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54 チトセ・インダストリー

リムジンのような豪華で煌びやかな反重力ビークル(ビークルと言えば良いらしい)は宇宙港を出ると長いトンネルに入った。


延々と数十キロを下ってゆく。結構長いなどこまで行くんだろう、と考えていたら虎鉄が俺を呆れた目で見詰めている。あ、そうかと思った、ナビね。


さっそく見ようと思ったところで一気に目の前が開ける――


トンネルを潜ると広大な地下世界――ジオフロントだ。


まさに正真正銘の未来都市だった。


数百層のビルが立ち並び、それは地の果てまで続いている。


ドワーフ本星とはここの地下世界をいうのだ。


その中にひと際巨大なピラミッドというか富士山のような巨大建築がある。


「そう、ここが今から向かうところですよ。私もこの目で見たのは初めてですが……」


俺と虎鉄が窓の外を食い入るように見ているとバトゥが軽く今から行くところと会う人についても教えてくれた。


しかし、ここで気になるのはやはりバトゥの出自だ。聞いてみると、なんと彼は宇宙が誇る天才科学者レオグリムの助手アンドロイドだったそうだ。


「ちょっと宇宙港で事件があったので時期を逸してしましたが、別に隠していたわけではなくその時が来たら言おうと思ってましたよ」


しれっと答えるバトゥーク78さん。


ちなみにムギホシはエルフィニアを出る時に聞いたそうだ。


なんだよー言ってくれよなー。


「先ほども言いましたが、ちょっとそのタイミングが脱線しただけです」


「じゃあ、このままお別れなのかニャ」


虎鉄はここにきてひと際真剣な表情だ。


「ちょっと待ってください。その話は後程。私もチトセ・インダストリーのになってからは初めて来たので……。それが終わった後にさせてください」


バトゥは頭を下げつつ引き続きこれから会う人についての説明に入っていった。


今から会うのは天才科学者のレオグリムの甥に当たるチトセ・インダストリー会長にジルオレさんだということだ。


この人とバトゥがバルボア・シティにいた時からやり取りをしていたそうだ。今日やっと会えることとなったのだが、誘拐未遂事件が勃発したので双方計画に齟齬が出ているみたいだ。


最初の頃バトゥが言っていた「チトセ」って今ではチトセ・インダストリーという超巨大企業になっている。


昔はチトセっていう名の町工場だったのが、今はドワーフ星のみならず宇宙に轟くチトセ・インダストリーになったという。というよりもう一つの惑星連合体がチトセ・インダストリーだ。


はっきり言ってドワーフ本星は、惑星全体がチトセ・インダストリー本社だと言っていいだろう。


あの富士山がチトセ・インダストリーの謂わば「会長室」だ。


そしてインダストリー・ギルドという組合も兼ねているらしい。ギルドの総長がレオグリムのこれまた甥に当たるネメセルさんで今日いらっしゃるそうだ。だから会った時にインダストリー・ギルドについて聞いてみよう。


ちなみにジルオレさんとネメセルは年齢を聞いたところ、ジルオレさんが450歳でネメセルさんが430歳とのこと。


平均寿命が500歳ってことはこの人達が最長老ってことだな。


で、さっきの女の子がジルオレさんの孫のイルミルちゃんで10歳とのこと。


あ、さっき慇懃無礼のアンドロイドは第8世代で最新型だそうだ。バトゥが第7世代だから、前にムギホシが言ってたようにやはり進歩はしていないんだろうな。ナビで見るとこんな感じだ。


『名称:メトゥース99

 種族:アンドロイド

 職能:チトセ・インダストリー

 脅威度:白 好感度:黄』



********************************************



ようやくチトセ・インダストリー本社に到着した! 社屋が巨大すぎて中々近づいて来なかったよ……。建物とか言えない。デカすぎ……。


そのあと、超速いエレベーターに乗って最上階と思われる会長室に降り立った俺達。


そこには、さっき見た老人が佇んでいた。やっぱり宇宙港で見受けた人で間違いはないようだ。


『名称:ジルオレ

 種族:ドワーフ族

 職能:チトセ・インダストリー会長

 続柄:レオグリムの甥

 脅威度:白 好感度:緑』



この老人が450歳なのか。思ったよりも矍鑠(かくしゃく)としているなぁ。身長は低いけどムキムッキで、やはり地球にいた時なら負けそうだと思う。


まずはバトゥに任せるべきだな。


「バトゥーク78と申します。ようやくお会いできて恐悦至極です。こちらがエルフ族の巫女ムギホシ様、ケットシー族のコテツ様、そしてヒューマン族のタツロー様です」


「チトセ・インダストリー会長のジルオレです。ありがとう、バトゥーク78。宇宙港で気付かなかった。すまなかったね」


見た目的に怖そうだと思ったら穏やかな喋り方だった。


「こちらこそバルボア・シティで身分証明書を再登録した時に、すぐに発見していただきましてありがとうございます。本日、ドワーフ本星に来ると申しておりましたが、まさか誘拐事件が起こるとは思いませんでした」


