53 バトゥの帰郷
トランクにいたのは、とても可愛らしい女の子だった。まだ年齢はわからないけど地球上の感覚だと10歳未満じゃないかなと思う。でもドワーフの寿命が500歳だとすると、ちょっと年齢はわからないな。
女の子は緩くウェーブのかかった長髪で、10歳未満のヒューマン族と変わらない見た目をした子供だった。
「ナビで見たけど、いざ見ると驚くニャ」
「薬で眠らされているみたいね」
「命に別条はないみたいだ。ナビによるともうすぐ起きるみたいだ。取り敢えず良かった」
「服が高級というか豪奢な気がします。身代金目当ての誘拐でしょうか?」
バトゥも警備員と軍の相手は終わったようだ。早いな。さすがこの星で長く暮らしていたことがあるアンドロイドだ。そういえば作られたのは「チトセ社」って言っていたな。まだ存在している企業なんだろうか。
「いや、向こうは帝国の工作員だったからそれ目当てではないと思うな」
「あの人数だしニャァ」
そのとき警備員と軍人を掻き分けて一人の老人がトランクに駆け寄ってきた。
「イルミル! イルミル、目を開けておくれ!」
後ろからボディガード……違うな武器を持ってるから私設軍隊が何かだと思う――が10人程現れて警備員と軍人に下がるようにボディランゲージをする。俺達にも下がれサインを出しながら近寄ってきた。これができるなら身代金目当てもあるかも……。
それにしても、その老人はまさしくドワーフ族だ。小柄で屈強そうな男性だ。どれくらい屈強そうかと言うと、老人は130センチくらいの身長だが、地球にいた頃の俺ならワンパンで負けると思う。
「あの老人は……」
後ろに下がりながらバトゥが呟いた。ひょっとして知ってる人なのかな? そうだったら――
「ハンター・ユニオンの方はこちらに来てください」
おっと了解しましたよ。バトゥにあとで聞いてみよう。
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俺達は宇宙港に常駐しているドワーフ軍の施設で簡単な取り調べをした。
取り調べといってもバルボア星とハンター・ユニオンのバルボア・シティ支部の勲章2つが効果あったと見えて、はいorいいえで済む質問を個別にいくつかされただけだ。
その後4人が揃ったところで、最期にこちらからの質問を受け付けてくれた。この星の軍隊って優しいなぁ。あとハンター・ユニオンのこの支部には既に連絡しているようだ。至れり尽くせりだな!
聞くことはないけど、あの女の子の容態については聞いておきたい。
『名称:子供
種族:ドワーフ族
職能:なし
脅威度:白 好感度:黄』
あの女の子の簡単な情報はすでナビに知ってはいる。それでもそれ意外に聞けたらバトゥの役立つかもしれない。
ところが軍人は言葉を濁して「それが機密事項になっておりまして……」と言うばかりだ。すまんバトゥ。
「起きて元気なのかだけでもいいから教えてくれないかニャ」
「それだけなら……。元気ですよ」
微笑んでいった。この軍人はやっぱり良い人だな。
俺達も一安心だ。ではこっちの用は終わったと思う。
「それとハンター・ユニオンからメッセージが来まして『ドワーフ本星支部によければ後日来てください。報酬も出ます。』とのことです」
その軍人さんがそう言って敬礼する。俺達も手を振って施設の外へと向かった。
俺は出口に向かいながら、呼び出しだけど気分的に『出頭してください』ではなくて良かったと思った。なにより報酬が出るのが素晴らしい! あとで聞いた話によると、バルボア・シティの支部長からくれぐれもよろしく頼むと言われていたらしい。ラシャヴァティ支部長ありがとう。
軍の施設を出ると車が停まっていた。車と行っても四輪車ではなくタイヤで付いていない 反重力テクノロジーを使ったホバーバイクの車版だ。それも滅茶苦茶豪華な車だ。前に一度バルボア・シティの監督官が乗っているのを見たことがあったが、こっちと比べると日本でいうと軽四輪とロールスロイスくらい違う。
そのロールスロイスの横に一体のアンドロイドがこちらを睥睨している。なんか人を寄せ付けない雰囲気だ。偉い軍人さんが来ているのかなぁと思って見ていると……
「バトゥーク78様のお戻り、おめでとうございます! 迎えに参りました!」
え? 俺と虎鉄は呆気にとられた。
「お二人には落ち着いたらお話しようと思っていたのですが、こんなにも早いとは……申し訳ございません」
「え、バトゥが!? ムギホシはその態度ってことは知ってたの?」
「わたしはバトゥにはっきりと聞いたわけではないけれど、そんなことだろうなって」
ムギホシはバトゥを見ながら苦笑する。
「皆様はバトゥーク78様の御近付だと聞いております。それでも『バトゥーク』シリーズの現存する最古、第7世代のバトゥーク78様ですから口を謹んでください」
「オイラ達には厳しいミャ……」
アンドロイドはそんなことは無視するように車のドアを開く。
「さあ、皆様お待ちですよ。バトゥーク78様、230年振りのチトセ・インダストリー社ご帰京ですから!」
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