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55 ファーニス・タワーの晩餐会

帝国の工作アンドロイドとバレたメイドは、その後すぐにやってきたハンター・ユニオンのドワーフ本星支部長の計らいで軍に連行されていった。


ハンター・ユニオンのドワーフ本部の本部長はグンドさんという男性で、俺から見るとちょっと年上の苦味走ったイイ男(ムキムキ有り)に見えるが、これで250歳だっていうのだからドワーフの年齢はわからない。


『名称:グンド

 種族:ドワーフ族

 職能:ハンター・ユニオン ドワーフ本部長 ランク19

 脅威度:青 好感度:緑』


しかもハンターランクは19! それも現役! 今まで会った中では一番強いハンターだな。もちろんムギホシは殿堂入りしているのだけど。え? 虎鉄? 虎鉄も戦ったら勝っちゃいそうだけど殿堂入りはやめておきたいなぁ。すみませんが虎鉄と俺は除く、でよろしくお願いします。


で、なぜグンドさんがいるのかというと、この後チトセ・ファミリーの晩餐会に招待されていたのだ。俺がもうそんな時間かと窓の外を眺めると、地下世界だけど太陽に似た光源があるのだろう外はまぎれもない夕暮れ時。


それならば帝国の工作員のことは置いておいて、取り敢えず晩餐会へと繰り出したい! 虎鉄もイルミルちゃんが言っていた「至急取り寄せたオヤツ」が気になってるはずだ。


その後、晩餐会は立食形式(座って食事はしないとのことだ。食べる時間が勿体ないってドワーフの教えだそうだ)でドワーフが誇る美酒美肴がこれでもかってくらい出てくる。ドワーフの満漢全席やで~ってくらいだ。出す方も凄いが出される方も凄くてドワーフの皆さんは健啖家でいらっしゃる。めちゃくちゃ食べるなぁ。ちなみにゼルコバさんの食事は流動食ということだ。食べることよりこの場にいたいということじゃないかな。


食べながらグンド本部長が、俺になんやかんやと話を振ってくれたり、過去の冒険の話を聞かせてくれたりとラシャヴァティ支部長と同じくらい良い人だなぁと感激した。


「おまえは知っているか。ラシャヴァティと俺は30年前パーティを組んでたんだぞ」


早くも「おまえ」呼ばわりだけど、それが似合ってるので気にならない。しかし同じパーティ・メンバーだって。グンド本部長とラシャヴァティ支部長のパーティとは、その時のパーティに俺も入りたかったものだ。


な! 虎鉄もそう思うだろう?


「なにか言ましたかミャ?」


虎鉄はイルミルちゃんの横でひたすら可愛がられていた。虎鉄もコスモ・ル~チュがもらえるから余所行きの態度だ。


「今度はコレを召し上がってくださいね。コテツ様、まだまだありますよ~。はぁ、本当に可愛いですね……、当家にしばらく逗留しても良いですね。ね、ね。そうしましょう。お祖父様、お父様、お母さま、いいですよね!」


自分の膝の乗せた虎鉄を抱きしめながら、さっきから同じことを言うイルミルちゃん。


そんな虎鉄とイルミルちゃんの一挙手一投足をジルオレさん、マウーフさん、ミルミさん、ネメセルさんが注目する。


イルミルちゃんは10歳だというけど、話し方はちょっと大人びている。これがドワーフ族の子供なのかな。でもイルミルちゃんと虎鉄の組み合わせは最強だ!


俺とグンドさんからも笑みが漏れた。


そういえば、このタイミングならグンドさんに聞けるかもしれないな。


「あの……ちょっと聞いてもいいですか。ゼルコバさんというかチトセ・インダストリーについてなんですが……」


「? 当たり前のことしか話せないが答えるぞ」


予防線を張りつつ、でもOKしてくれた。


「ゼルコバさんは名前に『チトセ』って入っていますよね。他の家族は入っていないですが何故ですか? 本人や家族の人達に直接聞くのは憚られるかなぁと思って……」


「なんだ、そんなことか。それはオレやムギホシ様も名前しかないだろう? たまに姓が入る人物がいるが、基本的に姓とか入れないのがほとんどだ。姓は存在しないし。でも家督を継いだ者が姓とか氏とかいうものを家名等として入れる場合があるのさ。そういえば君のライセンス・カードには入っていたな。それも同じだろう?」


