意外と高い!?
ただこの時、ちょっと心配に思うところもあった。
俺は十歳でありながらも、毎日のようにレベル上げに勤しんでいる。
そんな子供はなかなかいない。悪目立ちしてしまうと、碌なことにならない気がする。
「あ、ええと。俺とかが計測器とか使っちゃっていいのかなぁ」
あえて子供っぽく、困ったような感じで言ってみる。
「大丈夫大丈夫! レベル計測器は無料だし、今日なんて誰も使ってないぜ」
「ねえ坊や達、ちょっとだけやってみましょうよ」
この二人の冒険者は自然と息が合っている。恐らく付き合いが長いのだろうと考えていると、横からパメラも割り込んでくる。
「面白そう! ねーリザン、やってみようよ!」
「じゃあ、やってみるか」
その後も三人はやる気満々だったので、とりあえずやってみることにした。
職務中なのに今にも寝てしまいそうな受付嬢の隣に、レベル計測器という看板が下げられたカウンターがある。
一つだけの椅子に先ほどのお兄さんが着席した。
「よし。まずは俺からやってみせよう。大丈夫、簡単だから見ておきな」
レベル計測器カウンターの上に置かれている。全てが銀色で統一されていた。
鳳凰のような鳥が、丸いオーブを包んでいるような彫刻。それが台座と一体化しており、見るからに豪勢というか特別感がある。
「カッコいいだろ。このレベル計測器は、レグナス魔法研究所の最新作なんだ。今のところはローディア大陸にだけ支給されてるらしいぜ。なんとたった三台しかない」
お兄さんは最新のレベル計測器について軽く説明すると、右手をオーブに優しく触れた。
すると、レベル計測器全体が淡い銀色の輝きに包まれていく。
「わああ……きれい!」
パメラは少し後ろから、オーブが放つ神々しい輝きに見惚れていた。光は一分もしないうちに収まり、代わりにオーブに何か文字が浮かび上がっている。
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名前:エッジ・アロウズ
性別:男
レベル:22
HP:1543
魔力:0
体力:256
素早さ:171
賢さ:89
運:148
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「なんか文字が浮かんでる! お兄さんすごーい! とっても強いんだね」
パメラは数値を見て軽くジャンプしていた。俺は初めてのステータス画面から目を離せずにいる。
どうやらこのエッジというお兄さんは、魔力適正はないらしい。典型的な戦士タイプといったところだろうか。
体力が特に高くなっている。これが高いほど頑丈で、かつパワーがあるという証拠になる。
「あ、久しぶりにレベル上がったのね。じゃあ次は私の番」
今度はお姉さんが腰を下ろし、同じように手をオーブにかざす。結果はなかなかに興味深いものだった。
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名前:モニカ・リーン
性別:女
レベル:20
HP:1009
魔力:107
体力:200
素早さ:188
賢さ:125
運:160
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「やっぱ優秀だよなお前は。魔法も剣も使えるってのは、食いっぱぐれがねえ」
「エッジこそ、いつだってお誘いの声ばかりじゃないの。まあ、冒険じゃないお誘いもあるみたいだけど?」
エッジと呼ばれた青年がぎくりとした顔になって、それを誤魔化すように笑っていた。
モニカという人は、魔法剣士タイプのようだ。エッジほど腕力と体力に秀でていないが、その分を魔法でカバーする立ち回りができる。
以前イリスに聞いて知ったのだが、このタイプは珍しく、重宝はされるが器用貧乏になってしまうことが多いらしい。今後の成長次第のようだが。
さて、次は俺か……と気が緊張していた時、パメラがサッと手を挙げた。
「お姉さんもすごーい! じゃあ次はあたしやりたい! あたしもいい?」
「もちろんよ。どうぞ」
パメラは嬉しそうに椅子に飛び乗り、すぐにオーブに手を伸ばした。先の二人よりも小さな手がオーブに触れる。
エッジやモニカよりも淡い輝きが、静かに広がって消えていった。
さて、友達のステータスはどんな感じかな、と予想はできていつつもオーブを覗いてみた。
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名前:パメラ
性別:女
レベル:2
HP:143
魔力:9
体力:58
素早さ:60
賢さ:52
運:98
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「おお! お嬢ちゃん、これはなかなかに才能があるぜ」
「まあ! レベル2なのに、魔力が9もあるの? 運もずば抜けているわね」
パメラのステータスを見て、大人二人は興奮していた。どうやら彼女は、冒険者としての才能もあるようだ。
っていうか、一体いつの間に戦いを経験していたのだろうか。レベル1だと思っていたのだが。
「では最後に少年、君の番だな」
自分の番が来て、なんとなく落ち着かない気持ちになった。
恐らくパメラよりは上だけど、エッジやモニカよりはけっこう下、というレベル帯に落ち着くはずだけど、意外と低かったりすることも全然ありえる。
適当に座り、適当に手をかざしてみた。これだけで計測ができるというのは、とても便利だなと思いながら。
すると、やはり俺の場合も他の三名にもれず、銀色の光が周囲を染め始めた。
自分の計測となると、やけに長く感じるから不思議である。
ちょっと欠伸が出そうな頃合いになって、ようやくオーブは俺のステータスを表示した。
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名前:リザン・ローグ
性別:男
レベル:19
HP:902
魔力:99
体力:176
素早さ:193
賢さ:161
運:172
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…………あれ? 思っていたよりレベル高いぞ?
