61 シューティング・スター
みんなに俺のあちこちを触ってもらって神出鬼没の魔法を使う。
取り敢えずエルフィンⅡRのコックピットへ飛んだ。
その時、強い閃光と大きな衝撃が訪れた。どうやら超巨大魔理樹トレントが攻撃してきたようだ。
ナビに聞くと魔理力のエネルギー弾を射出したらしい。
超巨大魔理樹トレントは本体が幹で、そこに6つの眼を持っている。どうやらその瞳からエネルギー弾を出すみたいだ
そして、その攻撃が運悪くライジャさん達の宇宙船に当たって大破したのだ。
「一撃なのかい……」
「「お、押忍……」」
「運悪く」じゃないな。というか確実にこちらを狙っている。
ライジャさん達では悪いけど機動重装甲スーツが助かったので吉としてもらおう。あ、機動重装甲スーツは邪魔だから脱いでいただこう。
しかし、ライジャ達の宇宙船が大きかったので最初に狙ったんだろう。
次は俺達のエルフィンⅡRの番だ。
また大きな衝撃が来る。
やっぱりな。でも俺がエルフィンⅡRにいるから大丈夫だ。物理防御力UPの魔法をはじめとしてバフの魔法は一通り使っているからだ。内心は冷や冷やもんだけど。
「ライジャさん達は空いてる席に座ってくれ。レウーリはオペレーターの席がいいかも」
「中央の二つがタツローとコテツの席だね。それじゃあレウーリはハンター・ユニオンと軍で連絡をしてくれないかい」
と言ってる内に、コックピットのモニターに驚くべくものが映った。
なんと超巨大魔理樹トレントが衛星の大地から出て来たのだ。
「「「「「!!!!」」」」」
俺達もあまりのことに無言で驚愕する。
「まぁトレントだから移動はするニャ……」
「取り敢えず離陸しよう。発進!」
それと同時に、もう一度ナビで解析を試みる。だが相変わらず判断材料データが足りないとのことだが突然変異だと言う。
てことは新種か!
メテオライト・トレントは全長20メートルで、あの魔理樹が全長500メートルだから……大きさは25倍か。ということは超巨大魔理樹トレントは25倍の強さで仮定してもらおう。
あ、そうだ。忘れない内にライジャさん達もナビに入ってもらった方がいいな。
詳しい説明はあとでするから見ておいてくれと言っておく。だって、そう言いっておかないと「タツローとコテツはさっきから独り言多いよ。なにやってるんだい?」と言われること必須なんだもの。
でもライジャさん達は大人しく聞いてくれた。ひょっとしたらグンドさんから何か聞いてるかもしれない。でも、この辺りは高ランクのハンターだな! レウーリなんかはナビに夢中になってる……。何故かロドは硬直している。後で説明するし、まぁいいか。
超巨大魔理樹トレントはとうとう全身を見せた。根っこを入れると全長1キロだった模様。
こちらを襲ってくると思っていたら、衛星ブルナの重力を離れて飛び立つようだ。
「ブルナを出て、どこで向かうつもりなんだい?」
「ナビによるとどうやらドワーフ第拾六星に向かうみたいです」
「考えられることは、一番近くにジーニー族と敵対した人間がいる場所だからッス」
「レウーリは賢いニャ」
だとしたら追いかけないと!
超巨大魔理樹トレントはこちらの意思を察したのだろうか、突然幹にある瞳から魔理力のエネルギー弾と枝から小さなトレントの分体を100体を放ってくる。分体は「小さなトレント」と言ったが超巨大魔理樹トレントに比べてという意味だ。その大きさはメテオライト・トレントとかと同じくらいで全長20メートルだ。
これは俺達を敵と認識したに違いない。俺は距離を取ってエネルギー弾を避けつつ分体トレントを迎え撃つ。
「レウーリ! 連絡は着いたのかい?」
「ハンター・ユニオンとドワーフ軍に連絡は着いたッス。向こうも突然湧いたような超巨大モンスターにパニックになっているッス!」
「これはハンター・ユニオンもドワーフ軍もすぐに出撃とはならないねぇ……。グンド叔父貴はなんて言ってるんだい?」
「押忍、それがまだ連絡が付かないッス」
ライジャさんは小さく舌打ちをする。
「オイラ達でやるだけやってみるのがいいニャ!」
さすが虎鉄、俺もその意見で賛成だ。分体との戦闘でてんてこ舞い中だけどな。
分体は数が多いだけだからなんとかなる。しかし、大本の超巨大魔理樹トレントはエルフィンⅡRで倒せるかどうかだが……。俺達には勝てるだろうか?
