二人で空へ
この時はまだ、飛行魔法は一日一回しか使えなかった。
だから見せられるのも一度だけ。秘密基地でそう説明すると、パメラは少しだけ悩んでいた。
「えー。どうしよ。ねー、あたしをおんぶして飛んだりできる?」
「おんぶ? いや、無理じゃね」
どうやらパメラは、空を飛んだ景色を直接見たいらしい。
気持ちは分かる。でも、流石におんぶなんて無理だよなぁ。
と思いつつ、行けるかどうかAIに聞いてみる。
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飛行魔法において、何かを背負ったり、手にした状態で行うことが、距離や速度に影響があるか、という質問ですね!
リザン様の体力がもつ場合には、特に問題ありません。
飛行魔法の距離や速度は大きくは変わりませんが、術者の筋力や持久力がもたない場合には続けていられなくなるでしょう。
不安がある場合には、ポーションを所持していくことをお勧めします。
ポーションは傷の治癒だけでなく、体力を回復させる効果もあります。
他にも飛行魔法使用時の影響が知りたい場合には、詳細を教えていただければお伝えできます。いつでもおっしゃってくださいね。
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おお、どうやら行けるらしい。
ちょっと飛ぶところを見せれば良いはずだから、別に何も問題はなさそう。
ただ、いくらなんでも昼間に空を飛んでいるところを村人に見られるのはまずい。
そう思っていたが、一つ考えが抜けていた。いきなり高く飛ぼうとするからダメなのではないか。
最初は低空で飛んで、その後少しずつ高度を上げていけばいい。なんで今まで気づかなかったんだと、自分の知恵のなさを恥じていた。
「わああ! 行けるっぽいね!」
「ああ。でも、ずっとパメラをおんぶして飛ぶのは、やっぱ辛いなぁ」
「あ、そーだよね! じゃあどうしよう。二人でも楽に飛べる方法ってないかなぁ」
「だな。それと、マジックポーションがないと不安だ。あれさえあれば、ポーションの数だけ使えるんだけど」
「マジックポーション? うちにあるよ。持ってこよっか」
「え? あるの?」
パメラはコクコクっと首を縦に振る。
「ほら、あたしポーション作るの趣味だって言ったでしょ! 最近マジックポーションも作ってるの」
「すげえ! じゃあ持ってきくれるか」
「うん! 待っててね」
そう言い残し、パメラは風のように走り去ったかと思うと、十分もしないうちに帰ってきた。
物作りの教育を受けているとは聞いていたが、まさかマジックポーションまで作っていたとは。
パメラはバスケットを手にしていた。中にはお昼用のサンドイッチ、ジュース、ポーションが沢山入っている。
そしてマジックポーションも、なんと四本も入れられていた。赤紫色の液体は、まるで葡萄酒のよう。
俺はお宝の山を目にした気分だった。
というか、短期間でこんなアイテムまで作れるようになるなんて、彼女は天才じゃないか?
「これ、あたしの自信作だよ! だから今日は、遠くまで飛んでいこーね」
「お、おう。助かる」
これだけ援助してもらえるのだから、希望には応えるべきだろう。ただ、遠くといってもどこにいくべきか。
考えられる場所としては、サランしかない気がする。二人でどこかに向かうなら、一番人気のない北側からが良いはず。そうなるとサラン一択だ。
ただ懸念としてはやはり、一人ではない場合の移動についてだ。ずっとおんぶしているとか大変である。でも今日は大きな飛躍のチャンスでもあった。
もうレベルがほとんど上がらなくなっていると思われる状況で、可能ならもっと強い魔物達を倒したい。
だからなんとしても、今日はこのままパメラとサランに出かけたかった。
こういう時はイリスに相談するのが一番だ。
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俺が飛行魔法を使い、もう一人連れて旅行にいきたい。
おんぶとか抱っこしていくのは大変だし、他に何か方法はないだろうか。
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リザン様が、もうお一人を連れて飛行魔法で旅行したいのですね。
簡単な方法は二つあります!
