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パンツァーアンドロイド

「ジェームズがデカブツと随伴歩兵を分離しつつ有るらしい。こうなったら陣地に着く前に潰してぇところだ」


 アルトゥルは冒険者をしている転生者を中心に集めた攻撃隊の兵士50人を相手にブリーフィングをしていた。


「今居るここん所が開けてるが、陣地前の開所に抜ける時に狭い所を通る必要が有るらしい。そこで撃破してくれ。だが、無茶だけはしないでくれ」


 アルトゥルは巨大オートマタが今まさにジェームズ達と交戦している林の開けた場所を指差し、次に幾つか有る狭い谷状の隘路を幾つか指差した。


「対戦車戦闘と同じ要領で良いとは思うが、経験有るのは……」


 アルトゥルは転生した集まった部下を眺めて考えた。


「……ショーンだけか?」

 集まった中で実際に戦車と対峙したことが有るのは一緒の小隊だったショーンぐらいだった。他は訓練で習ったりはした程度だ。


「そもそも、対戦車兵器の類は有るの?」

 関節や油圧系を何とかすれば止まると聞いていたが、銃程度で何とかなるとは考えていないショーンが手を上げた。


「ああ、コイツを使ってくれ」

 アルトゥルは足元の木箱を開けると、中に入っている物を手に取った。


「ショーンも使ったことが有るだろ?コレを10本貰ったよ」

 手にとって見せたのは、ニュクスから貰った鹵獲品のパンツァーファウストだった。


「まあ、有るけど……」

 他の兵士が使えるか判らなかった。


「使い方は一緒みてぇだから、やり方を教えてくれ」





「停止だ!止めろ!」


 操縦室に残った正操縦士が席の左側に2本伸びているレバーを両手で同時に引くと、オートマタは関節から鈍い軋み音を立てながらその場に停止した。

 急停止だったため、6本有る脚の内、左側の真ん中の脚が浮いた状態で。中の乗員達も急な動揺で座席から転げ落ちる者も居た。


「パンツァーアンドロイドを起動しろ!」





「停止した。砲塔のスリットを狙え」

 歩兵に攻撃を加えていたジェームズの部下達が、一斉に側面の砲塔に空けられたスリット(覗き窓)に向け射撃を始めた。




「閉めろ!」

 銃弾が飛び込んできたので、乗員が砲塔のスリットを内側に備え付けられたスライド式の装甲板で閉じたが、銃弾が何発か飛び込んだ。


「上部機銃、狙えるか!?」


 砲塔の上部に引き込み式の機銃が用意されていたが、呼び掛けに反応しないので既に戦死した可能性が頭に過った。


『射撃止め!パンツァーアンドロイドが出るぞ!』

 車長からのマイクが砲塔内に響いたが、既に砲塔内も停止時に集中砲火を受けたので、乗員の半分が何かしらの怪我を負い、射撃を継続できる状況ではなかった。





「キィヤァァァアアア!」

 剣を両手に持ち猿叫を響かせながら斬り掛かってきたピウスツキ卿の斬撃を剣で受けようと兵士が構えたが、受け止め切れず兜ごと頭を叩き割られ絶命した。


 オートマタと距離が離れた歩兵を見付けては、ジェームズ達が飛び道具を持った兵士を無力化し、剣や槍を持った兵士はピウスツキ卿達が無力化する。

 ここまで上手く行くとは思っていなかったピウスツキ卿が周囲の様子を見ると、遠くでは部下に斬り掛かろうとする兵士がドミニカの放った矢に胸を射たれた。


「オートマタが動くぞ!」

 息子のハイムが叫ぶ声が聞こえ、ピウスツキ卿が声がした方を見ると止まっている巨大オートマタの上部に空けられた、迫撃砲の砲座が見えるだけで状況が判らなかった。



「ハイム殿(どん)!退がりもそ!」

 既にノビた反乱軍兵士の首根っこを掴んだまま仁王立ちしていたハイムは先輩騎士の呼び掛けで巨大オートマタから目を離した。


 ノビた兵士を槍を構えた兵士に投げ付け、ハイムが走ると巨大オートマタから警告音が響いた。


「……何だ?」


 走りつつ振り返ると、黄色い回転灯も光り、オートマタ中央部の底部が左右に開いた。


「何か出て来るんだろ」

 木立の陰に潜む他の騎士が言った通り、何かが6体音を立てて落ちた。




『パンツァーアンドロイド降下しました』

「起動させろ!」





 しゃがんだ状態だったのではっきりと判らなかったが、体長3メートルも有る2足歩行のオートマタが立ち上がった。