ナビは「予測不能」と表記する。
「やるかニャ!」
虎鉄は真っ直ぐ俺を見て鼓舞するように言った。
そうか、そうだな。やるしかないな。ライジャ・アンド・フェローズの皆も俺を見つめている。
俺は大きく頷いて、操縦桿を超巨大魔理樹トレントに向かって倒した。
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超巨大魔理樹トレントはどんどんスピードを速めている。
すでに加速の魔法を3回重ね掛けしている。エルフィンⅡRの130%の速度だ。
超巨大魔理樹トレントの攻撃が激しすぎてなかなか近づけない。
そういえば超巨大魔理樹トレントも弱点はどこだ?
「虎鉄、弱点を調べてくれ!」
俺は避けるのに精一杯だ。
虎鉄がナビと数回のやり取りのあと視界に一つの案が提示された。
「魔理樹トレントから察するとこの6か所にある瞳――『魔晶石』が弱点と思われます」
ナビは「通常のトレントは1か所ですが」と但し書き込みだったが……。
「他のトレントと一緒だと魔晶石は硬い樹皮に守られてるね。さっきのメテオライト・トレントとサテライト・トレントはアンタ達気にはしてなかったけどね」
魔晶石……そんなものあったっけ。「サーチ・アンド・デストロイ」に集中してたから……。
取り敢えず、やってみる! 追尾の魔法で6箇所まとめて叩くぞ。弱点は火属性だと考えて黒炎龍弾だ。
超巨大魔理樹トレントの瞳6箇所を視界に入れてトリガーを引く。
ドシュッドシュシュシュシュシュッッ!!
しかし、超巨大魔理樹トレントは何本かある枝を腕のように振り払いながら、そしてトレント分体をチャフ変わりにして防いでいまった。黒炎龍弾を食らった枝は燃え尽きたが、本体は生きている。
黒炎龍弾は、弱点の魔晶石に全弾命中せずという結果だった。そんなことあるのか……! どうやら、それくらいの知能はあるみたいだ。
そして、俺達は驚く。
なんと枝が再生したのだ。それも、その間1分もないはずだ。
唖然とする俺に、ナビが40秒と教えてくれる。でも俺はすでに違うことを考えていた。
待てよ……ということは魔晶石の樹皮も再生すると考えて良いでは?
追尾の魔法では、発射された黒炎龍弾は、枝と分体の攻撃を「避けながら」というのが難しいのだ。
これはエルフィンⅡR1機では難しいかも……。ライジャさん達の宇宙船が残っていたら良かったのに。
「何言ってるんだい! この船と同じ速度で飛ぶのは不可能だよ!」
なんですと!? エルフィンⅡRと超巨大魔理樹トレントはそれくらいの早さで飛んでいるのか。そういえば気を抜いたらエルフィンⅡRも超巨大魔理樹トレントに置いてかれそうになるが……。
何秒か沈黙が流れる――
その時だった。虎鉄が「ちなみに」とナビに質問した。
「オイラの影分身は使えるかニャ?」
即座にナビが俺達の視界に大きく「可能」の文字を表示する。
『仮定ですが、虎鉄さんの操縦なら撃破率は55%です。ちなみに達郎さんは40%です』
その手があったか!
虎鉄も力強く頷く。
「初めてだけどナビがいるから安心って達郎が言ってたニャ!」
ライジャさん達は何を言ってるのかわからないことだらけだが我慢して欲しい。
虎鉄の席に虎鉄サイズの小さな操縦桿が現れる。これはバトゥが用意してくれたらしい。
「よしっ操縦は虎鉄に任せた!」
その案とは、虎鉄に操縦を任せて影分身【弐】で5体の分身を使うってことだ。
それに虎鉄は固有のパッシブスキルがある。
俺の加速の魔法はパーティ全体にかけることができるから問題ない。俺の必殺技は使えないが、虎鉄の影分身は使える。
しかも俺が与精の魔法でSPを補充すれば、虎鉄はほぼ永久的にSPを使えることに! 俺はSPの永久機関と化すぞ!!
