ゴーレムの使い道
AIイリスに聞いて分かったのだが、この世界にも時計が存在している。
だがファーガソンにはない。大体太陽と月が何処にあるかで、おおよその時間を判断していた。
なのでゴーレムが消滅する時間というものも、厳密には計測できない。
でも半日も使えるのであれば問題ない。半日近くのあいだ使う必要のある状況は、そうそう起こりはしない。
その日の夜、俺は試しにファーガソンの南門から出ていき、魔物が出現する川辺へと向かった。
川辺では沢山の小石や岩がある。それらにゴーレムクラフトを使用してみたところ、二メートルほどのかなり強そうなゴーレムが生まれた。
イリスに聞いてみたところ、なかなかに期待のできる返答が返ってくる。
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ゴーレムは素材によりレベルが異なります。
石で作られたストーンゴーレムは、平均レベル18〜21となり、攻撃力と防御力どちらも一般人を凌駕しています。
レベル上げのお供にはぴったりですね。
もしゴーレムの使い方でお困りのことがあれば、どんなことでもご質問ください!
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実際、スライムやゴブリン、巨大ガラスといった魔物達との戦闘においては、過剰ともいえる強さを見せた。
ゴーレムには攻撃に徹する作戦と、防御に徹する作戦の二パターンを用意し、どちらも試している。
攻撃に徹する作戦では、敵が攻めてくればすぐに迎撃してやっつけてくれた。
深追いすることがしないよう、向かって来なければ戦わないように命令してあるため、動きに無駄がない。
この方法でスライムやゴブリンを瞬殺している。
続いては防御に徹する作戦だが、こちらも問題がない。要するに常に俺を守ってもらうように動くのだが、ほとんど近づかれることさえなかった。
特に厄介なのは、空から襲ってくる大型のカラスや、狡賢く接近したり矢を放つゴブリンだったが、ストーンゴーレムはそれら全てを正確に防いでみせた。
詠唱をして戦うやり方は考えていないが、もし長い詠唱が必要となった時も、ゴーレムがいれば安心して行うことができる。
ただ、ファーガソンに帰るときにゴーレムをどうしようか迷った。
なにしろ、村の中で魔物を見られてしまったら、大騒ぎになること間違いなしだったから。
何か方法がないかイリスに聞いてみたところ、あっさりと解決策を教えてられた。
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ゴーレムを利用可能時間より早く終了させたいのですね!
通常、解除は時間経過しかありませんが、AIの設定により、もう一度ゴーレムクラフトを使用することで解除させることができます。
また、その際に魔力は消費しないようにし、利用時間が少ない場合、残り時間に応じて魔力の返還を行います。
設定しますか?
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なんて便利な機能なんだ。
正直、設定しない理由がない。俺はすぐに設定に同意し、ゴーレムクラフトを発動させてみた。
すると、二メートルを超える巨大な石人形は、あっさりと元の石となり、その場に山を作っていた。
これならいつでも出現させられるし、解除することもできる。その日は何食わぬ顔で帰っていき、ベッドで眠りながら今後の作戦を練ることにした。
日が変わって始めてみたのは、まず家にいる際の自衛手段である。
あまりにも酒癖が悪くなり、精神的にも危なくなってきたポールは、いつ暴れるか分からない。
そんな奴と一緒に住んでいたくはないのだが、村のお偉いさんは事勿れ主義のため、自分で守る以外になかった。
問題は寝ている時だ。この時ばかりはバフ魔法なんて使えないし、怒りのままに瓶で頭を殴られて死んでしまうこともあり得る。
だからゴーレムに助けてもらう。俺とポールは真向かいに十メートル以上離れて眠っており、その間に大きな窓が一つある。
この窓は村の北側を向いており、ファーガソンで一番北側に住んでいる俺たち以外には、目に止まらない位置にあった。
ここに、寝る前だけ石で作ったゴーレムを配置させておく。
壺や樽、使わなくなった木材などが並んでいるので、その間に隠れるように座らせておくのである。
そしてもしポールが暴力を振いそうになったら、それを止めて押さえつけるように命令した。
この時に奴を床に押さえつけ、そのまま寝かせてしまうという手だった。
魔物が乱入してきたと騒ぐ可能性もあるが、短時間で眠らせてしまえば、気のせいだったと思う可能性がある。
そもそも暗い中の出来事なので、相手が魔物かどうかも判別がしづらいはずだ。
そうした対策を練ることで、安全を確保しようとしていた。
ただ、実際にこの手は毎日使ったけれど、ポールが俺を襲撃してくるということはなかった。
でも、こうした準備自体を練って実行したことは、後々の経験に活きることになる。
そして何よりもゴーレムがいて助かったのは、俺が日中働いているあいだに、魔物退治をして経験値を稼いでくれたことだ。
多分だが、ファーガソンの周辺はこの世界中で最も平和だったかもしれない。
そのくらいゴーレムが魔物という魔物を探し回り、倒していくということを繰り返していた。
さらに夜になると、俺もまた外に出てゴーレムと一緒に魔物退治を行う。頼りすぎず、ちゃんと自分の腕も磨いていた。
ただ、それでもやはり魔物が弱すぎて、経験値が貯まりづらい。
この問題を解決するためにはやはり、サランに行くしかないだろう。そしてこの時、片道切符となる手段は獲得していた。
三日後の深夜のこと。俺は南門ではなく、秘密基地への道を急いでいた。今まで、こんなにワクワクしたことはない。
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イリス。恐らくだけど、レベルがかなり上がってきた気がする。
ファイアボールが杖利用で十発撃てるようになった。
飛行魔法が使える魔力に到達したと思う。
いつものように、詠唱をサポートしてくれ
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おめでとうございます!
ファイアボールが10発、杖を用いて使用できたということは、飛行魔法フライパスの消費魔力を手にしたと判断して問題ないでしょう。
それでは、詠唱をサポートいたしますね。
私を任意の箇所に接続してください!
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秘密基地に到着して、いつものようにイリスを腕につけようとする。
この時、そういえば腕以外でも大丈夫なのかと興味が湧き、試しに肩あたりにくっつけてみた。
「う、うぉう!?」
すると、突然肩パットのようなものに変化し、ぎゅっという感覚と共に装着された。
ただ、これだとイリスの文字が見えない。俺はすぐに外して、やっぱり腕につけ直した。
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準備はできてる。
詠唱を始めてくれ。
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かしこまりました!
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夜の静かな闇。そこに隠れる虫や動物が、みんな俺に注目しているような気がした。
自意識過剰になってると呆れつつも、やはり落ち着かずに周りを見回してしまう。
体を光が包んでいく。白く透き通るような輝き。まるで慈愛に溢れた回復魔法を連想させる、優しい衣が体を包んでいるよう。
身体中に風が吹き込んでくる。暑くも寒くもない春のような時期に、寒気がするほど冷ややかだった。
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魔法発動の準備ができました!
後は飛びたい方向に顔を向けていただき、鳥の羽ばたきを意識しながら少しだけ体全体を目的のほうへ動かしてみてください。
空の旅を楽しんでくださいね
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やってみるよ。
ありがとう。
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俺は身震いしつつもイリスにお礼を伝えると、空を見上げた。そしてほんの少しだけ、全身を空に登らせるようなイメージをしてみる。
ただ、この時一つ失敗してしまった。
鳥が飛び立つような姿を頭に思い描きつつ、一歩を踏み出す予定だったのに。
なぜか無意識に、ロケットが飛び立つような映像が頭を流れてしまったのだ。