「いえ、家督を継いだりとかはなくて……あれ、俺は継いだってことか。いや、家督とかは関係なく苗字は付くだろうと思うし、いやまてよ付かない人もいるような……」


自分で聞いたのだが混乱している俺がいる。


「複雑なことを言ってしまったかな。ゼルコバ氏に限って言えば『チトセ』を継いだのがゼルコバ氏だったということだ。もっとも現在それもジルオレ氏に家督を渡そうとしている最中だ。……これは、オープンな情報だぞ? 少なくてもこのドワーフ本星から第拾六星まで住んでいるドワーフ族なら予備知識だ」


なるほど~。そうだったのか。もっと早くムギホシとバトゥに聞いても良かったな。でもグンドさんが「ムギホシ様」って言ってたぞ。エルフの巫女姫だからか。やんごとなきことだな! ムギホシも実は家名的なものって継いでないけどあるかもしれない。おそらくいずれ教えてくれるだろう。


あれ、そういえばムギホシはどこに行った?


あ、いた。ムギホシは、ゼルコバさんとバトゥの3人でテラスの少し離れたところで話をしていたようだ。


グンドさんが俺を誘って「ちょっと話しに入れてもらうか」とその3人のところへ向かったところ、3人も丁度会話が一区切りしたので俺とグンドさんを迎え入れてくれた。この巨大ピラミッドのテラスって……高所恐怖症でなくて良かった。


先に会話の先鞭をつけたのは意外なことにゼルコバさんだった。


「君とコテツ君は、特殊な霊理力の使い手と聞いたが、本当かね?」


「先に言っておいた方が良いと思ったの。特殊な霊理力を使うって、それだけだけどいけなかったかしら」


ムギホシは気を回してくれたのだろう。もちろんOKだ。俺と虎鉄が相手の出自と脅威度や好感度がそれなりにわかると伝えた。バルボア・シティでもむしろ体験してもらったし、これくらいなら今いる相手には開示してもいいだろう。レベルとスキルに関しては自分達もまだ理解しきれていないので、そこの辺りは笑いながら誤魔化した。


「ふむ……、なるほど。では、ここにいる者達は君達のお眼鏡に適ったんだね」


「『丁重に』ってラシャヴァティに言われたのはこれだっか。くくく……」


「いやいや、むしろ俺達を受け入れてもらえてありがとうございます」


ゼルコバさんとグンドさんが微笑んでくれた。


ゼルコバさんは、さすがバトゥの主人様のお兄様だな。良い人だ。それにムギホシを見る眼差しが優しいのだ。そしてムギホシも同じく優しく、懐かしみが深い表情を向けている。


ムギホシを知っている人は今では多くないと思う。嬉しいだろうな。ドワーフ本星に来ることはバトゥの希望だったけど、ドワーフ本星に来てよかった。この星に降り立った時は物騒なところだって思ったけど。


そういえば、イルミルちゃんの誘拐未遂事件のことを聞いていなかった。聞いてもいいかな。っていうか、もう関わっているからな。こちらから聞いてみよう。


「俺達なら危険な人物がわかります。さっきみたいな帝国の工作員なんかは猶更です。だから、俺達でイルミルちゃんの身の回りの安全を確認したいと思いますが、やらせていただいても良いですか?」


ゼルコバさんはバトゥとムギホシを交互に見て、最後に俺を見極めるように見た。


「実は、ムギホシさんとバトゥもタツロー君ならそう言うだろうと私に進言してくれたのだよ」


俺が二人を見ると、ムギホシもバトゥも微笑んでいる。


「これはタツロー君とコテツ君の二人にお願いしたいから、向こうに行こうじゃないか」


その後、イルミルちゃんを如何に虎鉄から離すか全員で試みた結果、抱いてても話は聞けるだろうということで、そのままとなり申した。これはアイドルではなく女王だな……。


虎鉄には、俺が説明すると長いのでバトゥが説明してくれた。バトゥ曰く「タツロー様は説明すると必要な要素が抜けて逆に短くなるのです」だって。


「それで、イルミルちゃんと接触する可能性がある人を知りたいです。この建物でもいいですし、よければ区画にいる人のリストを見せてもらえないでしょうか?」


この質問にはイルミルちゃんのお父さんのマウーフさんが答えてくれた。実は「チトセ・インダストリー 総務部 部長」というのは、この星がチトセ・インダストリー本社だから総務部長というのは、簡単に言えば知事みたいな感じらしい。でも、普通の総務の仕事もやっているそうだ。