最も弱いとされる魔物を狩り続けていただけで、こんなに上がるだろうか。
俺が疑問を持っているなか、他三名はそれどころではなかったようだ。
誰もが唖然としていることに気づいたのは、それから少しのこと。
「……レベル19?」
「まあ、どうなってるの?」
大人二人は半信半疑という表情だったが、パメラは分かりやすく驚いていた。
「えええ! リザン、いつの間にそんなに強くなってたの! あ、そっか……リザンはずっとお外でむぐぐ、」
「あー、まあ……なんていうか小さい頃から鍛えられてから……あはは」
村の周辺でレベル上げしてるから、なんてことを言われると厄介なので、俺はさりげなくパメラの口を塞ぐ。
「これは妙だな。もしかしたら計測器の故障かもしれん。もう一度測ってみようか」
「坊や、今度は左手をかざしてみて」
「あ、えっと。もう大丈夫です! 故障だと思います。じゃ!」
俺はパメラの手を引っ張り、さっさとギルドから逃げ出していった。
◇
「ねえ、出ていっちゃって良かったの? お兄さん達、リザンのこと気にしてたよ」
「いいんだよ。騒ぎが大きくなると面倒だから」
そう言い、俺はマントを羽織って杖を取り出した。戦いに出るための準備は、そんなに時間のかかるものじゃない。
メタルビーストは、どうやらサランの町東門を出てしばらくにある、とある洞窟に出没するらしい。
「ねえ、本当に一人だけで大丈夫なの?」
「心配いらないよ。ここを出たら、すぐにゴーレムを出すから」
念の為パメラからポーション二つと、マジックポーション一つを受け取りながら、俺は苦笑していた。
普通に考えれば、子供が一人で魔物退治なんて無謀もいいところだ。でも事前にイリスから多くの情報を得ているし、作戦だって立てている。
ただ心配なのは、パメラを一人にしてしまうことだった。
事前に調べたところ、サランの町は治安が良く、特に公園や住居付近は憲兵が定期的に巡回しているらしい。
だからこの時間帯にパメラが悪い大人に誘拐されることもないだろうけど、確実とも言い切れない。
目的の場所はサランの東門から行けるのだが、さてどうしようか。
とはいえ、特に良い案は浮かばない。やっぱり公園で待ってもらうことにした。
「知らない人に話しかけられても、ついて行かないように。危なくなったら、叫んで憲兵のところに逃げるんだ」
「もうー、分かってたってば!」
俺はつい心配になって、同じようなことを何度かパメラに伝えてしまう。
ちょっとむくれた顔になったパメラだったが、俺が門へ向かうと寂しそうに追いかけてきた。
「太陽がてっぺんに登ったら、帰ってくるんだよね?」
「そうだ。長くはいない」
「危なくなったら、すぐ帰ってきてね。約束だよ」
「分かってる。大丈夫」
「むうう」
「そう心配しないで。俺だってけっこう、魔物とやり合ってるからさ」
「……うん。待ってる!」
心配になっちゃう気持ちは分かる。
俺は気を引き締めつつ、サランの東門へ向かった。




