
抱擁の後嗚咽が聞こえ、逃げ場がなくなった。
自分もなんだが、つられて泣くしかなかった。
「大丈夫?」
落ちつくように背中をさすって…
ちょっと…くっつきすぎだって…
「信じられない…」
周りの人の名前が思い出せない、大切な思い出のはずなのに。
「何で生き返ってるの…」
…へ!?
まじまじと私を見つめ、女性が
上の階に駆けあがっていった。
「知り合いを庇って…星に…うわぁぁぁぁん!」
私、私…
*
戦場に凄く沢山の忘れ物をしちゃったの。
ルーニーさんのヘルメットとか…ね。
諦神さんの体力も少ししかないから
暫くは戻ってこれないと思う。
行ってきます!
*
ゆ、ゆゆ、遺言…っぽい…
「王都まで走ったのは別の人…?信じたくない…」
手が痙攣する。
こんなに後ろめたい事、この世にあるの?
上階で足音がする…
「別の人なんだよね…?」
気まずくなって私は距離を取ろうとしたけど
全員が見ていた、そうだ
ベラーゼ君、アリッサちゃん、フレアンさんだった…。
(素直にしかられなさい。)
「まさかほんとに走ったの!?」
傍から聞こえた大声に
驚きながらも頷いてしまった。
「うん…」
どう続けよう、どう続けよう…
「日葵さん、あなたの性格上
手の打ちようが無かったことは分かります。
でも、無言で死にに行くのはあまりにひどいです…」
ベラーゼ君…ごめん…
以前ギルドに入りたいと言って覚悟があるか聞いた人だ。
ギルドの仕事…慣れたみたいだね。
「日葵!」
階段からリーファさんがゆっくり下りてきた…
顔色が悪いのを察し、後悔が沸き上がる。
「私達…カロル国王にあなたが追われていることも
あなたが向日葵って名乗っていることも
いざという時は命を差し出すって言ってたことも
全部知ってたんだよ…!」
その場にいる全員の表情が物語っていた。
数日間の処刑を見ているようだったと。
「 あなたがギルドに帰ってからあの石が使えなくなって
役割が終わったからかなって思ったけど…帰ってきてくれたって。
でもあなたが朝あんなことを言ってトイレに入ったまま出てこなくて…
居なくて…。
向日葵がクラウン広場で死んだって…。
夫も戦場で連絡付かなくて…
あの子ならやるって…」
完全に壁にもたれて、圧倒されながら聞いていた。
話を聞いているだけでとても悲しい気持ちと恐怖を感じた。
それが自分のやったことだと、頭ではわかっていても…
思い出したくも、認めたくもなくて。
視線が痛い…
戦場で感覚がマヒしていたのかもしれない…
というより、私の考えが全部リーファさんに把握されてること
…忘れてた!?
申し訳なさでめまいが…
「ごめんなさい。」
優しい嘘なんて付きようない。
その時の考え方、全部見られてて…諦神さん…
「忘れ物は持ってきたの?」
汗が気になる…
ローブとかヘルメットとか…思い出の品なのに
どうでも良くなってた…。
「忘れて…きました…」
「良かった…!」
そうして頭を撫でられて、血が逆流する気分だった。
安心して、でもどう思ってたか直で分かって…。
「広場で…実際何が起こったのか
出かけてから何があったのか。
聞かせてくれる…?」
それを話すのはあぁぁぁあぁ~~~!
(脱出不可能 覚悟を決めよ)
「まず、汗を拭かせてください…」
…
…
私、立派になれないって聞こえた気がして
何となくなれますよって。
その時は余裕がなかったけど
そういう考え方が出来るなら真剣に取り組めば出来るって…
ギルドで色んな人と接したから直感でそう思って…。
気が付いたら知り合いの魔女さんの家にいて
転移で助けてもらったらしくて…」
黙って聞いてくれている、だから区切りを付けないと。
「これで…終わりです。」
「…」
アリッサちゃんは目を真ん丸にして私を見ていた。
リーファさんは目を閉じていた。
ベラーゼ君は手首で口を抑えていた。
フレアンさんはずっと動いて居なかった。
ギルドの受付がいな…それどころじゃない…よね。
「それは危険でしょ…」
フレアンさんが口を押えながら、そう言った。
「なんというか…日葵さんというか…」
「石を通じてじゃなく、あなたの言葉で
今までのこと、今度改めて聞かせてね。」
リーファさん…
少し、心が落ち着いてきた…
頭から熱が引いて…落ち着いて話が出来る…
もう、共有しちゃったからかな。
「もうそんな事…しないでね?」
話の途中で座った机、そこに顔を突っ伏して
泣いてしまった。
優しくされるのは…苦手なの!
堪えて、顔を上げると
みんな真剣に私の事を考えてくれているようだった。




