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田舎の厄介者、王都で転生特典の【魔法生成AI】を使い聖女を救ったら人生が激変してしまう  作者: コータ


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4/24

成功

 黄金の光と共に、スマホのような形がぐにゃりと変化し、腕にそのまま巻きついた。


「うおわ!?」


 ビックリしながら後ずさったけれど、驚きはむしろこれからが本番。


 いつの間にか周囲が光り出している。その輝きは赤く、まるで火みたいだ。腕輪のようになった魔道具も同じように光っている。


 続いて、俺を囲むように魔法陣が現れる。まるで必殺技でも放つんじゃないか、という迫力だ。


 これが初歩の魔法だってことに、驚きを禁じ得ない。


 気がつけば左手が前に出されており、手のひらが上になっていた。


 そして左手の上に、何かが集まってきている。小さな火種のようなそれらは、やがて寄り集まって勢いを増し、丸く大きな球へと変わる。


「これが……魔法……」


 唖然とした。ゲームで目にするものとは全く違う、本物ならではの迫力がそこにあった。


 赤々とした輝きに神聖さすら感じる。


 俺は少しの間、手のひらより少し上に作り出された火球に魅入っていた。


「じゃあ、使ってみるか」


 イリスに書かれていた工程一から五までは完了している。あとは魔法を対象に向けて放つだけ。


 でも、最初だとそれもどうやるか迷ってしまう。


 恐らくだが、左手を対象に向ければ良いと考えた俺は半身に構え、少し先にあった小岩に手を向けてみた。


「いけ、ファイアボール!」


 魔法の名前は言う必要がなかったかもしれない。ただなんとなく口走っていた。


 放たれるであろう瞬間となり、一気に緊張が高まっていく。


 だが、ファイアボールは一向に側から離れない。


「あれ?」


 何か間違っていたんだろうか。俺はだんだん不安になってきた。


 とりあえずイリスに確認しようかと思い、右手で魔道具をいじる。


 どうやらこの状態でも、チャット画面は普通に表示されるようだ。


 タップもできる。なんというか、凄い文明の利器だなと感心した。


========

 ファイアボールは出来上がったけど、対象に向けて飛んでいかない。

 どうすればできる?

========


 すると、またも回答はすぐに来た。やはり動きが地球のAIより早く感じられる。


========

 ファイアボールを作り上げたけれど、対象に使用することができないのですね。


 魔法を使用する際の動きは多種多様となりますが、ファイアボールには二種類の方法があります。


 1.対象に向けて、球を投げるように手を振る

 2.対象に手のひら、または杖を向け、微量の魔力を添えて撃ちだす


 初心者は1がおすすめです。

 2のほうが最終的には飛距離、速度、命中精度といったあらゆる点で秀でておりますが、魔力をわずかながら追加する必要があるため、消耗が激しくやり方も慣れが必要となります。


 他にも魔法のやり方についてお困りの場合にはご質問ください!

========


 なるほど。普通に投げるような感じでいいのか。とりあえずやってみよう。


 昔友達とやったキャッチボールを思い出し、振りかぶってみる。


 ファイアボールは少しだけ移動し、こちらの動きに合わせている感じがした。


 続いて、思いっきり左手を前に振ってみる。ただ全力で投げる動作をした。


 目の前に一瞬だが火花が散る。


 気がつくとファイアボールは、あっという間に小岩まで飛んでいった。


 速度はどれくらいか想像もつかない、真紅の弾丸が岩に襲いかかる。


 しばらくはその場に残り続け、やがて煙と共に消えていった。


「やった。魔法だ……魔法ができた」


 前世でも味わったことがない、爽快感と達成感が少しずつ押し寄せてくる。


 頭からつま先まで感動で満ち溢れ、気がつけば自然とガッツポーズをしていた。


 この時ほど嬉しかったことはない。高校や大学に合格した時や、希望の会社に内定した時など、確かに喜びはあったけれど、ここまでの爽快さはなかった。


 もう一回ファイアボールを放ってみたい。というか、新しい魔法も覚えてみたい。


 胸の奥から意欲が湧き上がってくるが、同時に違和感も覚えた。


 気がつけば体がフラついている。これはどうしたことだろうか。早速イリスに聞いてみたところ、このような返答が返ってきた。


========

 魔法を使用したあと、体がふらつき、頭がぼうっとするという症状は、魔力枯渇寸前と推測されます。


 魔力枯渇とは、魔力を持つ存在が、魔法の使用などにより魔力がなくなった状態を指します。


 魔力枯渇状態となった場合、多くの術者は気絶します。魔力は一定時間経過で徐々に回復し、全体魔力の約3%まで回復したところで目を覚ます人がほとんどです。

 上記データはレグナス魔法協会より発表されたものとなり、百年以上前から現在に至るまで、魔法に関わる人々の一般常識となっています。


 魔力枯渇寸前の場合には無理せず休息を取ってください。

========


 俺の魔力が尽きかけている。よくゲームの世界では起こることだが、大体の場合魔力がなくなってもキャラは普通に立っているものだ。


 しかしこの世界では、魔力が切れるということは大きな問題のようだ。気絶なんてしたら、戦闘中ならまず殺されてしまうだろう。


 それと、レグナス魔法協会ってなんだという疑問があったが、ふらつき過ぎて細かく確認している余裕がなかった。


========

 ありがとう。今日はもう終わることにする。

 電源はどうやったらON・OFFできる?

