第4話 礼二の実力
国王は礼二が本当に勇者なのか懸念を抱いたが、アンドリアンとの話で、礼二父娘を10日程度、魔法と剣の実力を見極めることにした。
早速、翌日から実力を試された。
「レイン殿は見た所、大きな魔力を秘められておられるご様子。まずは私の術式をお見せしますので、後で復唱してください」
アンドリアンは相変わらず名前を間違えているが、そんなことに拘っていられない。
目の前の広い練習場に魔導士、近衛兵がずらりと並んでいる。この中でまずどのように振舞えばよいのだ。
アンドリアンはそう言って呪文を唱えると、炎が手の上に生じる。
礼二にとって、無から出現した炎はびっくりするものだ。ただ、転生ものの小説や漫画を多く読んできた彼からしたら、(あれ、こんなものなの)という思いもする。火魔法と言えば、大火炎を連想していたが、祭司の炎は松明の火よりはマシと言える程度。(あれ、なんか違う?こんなしょぼいの?)
そんな思いをしながらも、魔法を使えることに礼二は浮きたっていた。
(漫画で見た大火炎を放てるのではないのか。火魔法の他にも、水、風、土などいろいろな魔法が出来るらしい。俺はどんな魔法がつかえるかな?)と期待している。
(俺に、俺に出来るのかな?)そう思いながら、アンドリアンの言葉を復唱する。
だが火が出て来ない。
どんなに頑張っても火球どころか蝋燭炎一つでない。
「おかしいですね。あんなにも大きな魔力を持っていると言うのに」祭司が不思議がる。
「レイン様は膨大な魔力をお持ちですから、必ず火魔法を会得できるはずです。」
何度も繰り返すが、礼二の前から火の気振りもなかった。
午前中は失望の時間のまま終わる。
午後は剣の武術の素質を見ることになる。
まずは近衛隊、副隊長のダンケルが簡単に剣の手ほどきしてくれる。前日、彼にも紹介されたはずだが、覚えがない。まだ30そこそこだが、凛々しい顔立ちと引き締まった体をして、剣の腕も近衛隊随一を誇っているようだ。
「まず、剣をこのように右手に持ちます。本来は左手に盾を持って身体を防備するのですが、今日は剣だけを持って練習します。」
ここの剣術は盾と剣を持って戦うのが一般的だった。盾で相手の攻撃を防ぎながら、剣で相手を叩き潰す。相手も当然、盾と剣を持って戦うから、武術と言うより、腕力体力勝負の武術でもあった。
何度か素振りをして、剣の持ち方、構えを教えてもらい、軽く剣を合わせてみることになる。鎧兜を着こみ、剣を待つ。初めから両手を使うのは難しいので、剣だけをまず持った。
(冗談じゃないよ。俺って、剣なんて持ったこともないぞ)礼二は焦った。スポーツなんて小学校で水泳やサッカーのクラブには入ったが、才能のないことを自覚し、1週間で止めた実績がある。小中高と体育の授業はあったが、放課後になるとさっさと学校の門を出る、正真正銘の“帰宅部”なのだ。
剣を持たされて“あわあわ”している。
ダンケルが軽く剣を振って来ると、これに合わせる。まあ、ダンケルも手加減しており、これは簡単だった。だが、そんなに強く剣を合わせたわけではないのに、ダンケルの手から剣がはじけ飛んだ。
「えっ」とダンケルは心の中であっけにとられる。レインが全く剣を扱ったことがないのは構えで分かる。そんな素人同然な相手に剣を落とすなんて考えられなかった。
「次だ!」そう言って、少し焦り交え打ちかかる。強くレインの剣を払い、胸元に剣を突き付けて、先輩の意地を見せつけようとした。
今度は剣を合わせても落とすことがなかったが、簡単に剣を払いのけられた。1振り、2振り、3振りやってもレインに剣を合わさられる。
そしてとうとう、腕のしびれを感じ、剣を持つことに負担を覚える。
レインと剣を交えるたびに、強い衝撃を受ける。まるで、岩に剣を振り下ろしたかのように、いやそれ以上の衝撃が剣から腕に伝わる。
(こいつの腕力は何て強いんだ)呆れるしかなかった。
全力で剣を打ちかかっても、簡単に払われる。20回ほど剣を合わせた所で、肩で息をするほど疲れてしまった。全く、礼二の身体に当てられそうになかった事で、精神的にも疲れ果てた。
(なんて奴だ。俺が全力でもあいつは余裕を持っている。これなら本格的にどれほどの能力があるか確かめる価値がある)
ダンケルは一息する間、礼二の能力がどれほどのものか確認すると決めた。