「2足歩行のオートマタが巨大オートマタから6体出たぞ!」


 声がした方もオートマタの1体が首を向けると、観音開きになっている巨大オートマタの底部に手を伸ばし、武器を手にした。


「銃だ!」


 暗い緑色に塗装されたオートマタは大砲並みに大きく長い銃を取り出し、声がした方に銃口を向けた。



「逃っげぇ!」

「っちょ!?あんちゃん!?」


 先程叫んだ騎士は敵わないことを悟り、自分の弟と従士を抱え逃げ始めた。


 直後に、潜んでいた木立の中でも1周5メートルは有りそうな一番太い枯木に幾つも大穴が空き、大きな音を立てて倒れた。


「引けぇ!」


 ピウスツキ卿が叫ぶと、副団長が退却の合図を角笛で吹いたが、それを聞くまでもなく大半の騎士団員は逃げ始めていた。



「うわった!?」

 起伏が激しい林の中なので、直接射線が通っている訳ではないが、オートマタが撃ち落とした木の枝や破片が次々と落ちてきた。


「鹵獲品と全然違うぞ!何だあの威力!?」


 細部のデザインは異なっていたが、オートマタ自体は同じ物だと思われた。だが、持ってた武器は鹵獲品は15ミリの機銃だったのに対し、今暴れているものは遥かに高威力の機銃を使っていた。


「アレの薬莢見たかよ!?40ミリぐらい有るぞ!」

 幸い連射性は高くなさそうだが、不用意に近付けなかった。




「くそ!」

 離れた場所に居たジェームズの近くにも銃弾が飛んできたが、地面に当たると弾け、土が周囲に飛び散った。


「榴弾か」


 音を聞こうとヘルメットの外に出していた耳の中に土が入り、ジェームズは土を外に出そうと必死に頭を振った。


「中尉!ご無事で!?」

 部下の1人が這うように起伏を乗り越え、足元に滑り込んで来た。


「俺は平気だ!耳に土が入っただけだ」


 また2発銃弾が飛んできので、ジェームズは慌ててヘルメットを被ると木片がヘルメットに当たる音が響いた。


「俺達も陣地に退くぞ!」

「Yes,sir!」

 ジェームズが女に転生している事を忘れた部下は、信号銃に赤い信号弾を装填し空へ打ち上げた。




「おいおいおいおい!?どうした!?」

 騎士団に続き、ジェームズ達が転がる様に陣地に入ってきたので、砲兵隊の兵士達は土嚢の向こうから手を伸ばし、遅れて到着した騎士団達を引き寄せた。


「2足歩行型のオートマタが出てきたんだ。でっけえ機銃を使ってやがる!」


「数は?何体出てきた?」

「はっきり見えたのは6体だ。鹵獲品と似たようなもんだと思うが、ダークグリーンの塗装で、頭部は東ドイツ軍のヘルメットみたいだった。鹵獲品のシュタールヘルムとはまた違う」


「マジか……」

 陣地に辿り着いたばかりのショーンは陣地を守る砲兵隊の指揮官を捜し始めた。


「あ!居た居た!ギレイ少佐!」

 輓馬を器用に使いピウスツキ卿から届けられた大砲を設置しようとしている砲兵の中にリッキーこと、エリック・ギレイ少佐を見付けてショーンは声を掛けた。


「あんたは……ああ、ライバックさんか」

 一緒に三途の川から返ってきたショーンだと気付いたギレイ少佐は近付いてきた。


「ハーバー将軍に言われて巨大オートマタを叩く予定だったが、オートマタが出たってな!?陣地の守りを手伝うがどうする!?」


 前に出られないので、ショーンは砲兵隊と迎撃する事を考えたのだ。


「ああ、大砲を新たに設置しているが人が足りない所だったんだ。砲の援護をしてくれ」


 土嚢である程度囲ってあるが、剥き出しの砲を開けた場所に置き、オートマタの前に曝け出すと一方的に撃破される恐れが有った。それ故に、オートマタの死角になる場所に砲を据え置き、歩兵と撃ち合いをさせて気付かれ難い状況を作る必要が有った。


「了解!馴れたもんさ」


「そうだ、コレを持っていってくれ!」

 ショーンが前面の塹壕に向かおうとしたが、ギレイ少佐に話し掛けられ足を止めた。


「工兵がくれたダイナマイトだ3ダース有る。もしも上手くいかなかったら狼男に変身して巨大オートマタの開口部に放り込むつもりだ」

 ダイナマイトを見せられたが、ショーンはギレイ少佐の肩を持って、諭すように話し掛けた。


「任せてくれ。コレでもドイツ野郎の戦車を潰した経験が有る。あと、1ダースくれないか。良い使い方を知ってる」

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