ゴーレムクラフト
殺人未遂としか思えないポールの凶行から一日が経ち、俺は家から早く出るための方法をずっと考えていた。
魔法を上手く使えば負けることはないと分かったけれど、寝ている時に襲われる可能性もある。
村の人達に助けを求めても、無駄であろうことも分かっている。
きっとパメラだけは力になろうとしてくれるだろう。でも危ないから巻き込みたくなかった。
普段は泥みたいに眠っているのだが、今日は目が冴えてしまい、ほとんど寝れずに朝を迎えていた。
外に出て、新鮮な空気を吸いながら今後について考えてみる。
子供にとって、親や親代わりとなる存在がいかにありがたく、またいかに厄介であるか。
これは前世ではあまり気にしていないことだった。俺の親は普通だったし、ありがたい気持ちはよくあったけれど、当然ながらこんな危険を感じたことはない。
この問題、魔法でどうにかなったりしないだろうか。
ショートスリープという魔法があるが、これは上手く使わないと自分も眠ってしまうことになる。取っ組み合いになったりしたら使えない。
エアカッターは殺してしまいかねない。いくら何でも人殺しは洒落にならない。アースウォールは壁を作る魔法のようだが、扱いに困ってしまう気がした。
他に使えそうな魔法と言えば……俺は考えつつAIイリスをポケットから取り出した。
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おはよう。
ゴーレムクラフトって魔法だったと思うが、詳しく説明してくれ。
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なんとなく推測のつく魔法名だが、使う前に詳細を聞いておきたい。
魔物を生み出す魔法と思われたので、村の近くで使うにしても危険な気がしており、優先順位を後にしていた魔法だった。
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おはようございますリザン様!
ゴーレムクラフトについて知りたいのですね!
ゴーレムクラフトは、ゴーレムを作成して一定時間、命令したことを行なってもらう魔法となります。
ゴーレムは魔法を使用した素材に応じて大きさや強さが変わります。
一定時間が経過するか、HPがゼロになるとゴーレムは消滅し、使用されていた素材が戻ってきます。
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大体予想していたとおりの説明だった。というか、HPという概念がある自体、やはりここはゲーム世界なのだろうか。
まあ世界の疑問は後にして、ゴーレムクラフトについて気になる点がいくつかある。
行動できるのは具体的にどのくらいの時間なのか。
命令とはどのように行うのか。
命令以外のことをすることもあるのか。
ゴーレムのHPとは、一体どのくらいなのか。
ゴーレムは何体も作ることが可能なのか。
これらをまとめてイリスに聞いてみたところ、このような返答がきた。
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行動時間ですが、厳密にはどのレグナス研究所も測りきれていないものとなります。
おおよそ半日ほど行動できることは確かです。
命令については、ゴーレムを作成した時に口頭で伝えることで、ゴーレムは従順に言われたことを実行します。
命令された以外のことを行うことはありません。
ゴーレムのHPにつきましては、素材の強度などにより異なります。
土は比較的脆く、岩などを使った際は強度が増してHPも高くなります。
最後に、ゴーレムが何体も作れるか……という質問についてですが、ゴーレムクラフトカスタム、という魔法を習得すれば、複数体同時に作成することが可能です。
ですが、ゴーレムクラフトカスタムは上位の魔術師しか習得していない魔法となり、リザン様が覚えるためには時間を要するでしょう。
その他にも、ゴーレムクラフトで知りたいことがありましたら、いつでもご質問ください!