1.お相手にも飛行魔法を使用していただく
これが一番簡単です。飛行魔法を覚えている方でしたら、一緒に使用して行ければ何も問題はありません。もし飛行魔法を覚えていない方の場合、魔法に素養のある方でしたら詠唱文字ややり方を教えれば対応できます
2.術者が軽い物体に乗り、お相手にも乗っていただいた上で飛行魔法を発動させる
飛行魔法を使用する人が、何か軽いものに接していることが条件となります。
また、物体に接しているのは体だけではなく、どちらかの手か杖も触れている必要があります。
同時に乗っている物体にも飛行魔法の力が加わり、お相手の方を乗せて飛ぶことが可能です。
乗ることができる物体は、軽く面積が広すぎないものが望ましいです。
物体が重ければ重いほど、面積が広くなればなるほど、効果時間や距離が減少するという研究結果があります。
ぜひ空の旅をお楽しみください!
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どうやら方法はあったようだ。
1は除外だ。パメラの魔法の素質については謎だが、多分レベル1だから飛行魔法を使えるようになるとしても、時間がかかりすぎる。
そうなると2しかない。でも、乗ることができる物体って例えばなんだろうか。
パッと頭に浮かんだのは、やっぱりホウキや絨毯だ。そういえば、パメラはピクニックセットを持ってきている。シートがあるんだけど……。
「よし、2で行ってみようか。そのピクニックシート貸してくれ」
「これ? はーい。いよいよだね!」
パメラはもうワクワクが止まらないらしく、笑顔が輝いていた。
期待に応えられるといいが、確証はない。俺はちょっとばかり緊張しつつ、こっそりと柵を超えて村の外に出た。
普段からおてんばで運動神経抜群のパメラも、俺と同じように柵をよじ登り、ジャンプして降りてきた。
バスケットの中から、シートを出してこちらに手渡してくる。
「よし、じゃあこれに座ってみて」
「えっと、こんな感じ?」
俺はシートを広げて、真ん中あたりに座った。パメラはすぐ後ろに座り、バスケットを手前に置いている。
正直、上手くいくかは分からない。失敗してみんなひっくり返ってしまう、ということもありえそう。
何はともあれ、やってみることにした。今まで通り、魔力を集中して圧縮された詠唱文字を思い浮かべる。
顔は進みたい方向へむけ、身体中の力を抜く。草むらに置かれたシートは、特に変化を見せない。
でも、俺自身から魔力が溢れ出してくると、徐々にシートが波打ってきた。
「わああ! なんか、震えてるよ!」
背後から興奮した声が聞こえる。黙ってはいたが、俺もこの状況にすっかり興奮していた。
そして魔力が満ちてきた時、少しだけ顔を上に向けた。静かに、微かにゆっくりと……視界が動いてゆく。
ここで俺だけが浮いてしまったのではないかと心配になったが、右手に持った杖が触れているシートが、引っ張られるように上がっていることに気づいた。
「凄い! 浮いてる! 浮いてるー!」
パメラは歓喜していた。こんな非日常をいきなり経験できるのだから、嬉しいのも頷ける。
俺はといえば、まだ緊張から解放されずにいた。このまま前に進んでいけるか不安だったからだ。
でも、やってみると今まで覚えてきた飛行魔法の使い方とあまり変わらない。案外簡単にピクニックシートは前に進み、俺たちは森の中を進んで行った。
「わああー!」
「大丈夫か? しっかりつかまってよ」
「うん!」
俺は背後にいるパメラが無事か気にしつつ、ちょっとずつ高度を上げていく。
ファーガソンの人たちからは見えづらいであろう距離まで来たところで、ようやく空の上へと向かっていった。
いよいよサランの町に行ける。
俺は喜びと緊張を胸に抱きつつ、真っ直ぐに未知の世界へと突き進んでいった。




