第9話 レベルアップ
ゴブリンを倒すと礼二は頭の中で、人工的な声が聞こえた。『魔物討伐の熟練度が6になりました、後4上げると冒険者レベルが1になります』
(これがラノベで言うステータス表示か。ここでは音声だけしか伝わらないのか)確信は持てないがなんとなく思えた。
「今夜、倒したゴブリンは6匹。だから熟練度も6ということか。そうすると後4匹倒せばレベルアップするのか」
冒険者レベルがどのようなもので、どんな特典があるのかの説明はなかった。ただ、魔物を狩ると、どうやらレベルアップするようだし、大した特典がなくても嬉しいと感じる。まるで、そろばんや将棋で昇級昇段が嬉しいのと同じだろう。
倒れているゴブリンを改めて見ると悲惨な状況だった。青に緑がかった肌。顔は細長く、髪の毛はない。耳は尖り、眼は細い。
「この目が暗闇で光っていたのか」
礼二は暗闇でもよく見えた。動きからしてゴブリンより早く気づけたのは確かだった。それなのに、松明で照らされたゴブリンの姿にはぎょっとする。
さらに、礼二によって、顔や腕を砕かれ、今もどす黒い血を流している。
「恵美を連れて来なくてよかった」
(この光景を見たら、幼い娘はショック受けるだろうか。でもこの世界で生きるなら、これが日常茶飯事のことになる。幼いから悲惨な光景から遠ざけるだけで良いものか)
親として考えこむ。
その後、王都に戻り、2回ほどゴブリン狩りを行った。計17匹のゴブリンを倒し、礼二はレベルアップを果たす。
『現状の冒険者レベルは1になります。なお熟練度(13/100)です。レベルアップしたことで魔物の急所が明示されます』例によって人工的な声が流れた。
“魔物の急所を明示”、礼二が魔物を見ると、急所が赤くなることだった。ただ、ゴブリン相手では有難い特典とは思えない。
「まあ、これもいずれ、正体不明の魔物に出会ったに有効になるかもしれない」程度に思えた。
一方、礼二がゴブリンを退治したことは国王にも報告が上がった。
「レイン殿が無事にゴブリンを退治しております」ダンケルが報告。
「3度、レイン殿はゴブリンと遭遇しましたが、多数の魔物の中においても怪我一つ追わず、全てを倒しております」
「うーむ」
「陛下、王都近くではゴブリンぐらいしか魔物は現れません。今のレイン殿なら、ゴブリンでは腕試しにもなりません。王都でいくら訓練しようと、これ以上の上達はレイン殿には無理なのかと思います。それで、レンドン砦に行って、魔物を退治して経験を積まれた方が、上達が早まるかと思います。」
「ふーむ」居並ぶ国防軍の将軍幹部、近衛隊長そして魔導士長までが考え込む。提案理由は理に適うが、礼二はまだ招聘してから一月も経ってない。そのような者にいきなり、魔物の出没が激しいレンドン砦に送ってよいものか、すぐに同意できなかった。
「待て、エミリ嬢はどうする?」そう聞いたのはアンドリアン。彼は恵美に才能があるのではと考えていた。
「レイン殿はエミリ嬢を同行する条件で砦に行くと言ってます」
「・・・」しばらく全員、無言だった。そして最長老の将軍がぽつんと言った。
「やむをえませんな。レイン殿を王都に置いておいても、経験を積めないのは確かです。また親なら娘を手元に置きたいのは当然でしょう」
それが結論となる。
この会議において、礼二にとって全くの蚊帳の外だった。