========

 どういたしまして!

 本日はお疲れ様でございました。

 今回のようにご連絡いただければOFFにいたします。

 また、ONにしたい時はチャットを入力する箇所を触れていただければ起動いたします。

 またのご利用をお待ちしています!

========


 どうやら電源の入り切りは簡単らしい。


 とにかく今日はもう辞めておこう。そう思いフラつく足で家に帰ろうかと思ったが、ポールが起きていたら何を言われるか分からない。


 特に何もすることはないが、どこかでやり過ごすことにするか。


 そう考え、俺は村の中を適当に散歩することにした。


 ◇


 ファーガソンの村は田舎だけあって、とにかく自然が豊かだ。


 田んぼが沢山あって、周りは山に囲まれ、村の中心には美しい川が通っている。


 景色だけを見れば長閑でいい。だが本当に住み心地が良いかは、どういう人間が周りにいるのかで決まる。


 この村は総人口が千人に届かない。自然と顔見知りも多いのだが、大抵は人間関係が出来上がっており、権力を持っている連中というのがいる。


 そいつらはここでは、まるで貴族のように振る舞っている。例えば村長、村役場の偉い人、行商人や村にたった一人だけいる傭兵とか。


 特に傭兵——ゴルゾーという五十そこそこの男だった——については印象的な事件があったのだが、それは後ほど語ることにする。


 ちなみにパメラの両親も、先にあげた連中ほどではないが村では上位にあたる。前世でいうスーパーマーケットのようなお店を経営しており、村の中で一店舗しかない。


 閉鎖的な村において、こういう人たちは代えがきかない。


 いなくなったら困る連中に対して、村のみんなは極力怒らせないように気を使っていた。


 それと慣わしというか、いろいろと守らなきゃいけない暗黙のルールがあり、個人的にはそれも好きにはなれなかった。


 一例を挙げれば、どこかに旅行して帰ってきた時は、村長を含めてお偉いさんにお土産を持っていかなくてはならない、とか。


 村の行事(お祭りとか懇談会のようなもの)には必ず参加しなくてはいけない、とか。


 こういった暗黙のルールを破ってしまうと、途端に扱いが酷くなることを覚悟しなくてはいけない。


 仕事を教えてもらえなくなる、無視される、除け者にされたりいじめを受けるなど、まるで子供がするような真似を大人にやられるのだ。


 ちなみに散歩している時、何人か村の人とすれ違ったので挨拶をしたが、睨まれるか無視をされるかのどちらかだった。


 原因についてはポールの評判が大きいだろうが、これはきっと大人になっても続く気がしていた。


 一度ついてしまった悪い印象は、そうそう払拭できるものではない。だから俺は、いずれはファーガソンを出て行きたいと思っていた。


 しかしほとんどの人間が不満を持ちつつも、この村から出ることが叶わないという現実を、この時はまだ分かっていなかった。


 結局散歩をしていてもあまり気持ちが晴れず、また木陰に隠れてぼんやり眠る。


 夕方くらいに家に帰った時、ポールはまたいなくなっていた。書き置きもなく、何処に行ったのかも分からないが、夜中になって戻ってきた。


 そしてすぐイビキが聞こえてきて、それがあまりにも大きいものだから、なかなか寝つくことができずにいた。


 酔っ払って帰ってきたので殴られると思っていたが、そんな気力もなかったようだ。


 でも次の日になると、奴は怒り顔で俺を起こしてきた。


「おい! 全然仕事が進んでねえぞ。今日はしっかりやれや。それと、隣のラゴスんとこも手伝ってほしいとよ。お前、向こうも手伝ってこい」

「一つの仕事で精一杯だけど」

「ごちゃごちゃ言うんじゃねえ! 飯抜きにするぞ」


 飯は大抵パンばかりだった。それとポールは金がなくなってきたのか、日に日にご飯の量が少なくなっていた。


 これ以上ご飯を減らされたら命に関わる。


 すでに痩せ気味だった俺は、渋々ポールの命令に従うしかなかった。


 これらは暗い少年時代の話だが、転生特典と前世の知識がなければ、一生こんな感じで生きていたか、または餓死していたと思う。


 午後までしばらくかかって、なんとかして畑仕事を終えた俺は、また誰の目にも触れない道端の木陰に座りこみ、AIイリスを起動させた。

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