 

「可能性でいうと少なくともこのファーニス・タワーだけでも200,000人は超えますが……」


このピラミッドってファーニス・タワーって言うのか。でもなんと20万人! まぁ虎鉄も一緒に頑張ろうか……2、3時間は余裕かかるな。


「美味しいものを沢山いただいてしまったからニャ~」


お腹ぽんぽんに虎鉄が上機嫌で唄うように返事をする。


「え、いいのですか? ありがとうございます」


マウーフさんが礼を言うと、今度は「はい、はーい」と手を上げる幼女。


「本当に『見る』だけなんですか? 特殊な霊理力の使い手と先ほど仰いましたが、差し支えなければどこの星で学んだのか後学のための教えていただけると幸いなのですが。できれば使っているところをアタシのラボで拝見できると幸せなのです!」


異常な熱量で瞳を輝かせながら問うてくるはイルミルちゃんだった。


どこでって言われても「神の思し召し」としか言えないけど、まだそこまでは話すべきじゃないと思うのだ。俺は思いあぐんで虎鉄を見る。


「オイラ達は『地球』って星から来たんニャ。でも帰り方がわからなくなって、みんなに聞いて回っているんミャ」


アイコンタクトで「彼女には、ここまでは言った方が良い」と俺に語り掛ける虎鉄。


「でも、これ以上はまだ言えないニャ。ごめんミャ」


両手を上げてゴメンをする猫のポーズ! これをやられて「え~」と叫んで渋々受け入れるイルミルちゃん。さすがだ虎鉄!


「では、後ほどこの区画のファイルを渡しますね。優先順位を付けてお渡ししますが、一応この星のすべての従業員のリストも渡します」


この星のすべての従業員!? なんかやることがすごく多くなった気がする。でもまぁ、やってみるか。


でも、やることはそれだけではなかったのだ。


「実は、ハンター・ユニオンから二人に受けて欲しい依頼があるんだ。これはチトセ・インダストリーからの依頼でもある」


グンドさんが先ほどまでの気の良いオジサンからハンターの顔になっている。


「私からもお願いしたい」


そう言ったのはゼルコバさんだ。後ろにジルオレさんとネメセルさんも控えて頭を下げている。


二人っていうことは……俺と虎鉄のことだよな。


「わたしは別の案件があるから二人で行ってきてね」


ムギホシは先回りして答えてくれる。彼女はエルフだと判ってるから、予想ではそれ関係で何かあるんじゃないだろうか。


「いいよ。受けるよ」


俺は虎鉄から返事をもらう前に宣言した。だって絶対やるって言うんだもの。宣言した後、虎鉄を見たらニッコリと笑ってサムズアップをしてくれた。


「で、依頼ってなんニャ?」


俺達の返事が早いことに若干驚いたグンドさんだったが、それはほんのちょっとの間で今度は猛禽類のような笑みを浮かべた。


「近くにある衛星でモンスターを討伐してほしい」


「衛星って、宇宙空間に行くんですか?」


コクリと頷くグンドさん。


「それと、もう一組のパーティも参加するぞ」


「ひょっとして競合とか勝負するのかニャ?」


「いや2人では荷が重いから保険だ。ちなみにランク18の3人だぞ」


お~、いいんじゃないかな? でも、すでに虎鉄の目が勝負に燃えているのはヒミツだ。


「しかし、これで名実ともにスペース・ハンターだな!」


「で、クエストはいつから始めるニャ?」


グンドさん破顔した。


「では明日の昼でもいいが……」


「明日の昼に決定ニャ! そうと決まったらリストの確認を急いだ方がいいニャ! 今日はここでお開きミャ。ここに泊まるから、ここにリストを持ってくるニャ!」


俺とムギホシ、バトゥはそうなるかもって顔をしていたが、他のドワーフ族の皆は驚愕極まれりな表情でちょっと面白かった。ちなみに、ドワーフ本星は1日25時間で、今が午後21時。明日の昼まであと15時間くらいか。どれくらいリストは確認できるかな。


あ、ドワーフ族は皆って言ったけど、イルミルちゃんだけは満面の笑みを浮かべてたよ。この子はやっぱりどこか変わっていると思う。そのことを知らされるのはもうちょっと後になるけど、それは別のお話だ。

次回はステータスにも触れます。


読んでいただきありがとうございます。

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