第3話 国王アバントリスとの謁見
大広間はまばゆいばかりの光と豪華な装飾彩られていた。
玉座に国王のアバントリスが鎮座している。恰幅の好い赤ら顔が似合う。まさに王と言う雰囲気を醸し出している。
「陛下、勇者様が我らの招聘に応えてくれました。」
「おお、そうか。そこにいるのが勇者なのか?」その声には明らかに訝しみが滲んでいる。
まあ、それはそうだろう。
礼二はアラサーの風采の上がらないサラリーマン。背丈も普通で、肩幅も広くない。おまけに寝巻代わりのスウェットとパンツ姿だ。いたって風采の上がらない格好だった。
これを見たら、国王だって怪しむのは無理もない。
一方の礼二はそんな心境どころではない。目の前の人物が国王その人なのだ。失礼なことはできず深々とお辞儀する。
自ら名乗るか考えたが、ここの風習を知らないので、軽率に口を開くことは止めておく。
(向こうから、問いかけられない前に名乗るのは礼儀に失するかもしれない)と思ったのだ。
「陛下、勇者のレイン様とその愛嬢のエミリ嬢です。」案の定、アンドリアンから紹介される。しかし、名前を間違えている。
(違う、違う俺はレインではなく、礼二だ)強く抗議しようと思ったが、やはりその場にふさわしくないと思ってしまう。
良くも悪くも礼二は日本人だった。周りの雰囲気を見て、空気を読んでしまった。
その国王はアンドリアンを呼び寄せ、ひそひそと話をしている。
「あの者は本当に、勇者なのだろうな?」
「陛下、私どもの勇者招聘に応えて来た方です。間違いありません。」
「だが、あの風体はどうだ。やせ細って、風采が上がらない上に、しかも子連れではないか。どうやって、魔物を退治すると言うのだ?」
「陛下、招聘に対応された方です。実力を見ない前にご判断されるのはいかがかと思います」
「まあ、そうよな。まずはあの者の力を見ておくとしようかのう」
国王と主祭師の話は、誰にも聞こえないように言っていたのかもしれないが、礼二の耳にはしっかり聞こえた。
これは後に分かったことなのだが、礼二の五感は転生前より異常に研ぎ澄まされていた。
視覚、嗅覚、触覚、味覚、そして聴覚が格段に伸びていたのだ。
注意深く耳を向ければ、二人の囁き声など明瞭に分かる。
(やっぱり王様は俺に失望したようだな。まあ、アラサーのおっさんに勇者、英雄を期待なんかできないよな)
それは礼二としても都合が良かった。魔物がうじゃうじゃといる地で、娘を置いて魔物退治に駆り出されるなんてお断りだ。
(それでいい、私を勇者扱いにせず、平凡な市民として町の中で暮らせるようにしてくれ。折角、転生出来たのだから、恵美とのんびり暮らせないか)心から思う。
国王謁見の後も、礼二たち親子は、イベントに付きわされることとなった。
次々と名士を紹介される。この国を代表する大貴族などもいれば、行政を動かす役人や要人、近衛兵隊長。更にはこの国で一番信仰される宗教の最高権威まで。
誰が誰だか、役職公職の何が何だか分からないまま引き回された印象だ。
その間、恵美も一緒だったが、少しおずおずしているが、怯える風もなく、声も上げず、泣きもしない。
子供ながらに、口を閉じているのが最良と考えてのことだった。
(本当に恵美は賢い)我が娘ながら自慢したくなる。
そして、私用に当てられた客間に通された時、「疲れたー!」と言って、二人ともベッドに倒れ込み、そのまま朝を迎えてしまった。