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半日も継続して行動できる? これはかなり大きい。
半日も動けるのであれば、見張りとして使えそうだ。俺が寝ている時にポールが暴れたら、ゴーレムに守ってもらうことが可能になる。
これは使ってみるしかない。そう思いたった俺は秘密基地まで向かった。
消費魔力は二十となかなかに高い。だからおいそれと使用できるものではないが、使いようによってはかなり役に立つはず。
最初の使用なので、まずはAIイリスを腕輪型にして装着し、詠唱文字を行なってもらって発動させた。
いきなり土の中からもりもりと出てくる姿を想像していたが、実際はまず光の設計図が空に浮かび、どういった姿で現れるかが表示される。
その後、光の設計図に映し出されたゴーレムの位置に、素材が飛んできて重なって出来上がるというものだった。
「おお……これは……」
俺は当初、秘密基地内の盛り土を指定した。すると身長はポールに負けず劣らずの長身で、かつがっしりとした体格のゴーレムが誕生したのである。
土で作られているのであまり頑丈とはいえないが、とにかく強そうで感動したことを覚えている。
俺はしばらく魅入っていた。ロボットを自在に作れるみたいで、なんて素晴らしい魔法だろうと感動していた。
想像していたよりかっこいいゴーレムを、操れることにワクワクしてくる。
「よし、じゃあ命令してみるか。ゴーレム、右手を上げてみろ」
声を掛けられた途端、真っ暗だったゴーレムの瞳部分が輝く。二つの眼光と共に、右手がゆっくりと上に上がった。
確かに命令を聞いている。しかも、ずっと右手は上げられたままだった。
「左も上げてみろ」
この命令もあっさりと聞き入れ、ゴーレムはバンザイの姿勢になる。
「いいな。じゃあ、あそこの岩の周りをぐるぐる歩いてみてくれ」
動かすとどうなるだろうか。この命令についても、ゴーレムは従順に従った。
いつも攻撃魔法の的にしている岩。その周辺をゴーレムはぐるぐると歩いて回っている。
ただ一点想定外だったのは、ゴーレムが両手を上げたままだったということ。
「あ、手は下ろしていい。自然に腕を降って。自然に歩いてくれ」
今度は降ろされた両手を振るようになり、問題なく歩行することができた。
「よし。ゴーレム、今度は走ってくれ」
ゴーレムはこれにも従順だった。大きな体が軽快に、岩の周りを走り出している。
どうやら指示をしたことは、ちゃんと聞いてくれるようだ。
俺はゴーレムにこちらに戻るよう指示し、続いて待機を命じる。全てが命じるがままに行われた。
ここまでは問題ないが、気になっているのはここから。
もうじき仕事の時間になるし、朝の研究としては最後になるだろう。
「ゴーレム。俺の体にもし虫が飛んできたら、優しく払いのけてほしい。できれば俺にも虫にも、怪我がないように」
そう命じて、丸太の椅子に座ってAIイリスとチャットを始める。
これまでは、「今から〇〇をやれ」という命令をして問題なく遂行していた。
今度は条件をつけて、「〇〇があったらやってくれ」というもの。
ゴーレムがこういった命令は理解できないかもしれないので、検証する必要があった。
それから五分は待ったと思う。ゴーレムが立ち尽くすなか、俺はのんびりとチャットをしていた。世界の歴史について調べていた。
不意に蝶々がひらひらと飛んできて、俺の左肩に止まったのだ。一瞬だが緊張が走る。
ゴーレムが動いた。のしのしと大地が揺れるような錯覚があり、影が視界を覆う。
そして巨大な人形は、目前にしゃがんでこちらを覗くようにし、最新の注意を持って右手を伸ばしてきた。
だが、その右手はこちらに触れる前に止まる。そのまま立ち上がり、またも不動の姿勢となってこちらを見下ろしていた。
ゴーレムが触ろうとした瞬間、蝶々が逃げたのだ。
「凄いな……期待したとおりの動きだ」
思わず感激してしまった。そしてイリスにチャットを送る。
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ゴーレムは素晴らしい。
これで生活も冒険も幅が広がりそうだ。
戦いにも連れて行くつもりだけど、都度命令をするのは大変かもしれない。
何か良い方法があるだろうか。
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お喜びいただけて何よりです!
ゴーレムは耐久性とそのパワーによって、生活面でも戦闘面でもリザン様を助けてくれるでしょう。
また、戦闘面においては貴重な物理攻撃役、盾役としても活躍が見込めます。
ゴーレムが敵を倒した経験値は、術者であるリザン様のものとなりますので、ご活用ください。
ゴーレムに指示したいことが多い場合は、私に命令事項をあらかじめ入力しておくことで簡略化が可能です。
設定画面にゴーレムに関する命令をメモする項目がありますので、こちらを記載の上ご利用ください。
この他にも、ゴーレムの活用方法は多数存在します。
いろいろ探してみてくださいね!
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「なんだって」
何気ない相談程度で質問したんだが、さらに驚いた。
ゴーレムの経験値が俺のものになる。さらに命令については、イリスの設定画面からあらかじめ保存して使えるという。
この日から、ポールからの防衛は容易になった。そして俺の冒険ライフが少しずつ加速していった。