「宇宙港で阻止してもらって本当にありがとう。もし星から出られたらどうなっていたかわからんよ……。あなた方にも感謝のしようがない。本当にありがとう」


そう言ったジルオレさんが深く頭を下げた。こんな偉いお人が頭を下げるなんて滅相もないと思うのは、まだ日本にいた時の感覚が抜けないからだろうか。


「ムギホシ様、お久しぶりです。連絡ができなくなってからどうしているかと……。まだ小さな頃、通信で話したこともありますよ」


ジルオレさんはムギホシに話題を振る。


「え、わたし知らない……そうだったの。バトゥも赤ん坊の時わたしと会っことあるって言ったけど、祖父が死ぬ前のことはあやふやで憶えていないの。……でも優しいおじさんがいたのは憶えているわ」


「おそらく、おじさんと言うと父のゼルコバですね。レオグリムの兄のゼルコバです」


「ゼルコバ様がご存命と伺いましたが……」


バトゥが「ゼルコバ」という名前に大きく反応した。


『私はここだよ』


最上階だと考えていたけど、さらに上があったらしい。天井からエレベーターが降りて来た。


俺と虎鉄はナビをフル稼働せねばとアイコンタクトをする。


『名称:ゼルコバ・チトセ

 種族:ドワーフ族

 職能:チトセ総帥

 続柄:レオグリムの兄

 脅威度:白 好感度:緑』


念のため年齢を見ておこう。700歳なのか! すで補助の機械を使わないと歩けないし、喋れもしない。でも一人でまだ動けるようだ。


「ゼルコバ様……まさか会えるなんて……レオグリム様がここにいらっしゃらず誠に申し訳ございません」


『いいのだよ。バトゥーク78、よく帰ってくれたね。ありがとう』


そう言って、固く抱き合う二人。


『行方不明のレオグリムも、もうそろそろ死亡にするしかないかと考えていたところで、お前が帰ってきてくれたのだよ。私には見た通り時間があまりない。だから、その話をしたいと思っている』


寿命が尽きかけてることを知っているのだ。


バトゥも「最高責任者」と直接話したいということでドワーフ本星まで来たかったんだな。でも、まさかここに来るまでゼルコバ氏が生きているとは聞いてはいたが信じられなかったようだ。


『しかし、レオグリムの話は後でしよう。それくらいの時間はあるだろうさ……。それよりもまずは曾孫を助けてくれて感謝しなければなるまい。ありがとう』


「チトセ総帥」だって! でもドワーフ族は家族愛が高いみたいだ。


『ムギホシ様とは個別で話をしたいと思います。それでよろしいですか?』


「わたしもその方がいいです」


ムギホシも「あの時のおじさん」と話せるなんて……よかったなぁ。横を向くと何故か虎鉄が涙を流していた。俺は我慢してるぞ。


その時、俺達がこの部屋に入ってきた時と同じエレベーターが開いた。


『本人が来たぞ。私も久しぶりに会えるんだよ。我が家のアイドルの登場だ』


俺達も振り返ると、一人の幼女と6人の大人がやってきた。


『名称:イルミル

 種族:ドワーフ族

 職能:チトセ・インダストリー会長付開発本部長

 続柄:ゼルコバの曾孫

 脅威度:白 好感度:緑』


 名称:マウーフ

 種族:ドワーフ族

 職能:チトセ・インダストリー 総務部 部長

 続柄:イルミルの父

 脅威度:白 好感度:緑


 名称:ミルミ

 種族:ドワーフ族

 職能:チトセ・インダストリー 会長室 室長

 続柄:イルミルの母

 脅威度:白 好感度:緑


 名称:ネメセル

 種族:ドワーフ族

 職能:インダストリー・ギルド 総長

 続柄:ゼルコバの二男

 脅威度:白 好感度:緑                   』


あとの3人はメイドって表示されたが、はて……? と思ったところに――



「じゃじゃーん! アタシがイルミルです! この度は助けてくれてありがとうございました。貴方がエルフの姫様のムギホシ様で、騎士のヒューマン族とタツロー様とケットシー族のコテツ様ですね。アタシはケットシー族は初めて見るの! はぁ、噂に違わぬ可愛さだわ……。このために至急取り寄せたオヤツがあるの! お召し上がりくださいますか? さあ、こちらに座って。さぁ、さぁ、コテツ様、こちらよ。アタシの横にいらっしゃって!」



わ! 大音量で大量のことを喋る幼女が現れた!


でも、さっきの疑問の方が先だな。


「ねえ虎鉄さん、これ言ってもいいかな」


「……イイと思うニャ」


俺は極めて普通に言い放った。


「このメイドの中に帝国工作員がいるんだけど――」


そう言った途端にメイドの一体が窓際にジャンプする。


予想していたから、俺はいつもの弱体化魔法に「沈黙の魔法」を加えて放った。


「捕まえましたが、どうしましょう?」


イルミルちゃん、出だしを潰してごめん! 

次回はハンター・ユニオンの話になる予定です。


読んでいただきありがとうございます。

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