勝率が55%はこれか!
「では虎鉄、コントロールを任すよ」
「I have contorol.だニャ!」
その瞬間、エルフィンⅡRは宇宙を駆ける風の妖精シルフィードになった。
AGI最大値アップⅣの効果が抜群である。
しかも、投擲Ⅲ、隠密Ⅲ、カウンターアタック、空蝉の術、急所攻撃とか、これはシューティング・ゲームなら無敵コマンドのレベルだ。
「「……押忍。」」
「……こりゃ厳しいね」
ライジャさん達は、なんか大人しいなと思ったら、みんなに掛かる重力が思いのほか高いらしい。
俺と虎鉄は体調管理機能があるからいいが……。
『常人の場合、耐えれるのは5分まだです』
ナビがそう表示する。
虎鉄はエルフィンⅡRの速度を落として皆に宣言する。
「5分以内で片付けるから我慢して欲しいミャ!」
「アタイ等を気にせずやっておくれ……」
「押忍……5分なんか余裕ッス!」
「押忍、なんなら10分……いや1時間耐えてみせるッス!」
今日あったばかりだけど、それでこそライジャ・アンド・フェローズだ!
そして、虎鉄はどうやら一旦、超巨大魔理樹トレントと距離を置いて「隠密」を使って敵対心を外すようだ(敵対心を減らせるかはわからないけど……)。
だから、この後が正真正銘の本番だ。
「じゃ早めに倒しますニャ!」
虎鉄は操縦桿を前に倒した。
うわっこのGが俺でもちょっと厳しい……!
横を見ると3人とも気絶寸前だ。取り敢えず癒しの魔法をかけとくかな。
そうこうしてる内に超巨大魔理樹トレントに追いついた。早ぇ~なぁ!
「いくよ、分身の術!」
俺達の乗っているエルフィンⅡRの後ろに5機のエルフィンⅡRが現れる。
自機と合わせて6機が連隊となって超巨大魔理樹トレントに肉薄する。
超巨大魔理樹トレントの6つの瞳が一斉にこちらを睨む。
枝から大量のトレント分体が現れた。その数600体……まだ増えている。1000体以上だ。
隠密がバレた!?
「バレるのも計画の内ってニャ」
虎鉄は、まだまだと小さく笑った。
まさしくエルフィンⅡR6機対超巨大魔理樹トレントとトレント分体との戦いだ。
ちなみに虎鉄は今、分身の行動は「自分の動きに付いてくる【D】」にしている。
エルフィンⅡRは縦列編隊を組んでトレント分体を蹴散らせてゆく。
あれよあれよと撃破していく。俺は少し安心して丁度今考えたことを聞いてみた。
「ちょっと思ったんだけど手裏剣って使えるの?」
「こうかニャ?」
トレント分体に刺さる光る手裏剣状のナニカ……。
「使えたニャ!」
ガトリング砲の辺りから光る手裏剣状の物体が現れて、360度どこでも虎鉄の思ったところに射出することができるようだ。これは流石にやりすぎでは……。
3分くらいでトレント分体は全滅してそれ以上は出てこなくなった。これが忍者の、いや虎鉄の力なのか。
「お! トレント分体切れかニャ?」
そのとき超巨大魔理樹トレントの瞳――6箇所の魔晶石が紫色に光り出す。
俺は「あぶない距離を取れ!」と叫ぶが、虎鉄は違った。
エルフィンⅡR6機を超巨大魔理樹トレントに対して円を描くように丸く陣を取ると一斉に黒炎龍弾を放ったのだ。
6つの黒炎龍と魔晶石の光線が交じり合って大爆発する。
大爆発が収まった時――超巨大魔理樹トレントは枝を全て失っていた。
枝がなくなったのでトレント分体も出してくる気配はない。
あそこで迎え撃つのは凄いな……と俺は思った。
「再び黒炎龍弾連打ニャ!」
連射!? 攻めるときはとことんやるんミャと日頃言ってたなあ……。
何十体の黒炎龍の踊り食い状態だ。
超巨大魔理樹トレントは黒炎龍の群れに呑まれていった――。
「おわったニャ……」
「おつかれ」
俺もそれしか言葉がでない。ちなみにライジャ・アンド・フェローズの皆さんはまだ気絶していた。
気が付いたら俺達の前方にドワーフ第拾六星がその姿を見せていた。
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