66 クエスト:迷宮惑星の受注
その後、俺達はハンター・ユニオンに向かった。
ドワーフ本部はファーニス・タワー程ではないけど巨大なショッピングモールくらいの広さだった。
その中心部に位置しているのが、グンドさんがいる本部長センターと呼ばれる建物である。
そこにグンドさん、ジルオレ氏、イルミルちゃんの3人が待っていた。ゼルコバ氏はここに来れなかったようだが、3Dモニターで参加するとのことだ。
イルミルちゃんは、『鍵』の所有者が自分だということで出向いたって言ってたよ。さすが超天才児。
ただ、挨拶をした瞬間に待ってましたと言わんばかりに虎鉄を膝の上に載せたりしたので、ひょっとして虎鉄に会いに来ただけかも……。
まぁそれは良いとして、レオグリム氏の遺体を回収するというクエストの依頼者はゼルコバ氏とバトゥになる。そして『鍵』を所有して迷宮惑星にも同行するイルミルちゃん、実質的に家族の代表としてジルオレ氏、最後にクエストを発行するグンドさんで関係者は揃ったのだ。
あ、当然俺と虎鉄、ムギホシはクエストを受けるハンターね。
そして、その後の話はさっきバトゥから聞いた通りだった。
「お願いするよ……妹をこの星に連れ帰って欲しい」
ゼルコバ氏は目に涙を浮かべている。彼のデスクには小さなホログラム上映機があって女性の姿が映っていた。あの人がレオグリム氏か。イルミルちゃんを(地球の人間的に)20代にしたみたいだな。そっくりだ。
「おそらくこのクエストは霊理力を使うお前達しかクリアできない。頼んだぞ」
バルボア・シティとライジャさん達から俺達3人のことを聞いたんだろう。
「イルミルをよろしくお願いするよ。出発する時に盛大に壮行会を開くからね」
なぬ? 壮行会とな? 今日行くつもりだったのだが。
「出発は3日後です。その頃にはエルフィンⅡRも新しい宇宙艇になってますよ」
「おお、それも初耳だニャ!」
「バトゥがエルフィンⅡRをまたオーバーホールして超空間エンジンとか新しくしたのよ」
「『ⅡR』を取らないと駄目でしょうね。名称はどうするかは持ち主のムギホシ様に尋ねたところ……タツロー様決めてくださいね」
え~俺が決まるのか。これは困ったぞ。でも3日は余裕があるからなんとかなるでしょ。
「アタシもその宇宙艇の改造に一肌脱ぎました! それも謎の迷宮惑星に行けるなんて……なんて素敵なことでしょう! レオグリム大爺様も待っててくれますわ。この『鍵』に誓いますわ。迷宮惑星の謎を解くと!」
なんだーなんか前よるもテンションがバカ高いなぁ。俺はゼルコバ氏とジルオレ氏を交互に見る。
「レオグリムを思い出すよ……」
「チトセの天才の血が濃いとあんな感じになるのです……」
「そうだったかしら。話して楽しかった記憶が微かにあるわ」
でも、危険なところに赴くからイルミルちゃんのその前向き加減は素晴らしいね。
「イルミル、ちょっと痛いニャ」
虎鉄はイルミルちゃんの膝をずっと抱かれているのだが、後頭部と首の辺りをさすってアピールする。
「あ、ごめんなさい。アタシの胸にその『鍵』の宝石が半分埋め込まれているの」
『鍵』はどこに持っているのだろうと思ったら、まさか身体に埋め込まれていたとは。なんと宝石は、所有者である彼女が初めて手に持った瞬間、身体に吸い込まれるように今の位置に収まったと聞いた。
「それはすまないニャ。痛くなかったミャ?」
反対にイルミルちゃんに謝罪する虎鉄。
なんでもネックレスくらいの位置に2センチ程の宝石があるそうだ。楕円形で紺碧色の綺麗な宝石とのことだ。
俺達に見せようとイルミルちゃんが上着を脱ごうとしたので大人が総出で止める事態に。あとでムギホシには見せるらしい。
話題を変えようと、イルミルちゃんとジルオレ氏に質問することにした。
「出発は3日後ですが、イルミルちゃんの護衛は今の段階から始めてもいいですか? といっても付きっ切りではありません。イルミルちゃんのいる場所だけは把握しておきたいと思って……」
「それは、こちらからもお願いしたい。軍の発信機は持たせているが、タツローくんは変わった霊理力を使うそうだね」
「アタシも変わった霊理力とか掛けて欲しい!」
話が早くて助かるなぁ。ここで出番になるのはもちろん「追尾の魔法」だ。もし何かあった時にはこの辺りなら「神出鬼没の魔法」で駆け付けることもできるし大丈夫だろう。
『あの宝石は魔石に似てるけど、ちょっと違うニャ』
虎鉄がナビ経由で俺にしか視認できない連絡をしてくる。
お前はまったく……。でも『鍵』が魔石に似ているって気になるな。
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クエストの受注が完了した。
ハンター・ユニオンのドワーフ本部から出た俺達は三日も空いたのでまずはレオグリム記念博物館に行こうか、という話でなった。
ジルオレ氏とイルミルちゃんはドワーフ本部を出た時に先にファーニス・タワーに帰るそうだ。
「それではまた3日後に会いましょう!」
「別に毎日会ってもいいのにニャ」
「そうですわ! コテツさん、また後でお会いしましょう」
まぁ、そうだな。そう言って俺達とイルミルちゃん達はそれぞれ向かう方向に別れることにした。
イルミルちゃんとジルオレ氏が乗った反重力ビークルが走り去っていく。反重力ビークルは速度が速いのでもう見えなくなった。
ふと俺は違和感を覚える。隣を見ると虎鉄の毛が逆立っている。
この感覚は前に――
「君達がいたら、そんじょそこらの工作員では手が出ないよね。だから僕が来たのさ」
俺達の目の前にはアイツ――帝国のジーニー族、ナイセンが立っていた。
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